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年金に関する3つの誤解。



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年金に関する3つの誤解。
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「年金は65歳から」、「25年入っていないといけない」、「働くと年金は減る」。


「年金っていつから受け取れるの?」、「受け取るとして、毎月いくらになるの?」年金に関する会話は、いつからという話題とナンボという話題の2つが多い。もっとも興味がある点は時期と金額なのですね。

新聞やニュース、雑誌から情報を得ていると、間違った方向に理解することはないとは思いますが、ときに誤解してしまう場合もあります。

例えば、「年金を受け取るのは65歳から」という知識。確かに、年金は65歳からと新聞やニュースでも報道されていますから、「65歳から年金を受け取るのだろう」と理解するのは自然なこと。しかし、すべての人が65歳から年金を受け取ると理解していたら、それは違います。65歳だけでなく、67歳や69歳で年金を受け取り始める人がいますし、60歳から受け取る人もいれば、63歳から受け取る人もいます。

年金の受け取り開始の年齢は、全員一律ではなく、人によってバラバラです。じゃあ、どういう仕組みでバラバラなのか、なぜ全員が65歳に統一されていないのか。その点について詳しく知る必要がありますよね。


「年金には25年入っていないと貰えない」と理解している人もいますよね。これも新聞やニュースで刷り込まれている情報ではないかと思います。

確かに、年金は25年間にわたって加入していないと受給のための条件を満たせない。これは間違いないところです。しかし、ここでも「全ての人が25年の加入条件を満たす必要がある」と理解していたならば、それは間違いです。人によっては、25年未満でも年金を受け取る条件を満たせる人がいます。23年で条件を満たせる人がいれば、21年で条件を満たせる人もいる。さらには、18年とか16年、最も短い期間だと15年で条件を満たせる人もいるのです。

「えぇ~っ!? 15年でOKな人もいるの?」と思うかもしれませんが、これはウソではなく本当なのです。「年金には25年入っていないといけない」と思い込んでいる人にとっては、ビックリかもしれませんが、年金の制度には色々と"特例"というものがあるのです。

ちなみに、さきほどの60歳や63歳で年金を受け取り始めることができるのも"特例"です。


「特例」と聞くと知りたくなりますよね。普通じゃなくて「スペシャル」ですからね。



あとは、「働くと年金が減っちゃうんでしょう?」と思っている人もいるはず。確かに、働くと年金が減る仕組みはあります。けれども、年金だからといって、何でも減っちゃうわけじゃないんです。働いて減る年金もありますけれども、働いても減らない年金もあるのです。

「年金を受け取りながら働く=年金が減る」と簡単に理解している人にとっては、働いても減らない年金があると聞くと、「え~、そんなもの無いよ」と反応してしまうかもしれない。デレビのニュースやお昼過ぎのワイドショー、新聞を読んでいると、「働きながら年金を受け取ると、年金が減る」という知識が刷り込まれて、チャンと仕組みを知ることなく、その知識が固まってしまうのかもしれない。

もちろん、テレビや新聞で報道されている内容は正しいのですが、どうしても放送時間や紙面の制約により、詳しく説明できずに情報の受け手が誤解してしまう可能性があります。もっと時間や紙面を使って、詳しく説明するべきだけれども、どうしても要点を絞って伝えざるを得ないので、仕方ないといえば仕方ない。


年金はみんな65歳から受け取る。年金には25年間入っていないと受け取れない。どんな年金であれ働くと減っちゃう。この3つの点について誤解されているところを今回は書こうと思います。



「年金」と言いますが、どの年金ですか?


「年金が、、、」とか、「年金の、、、」とか、「年金のことなんだけどね、、、」と言うとき、どの年金のことを話しているのかハッキリと理解している人は思いのほか少ないのではないでしょうか。

「年金と言ったら年金だろう。1つしかないじゃないか」と思うかもしれないけれども、年金は1つだけじゃないのです。

まず、年金は国民年金と厚生年金の2つに分けられる。もうすでに1コじゃなくなっています。さらに、年金の種類は6種類あって、国民年金で3種類、厚生年金でも3種類ある。

国民年金が、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の3つに分かれる。さらに、厚生年金は、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の3つに分かれる。

1つだと思っていたものが2コに増えて、さらに6コに増えた。

年金事務所(昔は、社会保険事務所と呼ばれていた)に行って、年金について質問すると、おそらく「年金と言いますと、どの年金についてのご質問ですか?」と聞かれるのではないでしょうか。

老齢年金といっても、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つがあるし、障害年金と一言で言っても、障害基礎年金と障害厚生年金がある。さらに、遺族年金も2つに分かれていて、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

