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年功序列をヤメないにはワケがある

年功序列




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年功序列をヤメないにはワケがある。
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慣習のような法律のような仕組み。


年功序列という言葉は、辞書では「勤続年数や年齢が増すに従って地位や賃金が上がること」と定義されている。辞書の定義に従えば、「勤続年数や年齢」と「地位や賃金」をリンクさせるのが年功序列なのだと思う。

年功序列には大きく分けて2つのパターンがある。1つ目は、年齢が高くなりや勤続年数が長くなると、仕事の経験や知識が増す。そのため、結果的に年齢の高い人の評価が高くなるパターン(「結果的な年功序列」と表現できる)。2つ目は、26歳だとこの役職、33歳だとこの役職、37歳ならばこの役職、というように、あたかも割り当てられるように地位が配置されるパターン(「非結果的な年功序列」と表現できる)。

おそらく、前者は肯定され、後者は否定される傾向にあると思う。しかし、後者は否定される傾向にあるといっても、実際にはよくあるパターンではないだろうか。年齢別に基本給や役職を事前に設定しておくと便利ではある。例えば、何歳から何歳までならばこの役職とこの賃金水準というように決めておけば、その決めた枠に当てはめて人事評価をすることができるので、どのような基準を設けるか、誰が評価するのかを考える必要がない。つまり、年齢を利用して評価すれば、人事評価で最も厄介なポイントを回避できるわけだ。


ちなみに、年功序列で人事評価せよというルールがあるわけではない。労働関連の法律にはその点について書かれていないし、就業規則や雇用契約書、もしくは労働協約で「年功序列」というキーワードが含まれていることもないはず。しかし、ルール化されていないけれども、あたかもルール化されているかのように根付いている。それが年功序列という仕組み。


続けるにはワケがあるはず。


何かを続けるには何らかの理由があるはず。例えば、ある本を読み続けるのは、その本が面白いとか、その本の内容を学ぶ必要があるとか、あるいは単に読みたいから読んでいるという可能性だってある。銭湯に通い続けるのは、家風呂がないからかもしれないし、狭い家風呂がイヤなので銭湯に通っているのかもしれない。

年功序列が話題になると、ほぼ否定的な方向に話が進む。「賃金水準の高い中高年が残り、新しい若年者が組織に入ってこない」とか、「組織の新陳代謝を阻む」とか、「社員のヤル気を削ぐ」などの理由がよく挙げられる。しかし、否定的な主張がなされているにもかかわらず、年功序列の仕組みはなくならない。となると、年功序列の仕組みは、企業にとって何らかの利点があるはずだと思わざるをえない。もし不都合な仕組みならば、すでに放棄されているはず。にもかかわらず、年齢で人事評価は実施されている。


まず考えられるのは、指揮命令系統を維持するためという理由がある。

年下の人が年上の人よりも評価が高くなると関係がギクシャクするので、年齢が上の人を高く評価するというもの。確かに、年下の上司と年上の部下という関係になると、お互いに気を使って、どちらかが退職したりすることもあるかもしれない。また、年上の人の指示ならば従いやすいが、年下の人の指示だだと反発する気持ちを持つ人もいるのではないだろうか。

そのため、年上の上司と年下の部下という状態を作り出し、指揮命令系統を維持する役割をになっているのが年功評価なのかもしれない。先ほど書いたように、結果的な年功序列として年上の上司と年下の部下という状態が作られているならばおそらく物議を醸すことはないが、非結果的な年功序列が原因だとすると納得しない人もいるのではないか。


ちょっと話を脱線するが、組織で仕事をしていると、組織内での呼称をどうしようかと疑問を抱くことがあると思う。男性ならば、「さん」を付けるか、「君」を付けるか、この2択で悩むことがある。女性ならば、全員を「さん」付けにして統一できると思うが、男性の場合は選択肢が2つある。

上司には「さん」を付けたり役職名で呼ぶが、部下には「君」を付けて、男性への呼称を分けている人も多い。私は何でそんな面倒な呼び変えをするのだろうかと思うが、本人は当然だと思っているのかもしれない。男性であれ女性であれ、全員をさん付けで呼べば困らないだろうと私は思う。

部下は呼び捨てで上司はさん付けにしてしまうと、年上の部下をどう呼ぶかでさらに悩みが増える。年上だから「さん」にするか、それとも、部下だから「君」を選択するか。呼称の切り替えはこのように不毛な悩みを生み出すのですね。



話を戻すと、年齢評価に対置される評価基準として成果評価がある。年齢では仕事を評価していないので、人事評価は成果を基準に評価するべきという立場もある。確かに、人事評価は、人を評価するのではなく、仕事を評価するものであって、成果を基準に評価するという判断は正しい。

しかし、成果を基準に評価することを嫌う人は常にいて、成果を人事評価に入れるだけでダメと言う人もいる。中には、理由を問わずダメと言う人までいるのではなだろうか。

成果評価が嫌われる最大の理由は、「成果を評価する基準が無い。もしくは曖昧な基準が使われている」という点にある。基準もなく評価するわけにはいかないのは確かに真っ当な判断で、土台を作らずに家を建てるようなものですから拒否されてしまうのは仕方のないこと。

しかし、仕事を基準に人事評価を行うという方向性は正しい。ところが、基準である仕事を評価することができないのが悩ましいいところ。

多くの企業では、仕事を評価するための基準を作るのをサボってきたために、時給や日給、月給で賃金を支払い、出来高を評価しない環境になっているのではないか。もちろん、成果を数字で容易に把握できる仕事ならば今までも評価されてきたはず。しかし、成果を容易に数値的要素に換算できない分野では、仕事の評価基準を作ろうとしたものの挫折したか、それとも、そもそも基準を作ろうとはしなかったか、数値評価できないものはできないと考えているのか、それとも他の理由なのか。

