book512(契約書を作らない契約)





■書面なしの雇用契約。



採用時には雇用契約を締結しますが、その締結方法は会社ごとに違いがあります。その違いは大きく3つに分けられる。

1,書面を用意して、その写しを渡す。

2,書面を用意して、その写しを渡さない。

3,書面を用意しない。


一番上が最もformalな選択で、一番下が最もinformalな選択です。

雇用契約を締結するならば、1番の選択をするのが当然だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、現実には必ずしも1番の通りには実行されていません。おそらく、最も多いのは3番の選択肢ではないでしょうか。

理由は様々でしょうが、他の契約と違い、なぜか雇用契約では書面が用意されにくい傾向があるように私は感じます。






■誰得の選択。



私は上記3つの選択肢について全て自ら経験しています。経験しているといっても社労士として関わったという意味ではなく、自ら雇用契約を締結する立場(労働者側)としての経験です。

学生時代にパートタイムで仕事をしていたときは、まず契約書は作られませんでした。記憶では契約書をキチンと作った会社は無かったはずです。履歴書を持って行って、面接を受ける。後日に採用の電話がかかってくる。その後は通常の業務に入る。このような流れでした。もちろん、時給や休みの日、出勤可能な日数や曜日などは話しましたが、その内容を書面に落としこむようなことはしませんでした。私の知るところでは、小規模な事業所ほど契約書を作らない傾向があって、採用時には履歴書と面接だけで用を済ませ、あとは雇用保険の被保険者証などを渡すだけというスタイルです。就業規則のコピーを渡すことも無いように思います。

他には、契約書らしきものを書いたものの、その書面と同じものを渡していない会社もありました。口頭だけで書面を作らない会社よりは良いですが、写しを交付しない点が困りどころです。管理はキッチリしているが、チョロチョロと不備があるような会社ですね。

あとは、契約書を作成し、その複写を交付する会社です。この段階になると形式面での不備らしきところはほとんどなく、あるとすれば契約書の内容や文言ぐらいでしょうか。



雇用契約書を作らないと困るのは、社員だけではありません。契約の条件がハッキリしていないと、どうも会社側と社員側がギスギスしているというか、心理的な壁があるような感じになるのです。契約書を作らないと、困ることはあっても利益になることはありません。


応募者が契約書の雛形を持って応募することも可能ではありますが何だかヘンです。企業側が書面を用意するのが普通ですから、応募者が書面を用意して書いてくださいというのはやはり違和感があります。また、応募者側から契約書を要求すると、嫌がられて採用されないのではと思わせてしまう可能性もありますね。


雇用契約は不要式行為であるため、契約書を作らずとも成立します。

「要式行為と不要式行為の違い(http://goo.gl/CQlnq)」


商取引では契約書をキチンと作成するのに、なぜか雇用契約になると作成しなかったりする。

商売と採用は違うと思われているのか、そこまでキッチリしなくてもいいだろうと思われているのか、契約書を作ると企業にとって不都合と思われているのか。それとも、キチンとした雇用契約書を作るノウハウがないだけなのか。

理由は特定しにくいですが、なぜか雇用契約では契約書を作られにくい傾向があるのですね。



山口正博 社会保険労務士事務所
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