book539(変形労働時間制は時間を計算する方法を変更する手段)






■変形労働時間で残業が減る、、、の?



労働時間の管理は、1日8時間、1週40時間という枠内で行うのが一般的かと思います。その枠を超えるときは36協定(さぶろくきょうてい)にて手続きを行い、一定の制約の下で、通常の時間枠を超えて仕事ができます。

労働基準法には上記のような管理方法とは別に、変則的に時間を管理する方法があります。変形労働時間制度はその1つで、1日8時間、1週40時間という枠を変形させて労働時間を配分することができる。

変形労働時間制度を説明するときには、「変形労働時間制度を利用すると残業を削減できます」と言われたり書かれたりすることが多い。たしかに、変形労働時間制度は、ある日の勤務時間を短くして、ある日の勤務時間を長くすることができるし、ある週の勤務時間を短くして、ある週の勤務時間を長くすることもできる。それゆえ、キチンと正しく制度を運用すれば法的には残業が発生しにくいように時間を管理できます。

ただ、「変形労働時間制度を利用すると残業を削減できます」という表現は、ある程度は正しいですが、ある程度は的が外れているように思います。






■残業が減ったのではなく、計算方法が変わったから。



変形労働時間制は、労働時間の管理方法を原則の方法ではなく変則的な方法に変更する制度です。つまり、1日8時間、1週40時間という固定の時間枠で管理するのではなく、本来は固定である時間枠を、他の日や他の週、他の月と融通しあうことで、言わば労働時間のポートフォリオを組み替えているわけです。あくまで既存の時間枠の配分を組み替えているのであって、変形労働時間制度によって働く時間が増えるわけではない。

変形労働時間制度は、労働時間の計算方法や処理方法を変えているのであって、残業そのものを減らしているわけではない。制度を導入したからといって、仕事の内容や働き方が変わるわけではありませんからね。300円のクレープを500円にしたら、クレープがマカロンに変わっちゃったなんてヘンなことは起こらない。300円でもクレープ、500円でもクレープのままのはず。

随分と前ですが、グルーポンの会計処理が変更されて、売上数字が減少しましたよね。あれは、売上が実際に減少したのではなく、従来は将来時点で加盟店に支払う代金も自社の売上に計上していたので、加盟店に支払う代金は売上数字から除くように会計処理の方法を変更したところ、売上数字が減少したのですね。この点は変形労働時間制度に似ていて、実態は変わっていないけれども、計算の処理方法を変えたために、実態まで変化したかのように感じてしまうという心理的なカラクリです。

変形労働時間制度は、時間を把握する基準を変えるから、残業が減ったかのように思えるわけです。確かに、法的には残業が減る。しかし、勤務時間の総計は変動していないかもしれない。制度によって総時間が減るとは限らないし、仕事のやり方が変わるとも限らない。

「時間の把握方法を変えるが残業そのものを解消するとは限らない」という点が変形労働時間制度の知っておきたい特徴の1つです。

山口正博 社会保険労務士事務所
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