book524(所定労働時間から法定労働時間へ基準を変える。)




■所定労働時間で時間外勤務を計算していた。



時間外勤務を把握するときは、1日8時間と1週40時間(例外44時間)の基準を用いるかと思います。勤務時間数がこの基準内であれば法定内労働になり、この基準を超えれば法定外労働になるわけですね。

時間外勤務には割増手当が伴いますが、これは上記の法定労働時間の基準を超えた部分に対して支給する必要がある手当です。ところが、法定労働時間ではなく所定労働時間で時間外勤務を計算している会社もあるようです。

例えば、1日7時間30分を所定労働時間と設定し、その時間を超えたときに時間外割増手当を支給するようにしていると、1日8時間に達する前に割増手当が必要になります。また、1週間単位の計算でも、1週37時間30分を超えた部分に対して時間外割増手当を支給するようにしていると、1週40時間に達する前に割増手当が必要になる。

上記のように、法定労働時間ではなく所定労働時間を基準にして時間外勤務を把握しても間違いではない。しかし、なぜそうしたのか不思議に思えますよね。あえてそうする必要がないのにそうしたわけですから、妙な感じがするのも当然ではあります。





■初期設定は法定労働時間を基準にする。



法律に満たない水準の取り扱い(法律よりも不利な取り扱いという意味)は、法律の水準に基準が修正される。しかし、法律を超過する水準の取り扱い(法律よりも有利な取り扱いという意味)は、その水準が基準となる。これは労務管理の基本原理のようなものです。

もし、所定労働時間を基準にして時間外勤務を把握しているならば、それは法律で定める法定労働時間を超過する取り扱いなので、時間外勤務を計算するときには法定労働時ではなく所定労働時間が基準になる。

1日7時間30分や1週37時間30分という所定労働時間を設定することそのものは良いとして、なぜその設定を時間外計算でも用いてしまったのか。時間外割増の計算は1日8時間、1週40時間の基準を用いればよかったのですが、所定労働時間を時間外割増手当の計算でも使ってしまっている。もちろん、意図して上記のようにルールを決めたならば差し支えないでしょう。しかし、意図せずに法定労働時間ではなく所定労働時間を割増手当の計算に使ってしまっているならば、おそらく最初の設定が間違っていたのではないでしょうか。雇用契約書か就業規則で、「所定労働時間を超えた労働時間に対しては時間外割増賃金を支払う」という類の文言を含めてしまったのかもしれない。

ならば、「法定労働時間を超えて就業した場合に時間外割増賃金を支払うように変更したらいいんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。確かに、所定労働時間を法定労働時間に変えるだけだから、ホイッと変えられるだろうとも思える。しかし、計算の基準となる時間を変更してしまうと、時間外勤務の時間数が一定と仮定すれば時間外割増賃金の額は減ってしまうでしょう。そうなると、「あれっ? 時間外勤務の時間数は変わっていないのに、なぜ割増手当の額だけが変わっているの?」と気づく人もいるはずです。

すでに7時間30分もしくは1週37時間30分が計算の基準になっているのに、それを8時間もしくは1週40時間に変えてしまうと、いわゆる不利益変更になる。「所定」と「法定」という言葉だけの違いですが、現場ではホイッと変えられるわけではないのですね。

もし上記のように変更するときは、就業規則を改定し、さらに雇用契約書に「所定労働時間を超えた労働時間に対しては時間外割増賃金を支払う」などの文言が含まれている場合は、新しい契約書(「法定労働時間を超えた労働時間に対しては時間外割増賃金を支払う」というように変更したもの)を用いて雇用契約も締結しなおす必要がある。


最初の設定がヘンだと後から厄介な手続きが発生するので、初めはちょっとだけ気を配っておく必要がありますね。

山口正博 社会保険労務士事務所
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