book558(意に反して休職させるとき。)




■条件を設けて休職するか、条件にかかわらず休職させるか。


就業規則を読むと、色々と労務管理に関するルールが書かれています。勤務時間や休日、退職や解雇、服務規程など労務管理に関する内容がズラーッと網羅されていますよね。

就業規則には、上記のような内容だけでなく、おそらく「休職」に関するルールも書かれているのではないでしょうか。休職となる条件が箇条書きにされて、その条件に当てはまると休職とされる。さらに、条件ごとに休職の期間が設定され、復職や休職期間の取り扱いについても書かれているかもしれませんね。


特に条件を設けることなく休職させることはあまりないとは思いますので、おそらくほとんどの会社では何らかの条件を設けて休職制度を運用しているはずです。

例えば、病気で仕事ができなくなったとき。病気といっても、業務上の理由による病気と仕事とは関係ない病気があるので、それぞれで条件や扱いを変えているかもしれませんね。

また、怪我でしばらく休むことになったときも同様です。怪我といっても、業務上の怪我と業務外の怪我がありますから、両者で扱いをわけるのか、それとも分けないのか。この点でも企業ごとに設定が違うはず。

他には、何か事件を起こして刑事事件になったために仕事を休むという場合もあるでしょうね。自動車を運転していて人をはねたとか、駅のホームで他の乗客と喧嘩になったとか。このようなパターンがありそうな気がします。


予め設定した休職の条件にスンナリと合致すれば特に問題はないのですが、時には休職にすべきかどうか微妙な場面があります。その典型例が「欝(うつ)」です。

欝が病気であることは認知されつつあるのですが、自分自身が欝であるかどうかを理解するには時間がかかる時があります。何となく体がダルいとか、ちょっと食欲が不振という程度だと、本人も自分が欝であるかどうかが分かりにくいはずです。本人が分かりにくいのですから、本人以外の人ならばなおさら分かりにくいでしょうね。

もし、欝であることが確かならば、疾病であると考え、休職するように手続きができる。しかし、本人も同僚も上司も、本人の状態が欝であると分からなければ、休職するもしくは休職させることができないですよね。

鬱状態で仕事をしていると、何か事故が起こるかもしれないので、会社側で病気らしいと判断したら、会社側の判断で一方的に休職として扱いたい場面もあるかもしれない。休職の条件だけを設けていると、条件に合致しない場合は休職とならないので、会社側の判断で休職を命じることができるようにしておけば、本人が休む気がないときでも休ませることができますよね。

欝の初期だと、本人も仕事はできると思って、仕事を続けるでしょうから、休職の条件だけでなく、使用者の判断で休職を命じる可能性もあれば、初期の欝の人も休職にしてあげることができるでしょう。

ただ、一方的に休職を命じることができるのかどうかが疑問を抱くことろです。休職を命じるとなると、本人から仕事を遮断することになるし、仕事を休むとなると収入にも影響があるかもしれない。さらには、会社側の判断で休職させたとなると、労働基準法26条の休業手当が必要になるのではないかという点も気になるポイントです。







■休職命令と労働基準法26条の区別。



本人が大丈夫と思えるときでも、会社の判断で休職にしたい。そう多い場面ではないものの、全くないとまでも言えない。

就業規則に休職の条件を設けて、それに当てはまるかどうか判断するのが無難な方法ですが、それだと条件に当てはまらないときには休職扱いにできない。先ほどのように、精神疾患である軽度の欝状態になっている人がいると、病気だと判定しにくいため、休職にもしにくい。けれども、その状態で仕事を続けていると、何か事故を起こすかもしれないし、周りの人への気持ちにも影響を与えるかもしれないので、命令でもってその人を休職にしたい。

休職の条件を箇条書きにした後に、「その他、休職するのが適当と会社が判断したとき」というように最後に包括条件を設けると会社の判断で休職させることもできる。

国家公務員法の79条には、本人の意に反して休職とすることができるルールがある。

第七十九条  職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。
一  心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二  刑事事件に関し起訴された場合

ただ、公務員を強制的に休職させることができても、会社員も同じようにできるのかが気になる点です。労働基本権を制約されたり、ルール通りに手続きを進めたり、組織内部の通達に従って決済したり、公務員は身分が安定している代わりに制約が多い環境で仕事をしている。そのため、休職の取り扱いでも、一方的な扱いを受ける可能性があるのでしょうね。

しかし、公務員はそうであっても、会社員も同じように扱うとなると、濫用的に休職命令がなされるのではないかとか、会社の命令で休ませたら労働基準法26条の休業になるのではないかと思えるかもしれない。

会社の裁量で休職させるとなると、懲戒処分の代わりに休職命令が出され、命令が濫用されるのではないかという心配を抱くところ。この場合は、会社の判断で休職させる場面を限定しておくと良いかもしれない。国家公務員法79条のように、心身の故障と刑事事件の2つの場面に限定して、一方的な休職が可能になるというのも良い方法だと思います。


一方的に休職させると、使用者責任での休業と判断される可能性もある。労働基本権26条では、使用者の責任で労働者を休ませた場合は、休業手当を支払う必要がある。それゆえ、会社の判断で休職させてしまうと、労働基準法26条に該当する可能性があるわけです。

もちろん、うつ病のように本人側の理由で休ませた場合は26条の問題にはならないのですが、休む理由がないもしくは理由が希薄な状態で休職の命令をしてしまうと、本人ではなく使用者の責任で休ませたと判断できる可能性もある。

本人に原因がある場合は、26条の問題にはならないのですが、主観が入り込む場面。
濫用される可能性もある

一方的に休職させる場合は場面を限定して、主観が入り込んで休職命令が濫用されないようにルール作りをしたいですね。





山口正博 社会保険労務士事務所
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