book508(バットはバットであって、大根ではない。)




■更新すると勝手に契約内容が変わる。



契約は当事者が内容を確認して締結するものです。また、契約を更新するときも、内容を確認し、締結する。

ところが、中には更新していると内容が変わってしまう可能性のある契約がある。


雇用契約書には契約期間を記入する欄があるかと思いますが、この契約期間は必ずしも決める必要はなく、「定めない」という選択もアリなのですね。平成23年6月11日から平成24年6月10日までというように具体的に期間を決めてもいいし、期間を記入せず「定めない」という類の文言を記入するもしくは印刷された文字を丸で囲むのもいいわけです。

通常だと、契約には開始日と終了日があります。期間を定めない契約はおそらく珍しいのではないでしょうか。人間の寿命は有限ですし、企業の寿命も経営次第なので無限とまでは言えない。

ならば、期間を定めない契約は異常であって、期間を決めて締結する契約が正常なのですね。ところが、雇用契約では契約の期間を定めないことも可能になっていて、異常さを受け入れている、というよりも異常な状態が普通と感じてしまうぐらいです。







■振っていたら大根になった。



期間を定めて雇用契約を締結していても、反復継続して契約を更新することが前提となっていて、実際に反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされることがある。

期間を決めた雇用契約を反復継続して更新していると、期間を定めない雇用契約とみなされる。つまり、「実質的に期間の定めのない雇用とみなされる」という不思議な理屈が通るのですね。

しかし、なぜ何度も更新すると有期契約が無期契約になるのか。契約が転換するときの論理が不明です。「何度も有期雇用契約を更新する≒(もしくは"="と書くべきか)期間を定めない雇用契約」という処理がどうも論理的ではないのです。

更新するだけでなぜ契約の内容が変わるのか。この点についての説明が無いのですね。「実質的に」という言葉で強引に主張を通してしまっていると私には思えます。

確かに、「何度も同じような有期雇用契約を締結しているのだから、もはや雇用期間を決めずに契約を締結している場合と同じじゃないか」という気持ちは分かる。けれども、気持ちでは分かっても、更新すると契約の内容が変わるという点は理解出来ない。


この点については、裁判所はネガティブな判断をしている。何度も更新しているからといって、期間の定めのない雇用契約に転換したという流れは裁判では否定されやすい。私はこの立場を支持します。やはり、「更新すると契約の内容が変わる」という主張には無理がある。裁判官も論理的な強引さに気づいていて、簡単に契約の転換を認めないのでしょうね。


もし肯定する立場に立つと、更新し続けると契約内容が変わるということ。これはオカシイだろう。内容を変更する意思がないのに、更新するだけで内容がどこかの時点で変わるのですからね。


「実質的に期間の定めのない雇用契約になっている」という主張は真っ当だと思う。しかし、契約内容が変質することまで認めていいのかは別の話。


「反復継続して契約を更新 = 期間の定めのない雇用契約」これは論理的に強引です。これは、「ずっとバットを振っていたら、バットが大根になった」というぐらいおかしなこと。何度振ってもバットはバット。大根は大根です。

山口正博 社会保険労務士事務所
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