book506(有期雇用には定年がない)




■期限なしの雇用だから定年が必要。



組織で仕事をしていれば、定年制度について少しは知っているかと思います。一定の年齢に達すれば退職金を受け取って仕事を辞める。それが定年です。

ところで、雇用契約の期間を定めずに仕事をしている場合と期間を定めて仕事をしている場合では、定年の扱いに違いがある。

一定の年齢に達すれば効果を発揮するのが定年ですが、その年令に達するまでに雇用契約が終わってしまう人には定年の対象にならないのですね。

例えば、1年ごとに契約を更新している人だと、60歳なり65歳まで雇用が継続する前提で契約が締結するわけではなく、1年で期間を区切って契約を締結するので、定年を設けても使いようがないわけです。それゆえ、定年制度は期間を定めずに雇用契約を締結している人を対象にしているのですね。

しかし、有期雇用であっても、何度も契約を更新していると期間を定めない雇用契約になって、定年制度の対象になる可能性があるという理屈もあるらしいです。


「何度も更新すれば、有期雇用は期間を定めない雇用契約に変わる」

期間を定めた雇用契約を取り扱うときには必ずと言ってもいいぐらい論点になるところですね。









■有期雇用が期限なしの雇用に変わると、定年の対象になる?



有期雇用契約を何度となく更新していると、「何度も更新しているんだから、実質的には期間を定めない雇用契約と同じでしょ」と感じるときがあると思う。

確かに、更新といっても、毎回同じような契約書に、同じような内容が記載され、同じように署名と押印し、会社と社員で同じものを保存する。この繰り返し。ならば、期間を定めず雇用契約を締結している場合と同じだろうと思えるのですね。

しかし、「実質的に」という類の言葉には気を付けたほうがいいかもしれない。実質的にという言葉に限らず、「総合的に」とか、「実体的に」とか、「一般的に」とか、「現実的に」という言葉は論理の流れを組み立てられない時にゴマカシで主張を通す時に使える表現です。

「総合的に判断して田村さんが正しい」と言ったとき、総合的とは何なのか。総合的と言えるほど丹念に判断の基盤を構築したのか。それとも、メンドクサイので総合的という言葉を使ったのか。聞いている人は何となく納得してしまうが、発言者がどれほど総合的に判断したかは分からない。

法律でも、実質的や総合的という言葉は使われる場面があるけれども、キチンと論理なり理由を組み立てて判断をしているならばいいものの、論理や理由を示せないのでゴマカシの手段として実質的や総合的という言葉を使うこともあります。

今回の場合でも、「何度も更新しているんだから、実質的には期間を定めない雇用契約と同じでしょ」という部分で実質的という言葉が使われていますが、これはクセモノです。

実質的と言われれば妙に納得してしまうのですが、あくまで有期雇用は有期雇用であって、期間の定めのない雇用ではありません。何度も更新していると、ある時、突如として有期雇用が無期限の雇用契約に変わるというのはヘンです。

何度も靴を履いていたら、いつの間にか靴が草履に変わっていたというぐらい変な話なのですね。靴は靴であって草履ではない。草履も草履であって靴ではない。

もし、「~的」という言葉を聞いたり見たりしたら、強引に主張を通そうとしているのではないかと考えてみるといいかもしれない。

山口正博 社会保険労務士事務所
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