「老齢年金がね、、、」とか、「障害年金のことなんだけど、、、」とか、「遺族年金って、、、」というように表現する方もいらっしゃるかもしれませんが、聞く人が聞くと、「どっちの年金だろうか、、」と思ってしまうはず。それぞれ2つに分かれていますからね。

単に「年金について聞きたいんですけれどもぉ、、」と窓口の人に言うと、先ほどのように「どの年金ですか?」と聞き返されてしまう。聞き返された方は、「どの年金って言ったって、年金でしょ?」と質問の意味が分からないまま混乱する。これが現実なのではないでしょうか。

年金は大きく分けて6コある。この点は知っておくといいですね。




3つの誤解と3つの答え。


では、先ほど書いた「年金はみんな65歳から受け取る。年金には25年間入っていないと受け取れない。どんな年金であれ働くと減っちゃう」という3つの点について考えてみましょう。この3点は、すべて間違っているわけではなく、一部誤解されている可能性があります。おおよそ正しいけれども、ちょっと例外があるのです。

まず、「年金はみんな65歳から受け取る」という点について。「年金は65歳から」という情報は、テレビでも新聞でも雑誌でも、あちらこちらに出てくる。それゆえ、「年金=65歳」という考えが頭にこびり付いてしまって、65歳に達しなくても年金を受給する人がいるとは思いもよらない方もいらっしゃるかもしれない。

65歳前の年金について話すと、「繰り上げ受給なんじゃないの?」と言う人もいます。確かに、繰り上げ受給すれば65歳よりも前に受け取り始めますね。しかし、繰り上げ受給でなくても、65歳よりも前に受給する可能性はあるのです。

早い人だと、55歳から年金を受け取り始めます。最も遅い年齢が65歳で、最短が55歳ですから、10年の差があります。

「それって、どうやって知ることができるの?」と思う方もいらっしゃるでしょうから、年金の支給開始年齢の一覧表を紹介します。

年金給付の経過措置一覧(平成24年度)
http://www.nenkin.go.jp/n/open_imgs/service/0000004055.pdf


日本年金機構のウェブサイトに掲載されているPDFファイルで、これを見ると年金の加入期間や支給開始年齢を一覧で把握できます。ただ、パッと見ても、表の見方が分からないと意味がありませんので、表の見方を説明します。

まず、一番左に生年月日がズラッと表示されています。この表を見るときは、生年月日を基準にして横に見ていくと、分かりやすいです。

一例を示すと、昭和4年6月23日に生まれた男性の場合だと、年金の支給開始年齢は60歳です。老齢厚生年金のエリアにある「(男子)支給開始年齢」のところと生年月日が交差する部分を見ていただければ分かります。「"(ダブルクォーテーション)」マークが付いていますが、これは上の数字と同じことを意味します。つまり、一番上の60歳という部分と同じです。もし、男性ではなく、昭和4年6月23日に生まれた女性だったならば、支給開始年齢は55歳ですね。「(女子)支給開始年齢」という欄を見ると分かります。

では、昭和30年9月13日に生まれた女性は何歳から年金が支給されるでしょうか。表で調べてみてください。昭和30年だと、57歳ぐらいでしょうか。「もうそろそろ年金を受け取るのかなぁ、、」と思っているのではないでしょうか。

生年月日から一覧表を右へ見ていくと、支給開始年齢は60歳ですね。ところが、年齢が2つに分かれています。報酬比例部分は60歳からなのですが、定額部分は「-(ハイフン)」となっています。どういうことかというと、定額部分は無しで、報酬比例の年金は60歳から支給が開始されるという意味です。

ここで、報酬比例部分と定額部分という2つの用語が出てきましたが、報酬比例部分は厚生年金に相当し、定額部分は国民年金に相当すると考えてください。

「あれっ? 厚生年金について話しているのに、何で国民年金が出てくるの?」と思うかもしれませんね。確かに、一覧表の支給開始年齢は老齢厚生年金のエリアに表記されているのだから、報酬比例部分も定額部分も厚生年金なのではないかと思えます。

「厚生年金は報酬に比例する年金であって、定額の年金じゃない。定額の年金は国民年金だろう」と考えるのは、正しいです。じゃあ、何で厚生年金に「定額部分」というものがあるのか。ここは疑問を抱くところですよね。

老齢厚生年金には、「普通の老齢厚生年金」と「特別支給の老齢厚生年金」の2つの種類があります。多くの人が知っているのは、おそらく普通の老齢厚生年金だと思います。ここでも、「老齢厚生年金は1つだろう」という思い込みが発生するところで、実際には老齢厚生年金は2種類あるのです。

