book585(早く受け取るべきか、それとも遅く受け取るべきか。)






■70歳代中頃が分岐点。



「何歳から年金を受け取るのがいいのか」

これは年金に関するよくある疑問の1つですね。


国民年金ならば、65歳から年金を受け取るのが標準ですが、必要な手続きをすると、60歳から年金を受け取ったり、70歳から年金を受け取ったりすることもできます。

じゃあ、60歳からがいいのか、それとも65歳からがいいのか、はたまた70歳から受け取るのがいいのか。

早く受け取るべきか、それとも遅く受け取るべきか。判断に迷いますよね。


77才以上長生きする人は年金を65才からもらったほうが得する
http://news.livedoor.com/topics/detail/6613390/

上記リンク先の記事を読むと、後から年金を受け取ったほうが有利なように思えます。

記事では、77歳が分岐点になっているようで、「60歳から国民年金(以下では、老齢基礎年金を意味します)を受け取った人」と「65歳から国民年金を受け取った人」を比べて、どちらが有利かを判断しています。

以前、私も同じような計算したのですが、分岐点はたしか76歳だったと記憶しているので、結果はほぼ同じですね。


上記の内容から判断すると、国民年金は65歳から受け取るのが良いのかと思ってしまいますが、これは全ての人に当てはまる結論ではありません。

77歳以降も確実に長生きできるならば、65歳から国民年金を受け取るのが妥当かもしれない。しかし、65歳から受け取り始めて、何らかの理由で70歳で死亡したらどうなるか。または、70歳から年金を受け取ろうと思っていたけれども、病気で68歳の時に死亡したらどうするか。

間違いなく特定の年齢まで長生きできるならば、年金の受け取り時期も判断しやすいけれども、自分の寿命が何歳までかを特定するのはおそらく無理だと思いますので、年金の受け取り時期も簡単には決められないのが実際のところではないでしょうか。


ちなみに、上記では国民年金の受け取り時期だけを比較しているので、厚生年金は含まれていません。

じゃあ、「厚生年金(以下では、老齢厚生年金を意味します)は何歳から受け取るべきか」と言われたらどう答えるか。

厚生年金は国民年金と違って、個人ごとの収入の応じて年金の額が変わりますし、年金を受け取る年齢も生年月日ごとに違います。

65歳から厚生年金を受け取る人もいますし、64歳や63歳から厚生年金を受け取る人もいます。早い人だと、60歳から厚生年金を受け取り始める人もいますから、すべての人が65歳からというわけではないのですね。

さらに、厚生年金を受け取り始める年齢は、生年月日ごとに決まっていて、加入者が手続きによって早めることはできません。65歳から受給する人は65歳以降に受け取るし、62歳から受給する人は62歳以降に受け取ります。国民年金のように繰り上げて年金を受け取るような方法はありません。

なお、厚生年金には繰り上げ受給はできないのですが、繰下げ受給は可能です。それゆえ、遅く多く受け取ることはできます。








■なるべく早く受け取るのが正解。



国民年金を早く受け取るべきか、それとも遅く受け取るべきか。

私は、「早く受け取るべき」と考えます。特に、あなたが「女性」ならば。


しかし、早く受け取るとなると、「受取額が減っちゃうんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょうね。

確かに、年金を繰り上げて受給すると、年金の年ごとの受取額は減ります。つまり、65歳から受給すれば、月額で65,000円だったけれども、60歳から受け取ると、月額が45,500円に変わるとイメージすればいいですね。

たとえ、60歳から受け取っても、長生きすれば受け取りの総額は多くなる。一方、65歳から受け取っても、あまり長く生きなければ、受け取りの総額は少なくなる。


ここで、「でも、たとえ長生きできなくても、遺族年金があるから大丈夫なんじゃないの?」と思うかもしれない。

確かに、老齢年金をあまり受け取れなくても遺族年金でフォローされるから、老齢年金だけで考えを巡らさなくてもいいんじゃないかとも思える。

夫が死亡して、妻が残される場面を考えるならば、遺族年金を考慮に入れてもいいでしょうね。遺族基礎年金も、遺族厚生年金も、妻ならば受け取りやすいですから。


しかし、妻が先に死亡して、夫が残されたらどうなるか。「えっ? 妻が死亡したんだから、夫に遺族年金が支給されるんでしょ?」と思うかもしれませんね。

ところが、現実はそんなに単純じゃないんです。夫が遺族年金を受け取るときには色々と制約があります。

遺族年金には2種類あって、国民年金には遺族基礎年金、厚生年金には遺族厚生年金が用意されている。妻が先に死亡して夫が残されたときは、遺族基礎年金を受け取れません。さらに、遺族厚生年金も年齢などの条件があります。

まず、遺族基礎年金を受け取れるのは、子(一定の年齢未満、もしくは20歳未満で障害を持った子供)を持つ妻だけです。ゆえに、夫は妻ではありませんので、遺族基礎年金を受け取れない。

次に、夫が遺族厚生年金を受け取る場合は、妻によって生計を維持されており、さらに55歳以上であることが必要です。もしくは、妻によって生計を維持されており、一定以上の障害を負っている場合も条件にあてはまる。

妻が先に死亡して夫が残ったときは、遺族厚生年金を受け取る可能性があるものの、夫が妻によって生計を維持されているという点ですでに稀ですし、55歳以上という条件や障害の条件も厳しいですよね。

おそらく、ほとんどの夫である男性は、妻が先に死亡しても遺族厚生年金の対象にはならないのではないかと思います。

子どもや孫、祖父母に遺族厚生年金が支給される可能性もありますが、女性である妻によって生計を維持されている人はどれくらいいるのでしょうか。結婚して仕事をしている子供は対象外でしょうし、年金を受け取って生活している祖父母も対象外になるのではないかと思います。さらに、子供には19歳未満である必要があるし、祖父母も55歳以上でないといけない。


ゆえに、夫である男性よりも妻である女性が先に死亡してしまうと、支払ってきた厚生年金の保険料がフイになる可能性が高い。

結構な額ですよね、厚生年金の保険料は。あのたくさんの保険料が返ってこないのですから、女性の場合は特に早く年金を受け取るべきです。とはいえ、国民年金は60歳から受け取れるけれども、厚生年金の受給開始年齢は早めることができないので、もどかしいところです。


女性の年金保険料は掛け捨てになる可能性が高いですから、「長生きできるから、後からでもいいや」と悠長に構えず、可能な限り早く受け取らないといけないと考えておく必要があります。


余談ですが、女性の中には、厚生年金に加入しないパートのおばちゃんがいますよね。「パートさん」と呼ばれている人たちのことです。この人達は厚生年金に加入しておらず、国民年金の3号被保険者ですので、年金を受け取るときには60歳から繰り上げて受け取ることが可能です。

厚生年金の受給開始年齢は早めることができないし、女性のほうが早く死亡すると支払った保険料を回収できなくなる可能性が高い。この2点を考慮すると、パートで働いている女性は賢い選択をしていると言えますね。しかし、別の角度から考えると、女性の社会進出を阻んでいるとも言えます。







山口正博 社会保険労務士事務所
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