book567(基本給や手当に残業代を含めるのは、無意味。)




■残業代を節約する目論見。



残業代を減らす目的で、基本給や各種の手当の中に残業代を含める方法があります。

基本給の中に2万円分の法定時間外労働の割増賃金を含めているとか、ナントカ手当の中に1万円分の残業代が含まれているというのが例でしょうか。

基本給や手当に残業代を抱き合わせれば、残業代を減らせると思わせる効果があるのか、このような手段を考えだす人がいます。

「基本給の中に2万円分の残業代が含まれている」と言われると、残業代は2万円で固定であり、それ以上は支払わないと思ってしまう人もいるのではないでしょうか。「課長手当に1万円分の残業代が含まれている」と言われると、残業代は1万円の定額なんだなと思ってしまうかもしれない。


上記のような方法は、そもそも本当に残業代を減らす効果があるのか。基本給や手当に残業代を含める方法を実際に採用している企業は、この方法に効果があると思っているのでしょうね。

では、実際に効果があるかどうか。知りたいところはソコです。






■鯖は鯖であって、鯵には変わらない。



まず、基本給や手当に残業代を含める方法は、法的には差し支えない。普通に残業代を支払うときは、給与明細でも個別に項目を設けて、キチンと割増賃金の金額が分かるように記載しているはず。一方、他の費目に含めた場合は、いくらが残業代なのかハッキリとは分かりにくくなる。

基本給の中に2万円分の残業代が含まれているとして、実際の残業代は2万円で足りているのか、それとも2万円では足りていないのか。おそらく給与明細を見てもすぐには分からないのではないでしょうか。もちろん、実際の法定時間外勤務に応じた割増賃金を別途で表示した上で、基本給の中に2万円の残業代を含めているならば、社員側でも過不足が分かります。

しかし、残業の内訳を表示するならば、あえて基本給の中に残業代を含める必要はないですよね。内訳通りに残業代を計算して支払えばいいのですから、あえて他の項目に残業代を含める意味はない。

では、なぜ基本給や手当に残業代を含めようとするのか。それは、残業代の内訳に煙幕を張るのが目的なのだと私は思います。支払うべき残業代を正確に分からないようにして、2万円分を超える残業をさせる。これが動機です。

キチンと残業代を払うならば、あえて2万円と固定しないほうが企業にとって費用の負担は少なくなる。もし、実際の残業代が1万3千円だったとすると、企業は7千円を余分に支払うことになります。わざわざ費用が多くなるような方法を企業が採用するとは思いにくい。考えられるとすれば、支払った残業代よりも実際の残業代が上回る状態を狙っている可能性です。


たとえ、基本給の中に2万円の残業代を含めていても、実際に2万円以上の残業代を支払う必要がある場合は、差額を追加で支払う必要がある。なぜ、一度で済むことを、あえて手間を増やしているのか。なぜ、こんな面倒な方法を用いるのか。

その都度計算して割増賃金を支払えば、1回で終わる処理なのですから、不思議な感じです。


他の費目に残業代を含める方法を使うと、残業代を不払いにするきっかけを企業に与えますし、給与計算の作業も二度手間になる。それゆえ、あえてこのような方法を採用する意味は無いのです。

基本給や手当に残業代を含めている会社は、未払い残業代を故意に発生させていると考えてもさほど間違った判断ではないでしょうから、弁護士にとっては未払い残業代を請求するカモになります。

残業代は、実際の時間数に応じてその都度計算する。これが正しい近道です。

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所