じゃあ、両者は何が違うのか。それは、普通タイプのものは報酬に比例する年金だけであり、特別支給タイプのものは、報酬に比例する年金ももちろんあるのですが、国民年金(基礎年金と表現してもいい)に相当する年金もプラスされている年金なのです。つまり、前者は報酬比例の部分だけ、後者は報酬比例の部分に定額の部分がプラスされているということ。

ちなみに、65歳未満で支給される老齢厚生年金のすべてが特別支給というわけではなく、「報酬比例部分+定額部分」の2つセットで支給されるものが特別支給の老齢厚生年金です。

それゆえ、先程の例で説明すると、昭和30年9月13日に生まれた女性の場合、報酬比例部分の支給開始年齢は60歳でしたが、定額部分は無しでしたよね。ちなみに、65歳未満のときの定額部分はありませんが、65歳からの国民年金は保険料を支払っていれば65歳から支給されます。この女性の場合は、特別支給の老齢厚生年金は無く、通常の老齢厚生年金(60歳代"前半"の老齢厚生年金ともいう)が60歳から支給され、国民年金は65歳からということになります。

では、昭和22年9月17日生まれの女性だとどうなるか。一覧表の「昭和22年4月2日~昭和23年4月1日」から右に見ていくと、60歳から報酬に比例する老齢厚生年金があり、61歳から定額部分の支給がありますよね。この人の場合、60歳から61歳までは通常の老齢厚生年金(60歳代"前半"の老齢厚生年金ともいう)であり、61歳から65歳までは報酬に比例する部分と定額の部分がセットになりますので、特別支給の老齢厚生年金を61歳から65歳に達するまで4年間受け取るということになります。

国民年金は支給開始年齢をある程度まで調整できますが、厚生年金の場合は全員が65歳からというわけではなく、生年月日に応じて55歳から65歳までの間で支給開始年齢はバラバラです。今現在20歳代から40歳代である人にはおそらく関係しないだろうけれども、今現在50歳代以降の人たちには、今回紹介した一覧表(http://www.nenkin.go.jp/n/open_imgs/service/0000004055.pdf)は必見だと思います。

一覧表を見て、生年月日を当てはめれば、何歳から年金を受け取るかはパッと分かりますから、ご自分の生年月日はもちろんですが、家族や友人、知り合いの人の年金も一覧表でチェックしてあげれば喜ばれるのではないでしょうか。何歳から年金を受け取るかをピタっと言い当てると、その人からきっと尊敬されますよ。

今回紹介した年金給付の経過措置一覧は便利ですので、ブラウザーでブックマークするか、PDFを保存するか印刷するかしておくと良いかもしれません。



では次に、「年金には25年間入っていないと受け取れない」という点について。

この点も誤解されている人は結構いているのではないかと思います。「年金は25年入ってないと貰われへんでぇ」と大阪の人でも言っている人がいますね。確かに、年金に25年加入すると、いわゆる年金(厳密に言うと、老齢基礎年金のこと)の支給要件を満たすので、年金を受け取れます(ただし、保険料はキチンと支払っているという前提)。


ちょっと脱線しますが、老齢年金には2種類あると説明しましたよね。老齢基礎年金と老齢厚生年金です。でも、上では、「厳密に言うと、老齢基礎年金のこと」と書いています。ここで、「あれっ? 老齢厚生年金はどこに行ったの?」と不思議に感じる方がいらっしゃるのではないでしょうか。

老齢基礎年金は国民年金に25年加入する必要がありますが、老齢厚生年金は厚生年金に25年も加入する必要はないのです。1ヶ月以上、厚生年金に加入していれば、老齢厚生年金を受け取ることは可能なのです。

ここで、「えっ! 1ヶ月? 25年じゃないの?」と思うかもしれませんが、1ヶ月というのはウソではありません。25年加入する必要があると言いながら、1ヶ月でも受け取れると言っている。混乱しますよね。

老齢基礎年金を受け取るには国民年金に25年加入していなければいけない。この点はとりあえず大丈夫だと思います。一方、老齢厚生年金を受け取るには、厚生年金に1ヶ月以上加入している必要があり、さらに、国民年金にも25年加入している必要があります。つまり、老齢基礎年金は25年だけであり、老齢厚生年金は国民年金の25年にプラスして厚生年金に1ヶ月以上加入する必要があるということです。

