社員さんが要らないといったら不要なのか。
法律で決めた時間枠を超えて仕事をすると、時間外の労働となり、その労働に対して割増賃金が必要である点については多くの方がご存知かと思います。
1日8時間、1週40時間(例外44時間)が法定労働時間の枠ですから、この枠内で仕事を終われば法定時間内労働、この枠を超えて仕事をすると法定時間外労働というわけです。
ところで、働いている人が何らかの理由なり動機により、「割増手当はいりません」と会社に申し出て、会社がその申出を了承したらどうなるのか。
割増賃金がなくても仕事を続けたいから申し出たのか、手当を受け取らなければ会社からの印象が良くなると思って申し出たのか、それとも会社から半ば強要されて申し出たことにされたのか。
では、働いている人からの申出によって時間外割増賃金を支払わないようにすることは可能なのか。さらに、その申出を会社側が受け入れることは可能なのかどうか。この点が問題となる。
当事者で決めることではない。
結論から書くと、当事者が時間外割増賃金を辞退することを了承したとしても、割増賃金を支払わないようにすることはできません。
「会社と社員間でOKしたんだからいいじゃないか」と私的自治を主張してもダメです。
時間外手当は、当事者が支給の可否を決めるものではなく、また支給の基準や額を決めることもできません。法定労働時間のラインを超えたら当然に必要になる手当であり、法律以外でコントロールするものではないのですね。
現実には、「割増手当はいりません」とか「残業代はナシでいいです」とあえて言う人はおそらくいないと思いますが、もしかして世の中には変わった人がいるかもしれないので、あえて伝えている次第です。
残業代以外にも、「休憩はいりません」と言う人がいますよね。私もこのような人を知っています。「休憩はいらないので、仕事を続けたい。そうすれば、休憩時間の部分も勤務時間になり賃金が支給されるから」という理由のようです。
確かに、休憩時間は勤務時間から控除されますから、その分は賃金には反映されないかもしれない。しかし、それは時間あたりで賃金を受け取る人には当てはまるかもしれないが、日給や月給で働く人は休憩時間の有無で賃金はおそらく変化しないのではないでしょうか。それゆえ、フルタイムで働く人が休憩を辞退しても意味をなさないのではないかと思います。
時間外割増賃金であれ休憩であれ、これらは法律で決めた仕組みですから、会社や社員さんが自分たちの意思でコントロールして辞退できるものではないという点は知っておいてください。