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減給と減給制裁の違いは?

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減給と減給制裁は違う。
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反射的に91条を使うわけではない。

懲戒処分は日常茶飯事で発生するものではないですが、大きな企業で働いているとたまに懲戒処分される人が出てきます。会社の備品を無断で持ち帰ったとか、販売している商品を購入せずに自分のものにしたとか、頻繁に遅刻しているなどの理由で処分されるかと思います。他には、棚卸処理(飲食店や小売店で実施する作業のこと。年に3回ぐらい実施しているはず)での不正とか、データベースから顧客データをメディアにコピーして持ち出したり、権限のないデータにアクセスしたりなど、懲戒対象になりうる行為は色々あります。

懲戒処分には、出勤停止や戒告、譴責、厳しい処分だと解雇もあります。また、減給という懲戒処分もあって、2ヶ月間10%減給という形で実施されるかと思います。

ちなみに、減給は、「一般的な意味での減給」と「制裁としての減給」の2つに分けることができます。上記のように何らかの良くないイベントが発生することによって実施されるのは、後者です。一方、会社の業績や個人の業務成績に応じて実施されるのが前者です。

減給が話題になると、反射的に労働基準法の91条(以下、91条)が適用されると考える人もたまにいますが、減給だから91条によって制約されるとは限りません。91条の「その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」という部分をご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、このルールは減給事案の全てに当てはめるルールではないのです。

つまり、減給と減給制裁は違うということ。



減給と減給制裁の境界線。

労働基準法の条文を見ると、91条は就業規則の章に書かれています。第9章の就業規則のエリアを見ていただけば分かると思います。89条から93条までが就業規則関連の規定で、制裁規定の制限について書いている91条も9章に含まれています。

なぜ91条が就業規則のエリアに書かれているかというと、制裁規定の制限が就業規則に関連しているからです。つまり、就業規則に関連した減給制裁の場合は91条によって制約を受けるわけです。逆に言えば、就業規則に関連しない減給の場合は91条によって制約を受けないとも解釈できます。

よって、何らかの理由によって減給されたとしても、その減給処分が就業規則の内容に反したことによるものなのか、それとも会社もしくは社員個人の業務成績によるものなのかを確認しないと、91条の対象なのかどうかは分かりません。「あっ! 減給だ。1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えたり、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはいけないんだ」とすぐに判断できるとは限らないのですね。

条文の位置から制度設計者の意図が分かるときがありますが、今回もその例だと思います。一般的な減給と制裁としての減給を分けるために、第9章の就業規則に91条を置いたのですね。条文の位置にもそれなりの意味があるわけです。ちょっと脱線しますが、条文の最初の方で定義をするのも意味があって、先に言葉の定義をすることで後から書く条文の内容がブレないようにする意図があります。労働基準法だと、9条から12条が定義条文です。他の法律でも、最初の方に定義のための条文が設けられているはずです。


雇用契約を変更することで結果として減給になることもあるかと思いますが、これも91条の対象外です。雇用契約の変更は懲戒処分ではないですし、契約の変更が就業規則に違反するというのもヘンです。ちなみに、就業規則で定める基準に達しない雇用契約は、達しない範囲で無効というルール(労働契約法12条)もありますが、この場合は無効処理がなされるだけであって、減給処理がなされるわけではありません。つまり、雇用契約の変更による結果的減給は91条が想定する減給制裁とは違うということ。





期別の曖昧さと偽装の可能性。

就業規則の内容に違反した場合は制裁としての減給になり、就業規則に関連しないところで減給すれば91条によって制限されない。この点について分かると、次に疑問になるのが両者をキチンと分けられるのかという点です。

実際は制裁として減給しているのに、表向きは一般的な減給であると外観を整えれば、91条の制約を回避しながら減給制裁が可能なのではないかと思えます。つまり、上記の両者のイイトコどりをするわけです。

例えば、よく遅刻するする人に対して制裁するときに、就業規則に違反しているという理由ではなく、個人の業務成績に関連付けて処分を実行すれば、91条の対象から外れる可能性があります。

制裁としての減給を91条が確実にキャッチしきれるかどうか。この点はちょっと気持ちを向けておく必要があります。

具体的に懲戒の対象となる行為が就業規則に書かれているならば、制裁なのかどうかは分かりやすいはず。しかし、抽象的な服務規程に違反したときには制裁なのかどうか判断しにくいかもしれない。「従業員は、誠実に業務に取り組まなければいけない」という類の規定がキナ臭いところです。

もしくは、減給だと91条が絡んでくるので、出勤停止で代用するのも一考かもしれない。出勤停止は減給も含まれます(社員さん本人の責任なので26条の休業にならず、欠勤控除と同等の効果になる)からね。

 

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
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このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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