なぜ老齢厚生年金を受け取るのに、国民年金に25年加入する必要があるのか。国民年金と厚生年金は別々の制度なのではないか。そう思いますよね。

たしかに、2つの制度は別々のものです。だから、年金を受け取る条件も別々のはずだ。そう思いますよね。

しかし、国民年金と厚生年金は、別々の制度でありながら、相互に連動している制度なのです。老齢基礎年金を受け取れるという前提で老齢厚生年金を受け取る。つまり、老齢基礎年金を受けとれないのに、老齢厚生年金だけを単独で受け取ることはできないような仕組みになっているのですね。

保険料を別々に支払っているのだから、年金の受け取りも別々にすればいいのに、とも思えます。しかし、実際は、「厚生年金は国民年金を人質にしている」と表現できるように、国民年金を受け取れない人は厚生年金も受け取れない。

25年の条件を満たせなければ、厚生年金のあの高い保険料がフイになるのですから、「25年」という条件を気にしないわけにはいかないのですね。


この25年間ですが、すべての人が年金に25年も加入する必要があるとは限らないのです。25年加入する必要がある人もいますが、最短だと15年でOKな人もいます。

25年の人がいる一方で、15年でOKな人もいるのですね。10年も差があります。最長で25年、最短で15年ですから、22年加入でOKの人もいますし、19年加入していれば受給できる人もいます。

「でも、何でそんな差が出るの? みんな25年じゃないの?」と思うかもしれませんね。

これも先ほど紹介した一覧表で分かります。では、もう一度、一覧表(http://www.nenkin.go.jp/n/open_imgs/service/0000004055.pdf)を見てみましょう。

今回はどこを見るかというと、上の方にある「老齢基礎年金」のエリアから下に目を通してください。左から、「資格期間」、「被用者年金の加入期間」、「厚年の中高齢加入期間」の3つの名称が記載されています。今回はここを見ます。

まず、用語を説明しましょう。資格期間とは、国民年金に加入していた期間のことを意味します。なお、厚生年金に加入している期間は国民年金にも同時に加入していますので、厚生年金に加入している期間も資格期間に含まれます。例えば、国民年金を単独で4年間加入し、その後、厚生年金(国民年金が含まれている)に13年加入したとすると、資格期間は17年です。

被用者年金の加入期間というのは、言い換えると、厚生年金の加入期間のことです。国民年金だけに加入していた期間は除外し、厚生年金(国民年金を含む)に加入していた期間だけを意味しています。先ほどの例だと、国民年金に4年、厚生年金に13年ですから、被用者年金の加入期間は13年です。

3つ目の厚年の中高齢加入期間というのは、40歳以降に厚生年金に加入していた期間を意味します。先ほどの被用者年金の加入期間は年齢制限はなかったのですが、こちらは40歳以降の期間に限定しています。


では、具体例で説明してみましょう。

例えば、昭和19年3月13日に生まれた人だとどうなるか。一覧表を見ると、昭和18年4月2日~昭和19年4月1日の期間に該当しますので、資格期間は25年です。さらに、被用者年金の加入期間だと20年、厚年の中高齢加入期間ならば15年です。

25年、20年、15年と3つも出てきましたので、混乱するかもしれませんね。どれが正しいのか判断に迷うかもしれません。

もし、40歳から55歳まで厚生年金に加入していれば、厚年の中高齢加入期間が適用されますから、年金の加入期間は15年で足ります。この場合は、25年ではなく、20年でもなく、15年が年金に加入する必要がある期間です。

では、30歳から50歳まで20年間厚生年金に加入していたらどうなるか。この場合、40歳以降の加入期間は10年しかありませんので、厚年の中高齢加入期間は使えません。しかし、厚生年金の加入期間が20年ですから、被用者年金の加入期間が適用されます。よって、年金に25年加入する必要はなく、厚生年金に20年加入すると年金の支給条件を満たせます。

じゃあ、厚生年金には7年だけしか加入しておらず、それ以外の期間は国民年金だけだったらどうなるか。この場合は、厚年の中高齢加入期間は使えませんし、被用者年金の加入期間も使えない。よって、国民年金に25年加入する必要があります。今回の例だと、厚生年金(国民年金を含んでいる)には7年加入していますから、国民年金に18年加入すれば良いのですね。


余談ですが、先ほどから「厚生年金(国民年金を含む)」という記述がチラホラと出ていますが、あえて書いています。国民年金は国民年金、厚生年金は厚生年金と分けて理解している人にとっては、国民年金の加入期間と厚生年金の加入期間は別物だと思われているフシがあります。

確かに、国民年金と厚生年金は別の制度なのですが、厚生年金の加入期間には国民年金の加入期間も含まれていることを知らない人もいるようですので、あえて回りくどく「厚生年金「国民年金を含む」」というように書いています。厚生年金に5年加入すれば、同時に国民年金にも5年加入しています。厚生年金に13年加入すれば、国民年金にも13年加入しています。「厚生年金には国民年金がセットになっている」これは知っておいて欲しい点です。


