book510(解雇手当を出すか予告除外を使うか)





■選択肢は3つ。



淡々と仕事をしている人は解雇の場面に遭遇することは少ないかもしれないが、解雇される人というのはゼロではないので、少しぐらいは解雇について考えてもいいかもしれない。

解雇するときは、労働基準法(以下、労基法)の20条に沿って、予告手当、予告期間、予告除外の3つの選択肢から手段を選ぶことになる。予告手当と予告期間は組み合わせて使うことができる点はよく知られているはず。

ただ、上記の3つの中で予告除外についてはあまり知られていないところだと思う。おそらく、解雇するときには手当を用意するか、来月いっぱいで終わりというように期間を設けるのが通例かもしれない。中には、手当も期間も設けずに「今週いっぱいで終わりってことで」と軽く解雇してしまう会社もあるのだけれども、これは例外としておく。


解雇するとき、何らかの理由で解雇予告を省いて解雇するとなると解雇予告を除外するための申請が必要になる(労基法20条3項)。この申請が通れば、予告なしの解雇が実施できるわけです。

ただ、申請となると、結果が出るまで少し時間が必要になるはず。予告手当や予告期間を利用すれば、企業側で解雇の時期をコントロールできるが、もし予告除外の申請をするとなると、結果が出るまで解雇の手続きを終わらせることができないわけです。







■タイムラグを受け入れるか否か。




解雇予告除外の申請は、認定されることもあれば、認定されないこともあるはずです。つまり、申請は必ず通るわけではないのですね。

また、手続きにはタイムラグもある。申請から認定まで、即日で結果が出ることはおそらくないでしょうし、2,3日で結果が出るとも考えにくい。

(http://shinsei.e-gov.go.jp/search/servlet/Procedure?CLASSNAME=GTAMSTDETAIL&id=4950000009637&fromGTAMSTLIST=true&SYORIMODE=)
上記の電子申請のウェブサイトでは、解雇予告除外手続きの標準処理期間は15日と書かれている。

受理手続きだけで15日なのか、受付から結果を出すまでが15日なのか、ハッキリとは分からないが、直ぐに結果がでるわけではないことは確からしい。


例えば、業務上横領で懲戒解雇される人がたまにいらっしゃいますが、この場合は除外認定は通るはずです。過去の行政通達では、盗取や横領、傷害など刑法に違反する程度のトラブルを起こすと、懲戒解雇になり、解雇予告も除外されることが多い。

ただし、懲戒解雇だから予告は除外というわけではない。懲戒解雇と予告除外は別々に取り扱うものであって、「懲戒解雇=解雇予告は不要」というわけではないので誤解なく。解雇予告除外を審査する基準と懲戒解雇に該当するかどうかという基準は別のものなので、両者は必ずしも連動するわけではないのです。懲戒解雇の基準は会社や組織で決めますが、予告除外に該当するかどうかは行政サイドで決めるものですからね。

会社の備品を持って帰ったとか、お店の商品在庫を持って帰ったとか、これらは業務上横領のよくあるパターンですね。金庫に入っているお金やレジに入っているお金を自分のポケットに入れたというのも業務上横領の事例でよくあります。

他には、賭博や経歴詐称、長期の無断欠勤などが予告除外の対象になりますが、事案の軽重によって対応も変わるはずです。賭博といっても、トランプゲームで昼食を賭けたとか、UNOでコーヒを奢ってもらう権利を賭けたとか、この類だともしかしたら解雇予告を除外するほどの賭博ではないので、除外認定がされないかもしれない。また、経歴詐称でも、医師免許を持っていないのに持っているという詐称だと解雇予告除外の対象になる可能性は高いかもしれないが、年齢を鯖読みしていたという程度だとおそらく予告除外の対象にならないのではないか。


もし、予告除外の申請をして認定されなかったとしたらどうするのでしょう。申請している間は雇用関係を継続させるとなると、解雇は決まっているのにまだ実行されない状態ですから、グズグズしていると解雇そのものが不当であると注文が付くかもしれない。

労働契約法16条では解雇権の濫用について規定されているが、濫用の基準は曖昧です。曖昧ゆえに解雇が妥当かどうかを判断しにくい。それゆえ、解雇するつもりなのに時間を伸ばしていると解雇そのものができなくなることもあるのではないでしょうか。


私は、なるべく解雇予告除外制度を利用せずに、解雇予告手当をキチンと用意して、手続きをサッと終わらせるのがいいと思う。解雇の手続きはなるべく早く終わらせるのがキモではないでしょうか。

時間を節約して、お金を使うか(除外制度を使わない)。それとも、お金を節約して、時間を使うか(除外制度を使う)。二者択一です。



山口正博 社会保険労務士事務所
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