book516(約束した契約時間)







■契約時間と実際の勤務時間。



雇用契約の中で約束した労働時間は仕事ができるように会社は配慮しなければいけない。雇用契約は契約であり、この時間からこの時間まで勤務、この曜日とこの曜日は休日で、平日は出勤日というように契約ではキチンと決めていくはずです。


しかし、ときには契約した勤務時間を超えたり、契約時間に達する前に終業することもあるかと思います。仕事の繁閑によって勤務時間は変わるでしょうし、時期によって仕事の量が変わる職場もあるはず。また、何らかの理由で早退して契約時間に達する前に仕事を終えるときもある。


もし、何らかの外部的な都合で、約束した契約時間のすべてで勤務できなかったとしたら、時間単位で働く人は賃金なしになる一方で、月給制で働く人はとくに控除無く賃金が用意される、と思える場面があるのではないでしょうか。


例えば、ある会社で、年末の12月26日に、9:00から12:00まで勤務し、15:00から17:00までは年末の納会(業務として参加すると仮定。事業所以外の場所を会場として設定する)を実施するとする。また、この会社と社員間の契約では、労働時間は9:00-18:00に設定しているとする。この場合、12時から15時までの賃金はどうなるのかが問題です。






■月給制の人と時間単位の人。



もし、月給制で働いている人ならば、たとえ12時から15時までの空白時間があったとしても賃金には影響が無いのではないでしょうか。一方、パートタイマーや契約社員など時間単位で働いているとすると、12時から15時までの時間は無給になるかもしれない。

契約した時間の全てを勤務時間にできなかったとき、どうなるのかが問題の焦点です。


契約で約束した時間は勤務を保証しなければいけないものなのか。それとも、当事者の話し合いで、勤務時間を変更することも可能なのか。

もし、前者の判断を採用すると、12時から15時までは休業(労働基準法26条)として扱い
手当が必要と考える筋道になる。一方、後者の判断だと、使用者の責任ではなく当事者の合意なので、いわゆるノーワークノーペイと考えることになる。

雇用は契約によって成り立っており、契約は当事者の合意によってその内容を変更できる。ならば、契約で決めた勤務時間は会社と社員間で事後的に変更できると考えるのが妥当です。

ただ、契約した時間は変更できるとしても、月給制で働く人と時間給制で働く人で賃金の有無で差がある点をどうするかも考えどころ。月給の人には影響がなく、時間単位で働く人には影響があるとなると、やはり不都合かもしれない。


上記で示した事例は、12月26日に限ったものですから、あえて使用者の責任で休業していると判定して良いものかどうか悩むところです。常態的に契約時間を変更しているならば休業と判断する余地もあるかと思いますが、1年で1回だけイレギュラーなスケジュールになっているだけですので、許容範囲と考えられなくもないですよね。

もし12月26日以外に、8月12日などにもう一回だけ納会のようなイベントがあったと考えても年に2回ですから、やはり12時から15時までの時間を使用者の責任による休業とまで考えるのは微妙です。

また別の立場に立つと、12時の時点で勤務が一旦終了し、15時から再度勤務が始まると考えると、12時から15時までの時間は勤務時間ではないと判断できる。つまり、勤務が切断していると考えるわけです。1回目の勤務と2回目の勤務を分けて扱っているのですね。

または、12時から15時までの時間を休憩時間と考えるのもアリでしょうね。12時の段階で拘束は解除されているのですから、休憩時間と同等の時間であると考えるわけです。


とはいえ、上記のように構成しても、月給制の人と時間単位で働く人で差がある状態を解消できるものではない。

単純に考えると、上記の例で、月給だと影響を受けていないかのように思えるが、仕事の繁閑で給与が変動しないかわりに、低位安定の水準に賃金が設定されている可能性があります。つまり、忙しくてもそうでなくても、月給39万円というように固定しているので、12月26日に3時間の空白時間が発生したとしても賃金が変動しないのですね。

固定月給よりも時間単位で働くほうが時間単価は高くなる傾向があるのではないか、と私は感じています。例えば、派遣社員の方がプロパーのフルタイム社員よりも時間単価が高いのは不思議なことではありません。


よって、月給制と時間制の人との間で空白時間の評価に違いがあるとしても、必ずしも不当な差があるとまでは言えないのです。お盆や年末だけならばなおさらです。さらに、賃金の差といってもわずか3時間分ですし、この点からも不当な差とまで言いにくいです。

山口正博 社会保険労務士事務所
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