book564(子ども手当は朝三暮四の仕組みなのかどうか。)





■子ども手当と児童手当のトレードオフ。



2010年から始まった子ども手当の制度は、2012年の3月末で終わり、その後は以前の児童手当を復活させ、それを拡張して運用していくようです。

子ども手当が登場する前は、児童手当制度によって給付が行われていたのですが、2009年に民主党が与党になり、2010年からは児童手当に代わって子ども手当が給付されるようになった。


ただ、「子ども手当を受給すると、本当に収入は増えるのかどうか」という疑問もあった。

「児童手当が子ども手当に名称が変わっただけであって、実質的な受け取り額はほとんど変わらないのではないか」と思う方もいらっしゃるはず。

児童手当にさらに上乗せして子ども手当が支給されるならば、おそらく収入は増えるのかもしれない。けれども、実際には、子ども手当の代わりに児童手当がなくなった(といっても廃止されたわけではない)のだから、「今までとそう変わらないんじゃないか?」と思っても不思議ではない。


2011年には所得税の扶養控除制度に変更があった。増加した税収を子ども手当の財源に充当するために、16歳未満の扶養控除(「年少者扶養控除」と表現される場合もある)を廃止した。

さらに、2012年の4月からは住民税の扶養控除も変更があり、こちらも16歳未満を控除の対象から外すようになる。


児童手当が子ども手当に変わり、扶養控除の対象者が狭まる。この2つの変更を踏まえると、子ども手当の効果は相殺されてしまうのではないかと思えるのではないでしょうか。


児童手当、子ども手当、税金の扶養控除。この3つを横に並べて考えてみて、子ども手当の効果はいかほどのものかを調べてみたいところです。月額13,000円という名目の金額に気持ちが向きがちですが、児童手当が無いという点、扶養控除が無いという点、この2点を考慮すると子ども手当の実質額が分かるのではないでしょうか。








■あっちからこっちへ移動した。



前提として、10歳の子供が1人だけという家庭を想定します。父親、母親、10歳の子という3人家族です。

まず、子ども手当が無い場合を考えてみると、この場合は児童手当と扶養控除がありますね。

児童手当は、1人目は月額5,000円ですから、年額で60,000円です。さらに、所得税と住民税の扶養控除があります。所得税の扶養控除は380,000円で、住民税の扶養控除は330,000円です。所得税と住民税の税率を10%とすると、控除の額に相当する所得税の額は38,000円、控除の額に相当する住民税の額は33,000円ですね。


では、子ども手当がある場合を考えると、この場合は児童手当はありませんし、扶養控除もありません。そのため、子ども手当から増えた税金を引きます。

月額13,000円を年額にすると156,000円です。

子ども手当が無い場合とある場合を比較して、増加した手当は、156,000円 - 60,000円 = 96,000円ですね。

さらに、増加した税金は、38,000円 + 33,000円 = 71,000円です。

よって、実質的に増加した収入は、96,000円 - 71,000円 = 25,000円です。これは年額ですから、月あたりに換算すると、約2,080円となる。

子ども手当の受取額は、名目では月額13,000円だけれども、実質では月額2,080円なのですね。「うわぁ、13,000円も給付されるのね」と嬉しくても、実質の給付額は2080円ですから、微妙な感じです。


厳密な朝三暮四ではありませんが、実質な給付率は、2,080 / 13,000 = 0.16 ですので、16%です。

子ども手当では、「誰が、いくら、いつ、どこで受け取れるのか」が重要な情報ですから、他の制度との連動はあまり伝えられないようです。


政府のオカネは自分たちのオカネですから、「左のポケットから右のポケットにオカネを入れ替えているだけ」と皮肉を言われても反論しにくいです。公的な給付は、自分の銀行口座から引き出しているだけであって、自分の持分が増えているわけではないのですね。それゆえ、給付を受け取っても必ずしもハッピーな気分になれるとは限らないわけです。

山口正博 社会保険労務士事務所
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