book513(有期雇用が正常。無期雇用は異常。)




■期間を定めない常識。



通常、契約を締結する際には契約期間を決めるはずです。表現の仕方は何通りかあると思いますが、契約書には何らかの表現で期間を決める文言が含まれている。

契約には期限があり、無期限で有効とされるものは本来はおかしいのですね。もちろん、契約の当事者が契約期限を無期限にすると合意すれば、その合意は有効なのですが、無期限といっても永久に続くわけではない。途中で契約を解除したいときはあるだろうし、契約内容を変更したいときもある。

雇用契約には、「期間を定めない雇用契約」というタイプのものがあり、このタイプの契約が雇用の場面では主流となっています。特にフルタイム社員を雇用するときには契約期間を定めないのが当然と考えられているフシもあり、入社時に契約しただけでその後は特に契約手続きがない人も多いかと思います。


では、なぜ雇用契約に期限を定めないのでしょう。期限を定めないと何らかの利点があるのか。雇用契約には期限を設定しなくてもいいのだから、単に期限を設けないだけなのか。期限を定めないようにして、契約の内容を長期間にわたって固めるのが目的なのか。雇い止めはしないというメッセージなのか。終身雇用であるとのメッセージなのか。

ちなみに、民法627条では期間の定めのない雇用の解約について規定されており、この条文から期間の定めのない雇用契約が実際に締結されうることを確認することができる。





■契約に期限がなく、寿命には限りがある。



人間はいつか死ぬ。ゲームや漫画では不老不死という概念がありますが、現実には人間が不老不死となることはなく、いつかは寿命に達する。ならば、雇用契約も無期限に有効となるのは無理です。

契約が無期限ならば、他の人に労働者の身分を譲渡する可能性もあるかもしれない。しかし、民法625条の2項を読むと、労働者の身分を第三者に譲渡するには、使用者の承諾が必要であり、手続きが面倒です。そもそも、使用者の承諾を得て第三者に労働させるような場面はめったに無いと思います。親族同士で経営している会社やお祭りの出店という環境ならば、第三者に変わってもらう可能性があるが、他人同士で仕事をしている環境では625条の2項のような場面はなさそうです。


人は永遠に働くことはできないのですから、雇用契約には期限を設けるのが正常なのです。フルタイムで働く場合でも、最大で3年なり5年の契約期限を設けて、期限が到来したら更新するべきかもしれない。

「契約に期限を設けると雇い止めが発生するのでは?」と思うかもしれないが、それが正常なのではないでしょうか。一度契約を締結したら変更できないという方がやはり異常だと思います。

期間の定めないという選択肢があるゆえに、「有期雇用契約が期間の定めのない契約に転換した」という主張も発生し得るわけです。根本から「期間の定めのない雇用契約」が無ければ、有期雇用契約はそのまま有期雇用契約のままで維持できるはず。

また、「雇い止め」という表現がよくない。どうしてもネガティブな感情を惹起する表現なので、「予定していた雇用契約期間の終了」と表現すると良いのではないか。とはいえ、雇い止めという表現を使ったほうが人の関心を引きやすいので、どうしても使われやすいのかもしれない。





山口正博 社会保険労務士事務所
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