book533(固有名詞は区別するための名詞。)






■俗称が使いやすく、固有名詞は使いにくい。



「年金は何歳から受け取れるんですか?」という表現を使う人は少なくないと思う。テレビでも雑誌でも、聞いたり目にするフレーズです。実際に自分自身が発言したり、相手が発言しているところを聞いたという人もいるはず。

ところで、この場合の「年金」とは何なのか。素直に考えると、年を取った時に受け取る年金だと判断するはず。では、年を取った時に受け取る年金とは何なのか。少し年金を知っている人ならば、「それは老齢年金だろう」と思うはず。では、その老齢年金は老齢厚生年金のことなのか、それとも老齢基礎年金のことなのか。ここまでキチンと区別できるとなると、なかなかよく知っている方だと思います。

他に、身体の障害だと「障害年金」という表現を使うかと思いますが、この場合も障害厚生年金と障害基礎年金の2つに分かれる。その障害年金が障害厚生年金なのか、それとも障害基礎年金なのか。

さらに、死んだ人がいたら「遺族年金」がありますが、ここでも遺族厚生年金と遺族基礎年金で分かれますが、キチンと分けて話しているのかどうか。

老齢年金は単に「年金」と表現する方が分かりやすいし、傷害に関する年金は「障害年金」と表現し、死亡に関する年金は「遺族年金」と表現したほうがシンプルです。あえてややこしい表現を使わなくても分かるのだから、あえて難しくする必要はないと思えるわけです。

ただ、固有名詞を変形して使うと、便利なときもありますが、場合によっては相手に理解してもらうまでに時間がかかることもあれば、誤解のもとになることもあるかもしれない。





■失業保険という保険はない。



失業保険という名称はよく知られているかと思いますが、この失業保険というものは実際にはなく、雇用保険が正式な制度です。

失業保険という名称を使うと、感覚的には馴染みやすいのですが、失業のときだけ使える保険だと思ってしまいがちではないでしょうか。つまり、失業のための保険だと思えるわけです。しかし、実際には雇用保険は失業のときのみ使えるものではなく、育児や介護で休むときにも使えるし、資格学校に通うときに使う教育訓練給付も雇用保険のメニューに含まれている。

日常で使われている俗称は分かりやすく馴染みやすいので、どうしても正式名称を使っていこうという気持ちになりにくい。しかし、使いやすい名称を使うと、失業保険の場合のように、失業の場合にのみ使えると思い込んでしまうかもしれない。

年金でも、一口に老齢年金といっても、老齢基礎年金と老齢厚生年金では仕組みが異なる。また、「年金は何歳から受け取るの」というときでも、どの年金のことを言っているのかを知るようにすると、理解が一歩進むはず。これは障害年金と遺族年金も同様です。

固有名詞は他のものと区別するために使われるのだから、それを俗称化して使うと、他のものとの区別がしにくくなるという点については知っておきたいとこです。

山口正博 社会保険労務士事務所
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