book525(徒歩・自転車通勤と電車・自動車通勤で手当の有無が違う。)







■歩きとチャリは手当なし?



通勤の際に、通勤手当や交通費という名目で、金銭的に補助をする会社なり組織は多い。電車で通勤する人、車で通勤する人、バスで通勤する人、その他にも交通手段はあるかと思いますが、これらの交通手段を用いて通勤している人には何らかの経済的便宜がはかられることが多いはずです。

ところが、徒歩や自転車で通勤していると、通勤手当や交通費が支給されないところもある。私の経験でも、自転車で店や事業所まで行ける場合は、当然のように通勤費が支給されなかった。

人によっては、上記のような違いについて、「歩いたり自転車に乗って通勤すれば、確かに金銭的な支出はないので、交通費が支給されないのも分からないではない。けれども、何だか釈然としない」と思う人もいらっしゃるのではないでしょうか。

交通手段の違いによって、費用が補助されることもあれば補助されないこともある。「実際に要した費用を支給する」というルールで通勤費用が補助されているという点は理解できても、やはり不公平感を抱く人はいるかもしれませんね。






■通勤手当と住宅手当の連携プレイ。



交通費は、純粋に通勤費用のみを賄うものと思いがちですが、実際は通勤以外の行動にも影響します。つまり、費用が補助されるといっても、通勤のためだけに便益を与えるものではないのですね。

例えば、電車で自宅から会社なり事業所まで移動するとする。もっと具体化すると、東京で、自宅が新宿にあり、勤務先が東京駅を降りてすぐの日本橋だったとする。この場合、単純に考えれば、新宿駅と東京駅を中央線の快速で移動するだけであって、特に考えるようなポイントもなさそうです。

しかし、新宿駅から東京駅までの通勤定期を持っていれば、通勤以外でも電車を利用するはずです。ちなみに、「通勤定期なんだから、通勤以外で使うのはダメなんじゃないの」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、通勤定期を購入するには特に身分の証明は不要ですので、通勤以外の目的でも購入できます。

私生活でも通勤定期を利用できるだろうし、通勤経路にショッピングセンターがあったり、家電量販店や映画館に行きたいときにも使える。新宿駅から東京駅までの区間には、四谷や御茶ノ水、神田とあり(他にも駅はある)、古本屋街に行くこともできるし、少し歩くけれども秋葉原にも行くことができます。また、皇居を見に行くこともできる。さらに、皇居周りのランニングも可能でしょう。東京ドームへ野球の巨人戦を見に行くことできますね。四谷の近くには神宮球場もある。

上記のように考えると、電車で通勤するといっても、必ずしも通勤だけのために移動するとは限らず、通勤以外の目的でも交通費補助の便益を享受できるわけです。実際に要した費用のみ支給する交通費ですが、実際には交通費以上の利益を得る可能性があるのですね。この部分が徒歩や自転車で通勤する人にとって、モヤッとした部分なのかもしれません。

自家用車での通勤も同様です。自家用車というぐらいですから、通勤以外にも当然に利用するはず。買い物、旅行、墓参りなど、自家用車の用途は多彩です。自家用車の場合、距離に応じて燃料費が補助される方式が多いようで、距離が遠くなればなるほど補助される額も多くなる。通勤のために燃焼したガソリンの量を計測し、その部分のみを燃料費として請求するのは物理的に無理でしょうし、メンドクサイでしょうからそのような手続きはしないだろうと思います。となると、通勤以外の場面でも燃料費を補助する構図になってもやむを得ない。もちろん、その程度は誤差の範囲と考えることもできます。ただ、自家用車の燃料を補助することで、通勤以外の場面でも間接的に便益を与える可能性があるのも否定できない。


ゆえに、自転車や徒歩だからといって通勤費を支給しないのは、若干ながら不公平な感じがしないでもない。

とはいえ、徒歩や自転車には金銭的支出を伴わないので、特別な手当ては不要ではあります。ただ、上記のように間接的な効用に差がある点を鑑みると、何らかのフォローがあってもよいように思います。



最低額の通勤費ラインを決めて、たとえ徒歩や自転車での通勤でも最低額は支給されるようにすることも可能です。例えば、徒歩や自転車でも月額3,000円の通勤費は最低額として支給されるというもの。ただ、根拠を示しにくいのが欠点です。費用を支出していないのに、なぜ手当を支給するのか。これは不自然です。また、なぜ月額3,000円なのかという点の説明に苦労するはず。

他には、「健康増進手当」などの名目で手当を用意するる方法もある。徒歩や自転車は他の乗り物に乗るよりも健康的な選択肢なので、この点に着目しこの手当を支給するわけです。しかし、これにも欠点があって、健康増進という名目が人によっては意味不明に思えるのではないでしょうか。「何で健康を増進することに対して手当なの? そんな手当を会社が支給するものなの? 訳がわからない」と思えるのではないでしょうか。


そこで妥当な解決策を考えると、徒歩や自転車を使っているということは、職場から近い場所に住んでいるということですよね。ならば、通勤手当は用意できないとしても、住居手当でフォローできるのではないでしょうか。例えば、会社から半径10Km以内に住んでいる人への住宅手当を用意すれば、通勤手当の代わりになるのではないか。

遠くに住んでいる人は通勤手当で便益を享受し、近くに住んでいる人は住居手当で便益を享受する。会社と自宅の距離に応じて、通勤手当と住居手当をトレードオフするように設計すれば、徒歩や自転車で通勤している人もキチンとフォローできるはずです。

通勤手当だけで解決しようとすると無理があるが、通勤手当と住宅手当を組み合わせて設計すれば妥当な解決を生み出せるのですね。

山口正博 社会保険労務士事務所
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