book517(休暇の取得と時季変更の不均衡)






■いつでも時季変更できるのですか?



有給休暇の取得時期は会社の判断で変更できる点はご存じの方も多いかと思います。「10月4日の休暇を10月12日に変えてください」というように変更するのが一般的かと思います。

しかし、会社によっては、単純に「変更してくれ」と言うだけとか、変更後の休暇日を指定せずにザックリと時季変更しているのではないでしょうか。もちろん、このような変更方法でもダメというわけではありませんが、満足できる手続きではないかもしれない。

休暇の時季変更は、労働基準法39条の4項但し書きにその内容が書かれています。ただ、「事業の正常な運営を妨げる場合においては」という変更の基準しか示されていないため、どのような場合に時季変更が可能で、どのような場合は時季変更はできないのかを判断するのが難しくなっている。

事業の正常な運営を妨げるかどうかを客観的に判断するのは思いのほか難しい。これぐらいの発注を予測できれば休暇の時季を変更するとか、どれくらいのお客さんが来店することが予想できれば休暇の時季を変更するというようにキッチリと決めている企業はおそらく無いのではと思います。そのように形式的に決めることができる事柄ではありませんからね。

となると、休暇の時季を変更するかどうかは主観に委ねられる。経営者や直属の上長が自らの判断で「事業の正常な運営を妨げる」と予測した場合は休暇の時季は変更されるのですね。

しかし、主観によって時季変更の有無を判断されると、休暇を取得する人は困ります。場合によっては、変更者の胸三寸で決めれるはず。それこそ、人の好き嫌いで決めることもあり得る。


そこで、時季変更権は無制約に行使される可能性が高いため、休暇の取得権と時季変更権をどのようにしてバランスさせるかが問題となります。









■時季変更を自主規制する。



休暇の取得はある程度事前に申請しなければいけない一方で、休暇の時季は休暇日の当日まで変更することが可能です。当日になって時季変更するのは例外かもしれないが、無理なことではない。つまり、変更はいつでも可能であるのに、取得は事前に申請しないといけないわけです。取得と変更の間のバランスが悪い状態ですよね。

もちろん、上記のようにアンバランスであっても法的には差し支えないのですが、法律では問題なくても現場では不都合なこともあります。

月毎に勤務シフトを決めている職場だと、あらかじめ休暇の取得届けが通ったにもかかわらず、勤務シフトが決定した時点で本人に伝えずに時季変更することすらあり得る。いつの間にか休暇日が別の日にすり変わっているのですね。

休暇の時季変更権は、法的に制約をキチンと受けていないため、濫用されやすいのです。「時季変更だ」と言えば、いつでも、どんなときでも変更できてしまう可能性がある。「事業の正常な運営を妨げる」という基準が十分に機能するとはあまり期待できないのではないでしょうか。


今後も、時季変更権を法律側でコントロールすることはなさそうですので、各組織ごとに自主規制が必要だと思います。労働基準法39条の4項但し書きがさらに細かい規定になるとは予想できませんので、労働協約、就業規則、雇用契約で時季変更の手順を決める必要がある。


決めるべきポイントは3つです。

1,変更期限。
休暇日当日の何日前まで時季変更可能なのか。当日の7日前までとか、3日前というように、時季変更の手続きに期限を設けるといいでしょう。


2,変更後の休暇日の指定。
変更するときは、「変更してください」と漠然と時季変更するのではなく、「10月4日から10月12日に変更してください」というように、変更後の休暇日を示すといい。漠然とした時季変更は、実質的には休暇申請の拒否に近いですからね。


3,変更は1回まで(これはすでに行政通達で知らされている)。
時季変更した休暇は、再度の時季変更ができません。10月4日から10月12日に変更して、さらに12日を14日に変更するのはダメです。


上記の3点を文書化して決めておけば、納得のいく時季変更手続きになるのではないでしょうか。

山口正博 社会保険労務士事務所
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