book549(雇用契約の期限をどうするかは当事者で決めること)





■5年間更新すると無期限に。



近頃、派遣労働と同様に、有期労働も規制を強めていく雰囲気が感じられる。

労働政策審議会建議「有期労働契約の在り方について」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl.html)のページで掲載されている内容(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z0zl-att/2r9852000001z112.pdf)を読むと、有期労働契約の反復更新をどうするかについて書かれていることがわかる。

有期雇用契約の更新や雇い止めについては、以前からも物議を醸してきたのですが、今では労働契約法を改正してこの問題を解決しようと労働政策審議会が建議している。

何度も雇用契約を更新した経験は私にもあるので、更新や雇い止めに問題があることは分かっているのですが、規制してまで対処する問題なのかどうかが疑問です。

ちなみに、パートタイムで働いているからといって有期労働になるとは限らず、期間については特に決めずに働いていた経験もある。単にルーズな事業所だったという可能性もあるけれども、フルタイムではない雇用契約だからといって必ず期間が設定されているとは限らない。


一定の期間にわたって更新(審議会の建議では5年)すると期間の定めのない雇用契約に転換させるようですが、更新で契約の中身が変わるという不自然さがある。更新を繰り返すと、初めに契約した時の内容から変わるのですから、やはりヘンな感じです。契約の内容を変えるならば、内容を変えて契約を更新する必要があるでしょう。

継続的な取引をするための契約は雇用に限らない。アパートの賃貸、携帯電話の通信契約、商品の供給契約、部品の供給契約、機器の保守契約など。このように、一度締結した契約で、何度も取引するのは雇用に限定されるものではない。

では、例えばアパートの賃貸契約で、契約を更新せずに敷金の返還条件を変更したり、家賃を変更したりすればどうなるでしょうか。借家人からすれば納得しにくいのではないでしょうか。契約内容を変えるからには、大家と借家人で内容を変えて契約を更新するはずです。


内容を変えない契約を何度も締結して、ある時点から内容が変わるというのはやはり無理があるように思えます。契約と実態がずれるわけですからね。







■第三者が雇用の継続を強制する。



雇用を継続するかどうかは当事者が決めるべきであって、規制でもって強要すると上手くいかないのではないかと思います。

あえて契約を変質させなくても、5年も更新すれば事実上は期間を定めないものになっているのではないでしょうか。あえて期間を定めないものに変えるほどの利点があるようには思えない。

期間を定めているから雇い止めされるわけではなく、期間無しのフルタイム社員であっても解雇されることはある。「契約の期間を定めないから保護の度合いが強い」と思うのかもしれないけれども、思い込みなのではないか。期間を定めようと定めまいと、保護の度合いは変わらないと私は思う。


審議会の建議では、有期雇用契約を締結できる業務を限定するところまでは不要としたものの、5年を超えて更新したら労働者の申し出により契約期限を定めないものに変えるところまでは踏み込んでいる。もし、何らかの対策を講じるならば、有期労働契約を締結する段階で、契約期間無しのフルタイム化への条件をあらかじめ示しておくのが良いのではないでしょうか。定年退職者を再雇用するときのように、条件を設定して、フルタイムへの転換をするように事業所ごとに自主的にルールを設ける。

有期労働契約をどうするかは、事業所ごとに自主的に対処するのが妥当です。

強制的に雇用関係を維持させようとすると、困るのは企業ではなく有期契約で働く人達です。派遣労働でも同じで、派遣労働への規制を強めると、派遣形態で仕事をする機会が減ってしまう。守ろうとする人に不利益を与えるという点では、有期労働への規制と派遣労働への規制はよく似ている。皮肉な規制です。


期間を定めない雇用でフルタイムで働いている人は、自分で働く時間を決めにくいため、時間をコントロールしにくい。また、副業もできないし、兼職もできない事業所もある。それゆえ、相応の犠牲への対価として賃金単価が高い。

より拘束を強めれば賃金が高くなるし、より拘束を弱めれば賃金は低くなる。こう考えると、有期労働契約の人と期間無し契約の人との間で差別があるとは思えない。

期間を定めない契約に変われば、それ相応の制約もありますから、必ずしも契約を転換させて期間無しの契約を実現するべきかどうかは簡単に賛成しにくい。さらには、同じ契約を更新しつづけるとある時点で契約の内容が変わるというヘンな理屈という点でもやはり賛成はしにくい。


労働契約法で強制するのではなく、自主的にフルタイムへの転換条件を設けて事業所ごとに対処するのが妥当だと私は思う。

山口正博 社会保険労務士事務所
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