では、もう1つ例を出しましょう。

昭和29年10月24日に生まれた人だと、年金の加入期間は何年になるか。一覧表を見ると、昭和29年4月2日~昭和30年4月1日の期間に該当します。資格期間は25年、被用者年金の加入期間は23年、厚年の中高齢加入期間は"-"のマークが付いていますから対象外です。

この人の場合、25年加入するか、それとも23年で足りるかどちらかです。

厚生年金に23年加入していたならば、被用者年金の加入期間が適用され、加入期間は23年で足ります。

もし、厚生年金の加入期間が23年に満たなければ、国民年金に25年加入する道を選択することになる。


すべての人が年金に25年間加入する必要がある、というわけではないことが分かっていただけたのではないでしょうか。

年金の加入期間に関しては、受給年齢と違い性別で年数が分かれていませんので、生年月日だけで判定できます。自分や親、親戚の人は年金に何年加入する必要があるか。一覧表で調べてみてはいかがでしょうか。



では、最後に、「どんな年金であれ働くと減っちゃう」という点について。

働きながら年金を受け取る、逆に言えば、年金を受け取りながら働くと年金が減る。この点について知っている方はそれなりにいらっしゃるかと思います。

しかし、働いて減るのは全ての年金というわけではないのです。減る年金もありますが、減らない年金もあります。

働くと年金が減る仕組みは、「在職老齢年金制度」と呼ばれるものです。在職中に老齢年金を受給する人たちの年金額を調整する仕組みが在職老齢年金制度です。

一定額の収入を下回るときは年金は減額されず、一定ラインを超えると収入に応じて年金が減り、一定以上に達すると年金が全額支給停止になる。在職老齢年金制度を1文で要約すると左記のようになります。

ちなみに、在職老齢年金という年金があるわけではありません。在職老齢年金という年金が支給されるのではなく、在職老齢年金制度は「年金の支給額を調整する制度」です。新しく「在職老齢年金」という年金が支給されると誤解している方もいるかもしれませんので、知っておいてください。


まず、「在職老齢年金制度」という名前を見ていただくと、老齢年金という表現がありますよね。つまり、在職老齢年金制度は老齢年金を対象にしていると解釈できます。先ほど書きましたが、老齢年金には2種類あって、老齢基礎年金と老齢厚生年金です。

ということは、障害年金(障害基礎年金、障害厚生年金)と遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金)の合計4つは在職老齢年金制度の対象外ということになります。

「じゃあ、働くと減るのは老齢基礎年金と老齢厚生年金なの?」と思うかもしれません。しかし、老齢基礎年金は対象外です。

国民年金は、別名で「基礎年金」と言われることもあります。つまり、生活の基礎となる年金ということ。生活の基礎となるのだから、収入には影響を受けずに受給できる。

ちなみに、国民年金の保険料も収入に比例しませんよね。どんな所得水準の人でも、国民年金の保険料は一定です。それゆえ、給付も収入に関係なく固定なのです。

よって、老齢基礎年金は在職老齢年金制度の対象にはならない。


ここまで来ると分かりますが、在職老齢年金制度の対象になる年金は老齢厚生年金です。働くと年金が減るというよりも、正確に言えば、「働くと老齢厚生年金が減る」ということです。6つの年金のうち、働くと調整されるのは1つだけなのですね。

単に「年金」と言ってしまうと、どんな年金でも働くと減ると誤解してしまいますが、ピンポイントで老齢厚生年金と表現していれば、減る年金と減らない年金をキチンと区別できます。


厚生年金は報酬に比例した年金で、報酬比例年金と呼ばれることもある。

働いていて収入が多いということは、経済的に余裕がある。だから、老齢厚生年金の支給額を調整する。老齢厚生年金は報酬比例の年金なので、多少減額しても基礎年金のように生活への影響は大きくない。これが在職老齢年金制度を作った意図なのですね。




1,年金はみんな65歳から受け取る。
2,年金には25年間入っていないと受け取れない。
3,どんな年金であれ働くと減っちゃう。

年金に関する3大疑問は上記の3つなのではないでしょうか。

今回紹介した一覧表(http://www.nenkin.go.jp/n/open_imgs/service/0000004055.pdf)を見れば、1と2の疑問は解消できますし、3の疑問も老齢厚生年金だけが調整の対象だと分かっていただけたと思います。

今回知ったことは、ぜひ他の方にも教えていただければ、その人は喜ぶように思います。年金について一番知りたいところでしょうから。

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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