特に、管理的業務に携わっている人を人事評価する方法については、未だに答えが定まらない。いわゆる「コストセンター」として考えてしまうと、評価の基準を作るきっかけを掴めないままになるかもしれない。それゆえ、数値評価できない仕事は年齢で評価し、人事評価を回避する手段として年功序列を使っているのかもしれない。



企業独自の仕組みであって法律ではない。


中には、「年功序列を止めさせよ」と主張する人もいる。中高齢者が多くなり、若年者が少なくなるので年功序列はダメだという点が主な理由らしい。ただ、自主的に行なっていることを止めさせるのはちょっと難しい。年功序列は外部から強制されて実施している仕組みではなく、企業が自主的に成立させている慣習だから、ヤメるかどうかは企業が決める。法的に行なっていることならば法改正で対処できるけれども、企業が任意で行っていることに介入するのは簡単ではない。

私は、年功序列が良くない仕組みだとは思わないし、良い仕組みだとも思わない。勤続年数や年齢を評価することは間違っているわけではない。年齢給という概念はあるし、勤続手当という概念もある。また、年齢を重ねるほど、接客サービスならば顧客応対が巧みになるだろうし、勤続年数が長くなれば仕事の要領も良くなるはず。さらに、退職金でも、勤続年数が計算要素に組み込まれることが多い。中小規模の会社で支給される退職金は、細かく計算方法や支給条件を設定せず、おそらく勤続年数の基準だけで支給されているのではないだろうか。

年齢や勤続年数を評価するとしても、評価のウェイトはあまり高くしないほうがいいと思う。ゼロ評価にする必要はないにしても、相対的に評価を低くするべき項目だろう。まして、年齢や勤続年数だけで評価を決めてしまっては、新しい人は組織に入ってこないはず。

ただ、成果を評価に含めるように変更したとしても、評価する基準が問題になる。絶対数字だけで評価すると、規模の大きい店舗が有利になりがちだし、他方、相対数字だけで評価すると、上昇余地のある中小規模の店舗が有利になるかもしれない。


私の知るところでは、パートタイムで働く人は時給が全員同じという会社もある。募集段階では「随時昇給」などと書いているものの、実際には昇給は全くない会社も多いのではないか。勤続1ヶ月の人、勤続6ヶ月、勤続3年、勤続5年の人がみんな同じ時給だったりする。
もし、違いがあったとしても、せいぜい20円とか50円程度の違いでしかない。この程度の差ならば、「違い」というよりも「誤差」と表現するほうが正しいだろう。なぜ時給が同じなのかというと、評価する基準がないというのが理由だろう。評価するのが面倒という点も理由になるかもしれない。1時間で900円とか1時間で1,100円というように固定してしまえば、時間と賃金をリンクできるので、評価を介在させなくても賃金の額を決めることができる。

また、フルタイム勤務でも、年齢別に基本給が決まっている会社があると思う。22歳-24歳、25歳-27歳、28歳-30歳、というように年齢ごとに階層を分けて、その階層ごとに基本給を設定し、あとは手当を上乗せして月給を構成する。手当の中には歩合手当のような成果に基づくものもあるが、個人ごとに大きな差が付くほどウェートは高くないのではないか。もちろん、年齢別で基本給を設定するが、その額を低めに設定し、基本給以外の要素で上乗せするような年功色の薄い年功序列もある。


企業はおしなべて人事評価が苦手だと思う。特に、社員ごとに成果を評価する点にいたっては、評価する基準や計算式をほぼ作っていないはず。年功序列は、人事評価の困難を回避するための手段として使われているのではないかと私は思う。「年齢や勤続年数で評価を決めておけば、説明が簡単だし、社員間でモメることもないだろう」と。それゆえ、年齢や勤続年数に応じて月給を決めてしまう。


ここで、人事評価の例を考えるならば、評価項目にパラメーターを設定し、各パラメーターに配点をする。さらに、合計点に会社が設定したウェート比率を掛けて計算した数字を評価とする方法がある。

大きく3セクションに分け、1項目5段階評価で、各セクションで5項目づつ配分。項目数は15項目なので、合計点は単純に計算すると75点になる。ただし、各セクションごとにウェート比率が設定されているので、評価結果への貢献度は異なる。



セクション1(習熟度)
項目1
項目2
項目3
項目4
項目5

合計(25点満点)× 0.3(会社が任意に設定したウェート比率)



セクション2(人物)
項目1
項目2
項目3
項目4
項目5

合計(25点満点)× 0.2(会社が任意に設定したウェート比率)



セクション3(成果)
項目1
項目2
項目3
項目4
項目5

合計(25点満点)× 0.5(会社が任意に設定したウェート比率)


より重視したいセクションでは、ウェート比率を高く設定すればいいし、そうではないセクションでは比率を低くすればいい。もちろん、どんなセクションと項目を設定するかは企業ごとに違うだろうし、上記のような評価方式を採用していないこともある。また、人事評価は経営者の裁量に基づいて行われる企業もあるはず。小規模な会社では評価基準そのものが無く、年齢に基づいて賃金を決め、評価作業そのものを実施しないことが多い。人材募集の書面で、「昇進、昇給随時」と募集要項に書かれている企業では、まず人事評価はされていないと思っていい。

年功序列に基づいて評価する最大の理由は、人事評価をしないで済むという点にあると私は思う。利便性と厄介さを兼ねた一長一短の仕組みなのですね。

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

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【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

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【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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