book505(継続雇用の義務は無いのに義務があるように感じる)




■努力が義務に転換すると思わせる。



「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(以下、高年齢者雇用安定法)では、60歳で定年を設定する場合、1:定年を引き上げるか、2:継続雇用制度を採用するか、3:定年を廃止するか、左記3つのうちどれかを選択する必要がある。

定年を65歳に引き上げずに60歳に設定している企業も少なくないが、この場合は2番の継続雇用制度を選択するはず。定年を引き上げることはなく、廃止することもないのだから、自ずと2番を選ぶことになる。

ただ、高年齢者雇用安定法では、継続雇用の制度を導入することは求めているが、継続雇用を必ず実行することまでは求めていないのがモヤっとしたところです。

制度は導入するべきだが、必ずしも全ての高年齢者を継続雇用の対象にする必要はないのであって、この点がグレーな雰囲気を醸し出す。

一度雇用したら滅多なことでは解雇できないと考えるのが一般的な感覚だと思うので、継続雇用制度を導入するとなると、「継続して雇用しなければいけないんだなぁ、、」と考えてしまう人も多いのではないだろうか。


制度設計者側は、「制度を導入するのが義務なのであって、雇用を継続することは義務ではない」と伝えているものの、「65歳まで必ず継続的に雇用しなければいけない」と人が思ってしまうように仕向けているような気がする。








■採用の自由と継続雇用の要請のバランス。


私が思うに、高年齢者の継続雇用は通常の契約更新とほぼ同じではないだろうか。60歳に達した時点で、今後の契約をどうするかを話しあう。そういう契約更新の手続きと考えれば分かりやすいのではないか。

希望者全員を対象にするものの、全員が更新の対象になるわけではない。これだと、6ヶ月や1年ごとに契約を更新する場合と定年時に雇用を継続する場合では大きな違いはなさそうだ。


たとえ継続雇用制度を導入していても、もし条件が合わなければ、継続的に雇用されないこともある。

企業側には採用や契約の自由があり、継続的な雇用を義務とするところまでは法律で決めることはできないだろう。とはいえ、制度設計者は雇用が継続されるようにプレッシャーをかけるだろうし、一方、企業側は採用と契約の裁量でそのプレッシャーをはねのける。


また、継続的に雇用するとしても、制度を実施するための基準作りが物議を醸す。どのような条件で継続雇用するのかという基準を作るのは厄介な作業になるはず。何であれ、OKな部分とNGな部分を分けるとなると、両者を分ける基準が必要になる。継続雇用制度でも、「会社が必要と認めた者」とか、「上司の推薦がある者」では基準にならないとされているので、もし独自に基準を設定したとしても、その基準が抽象的であったり曖昧であったりすれば、あてはめに苦労するだろう。

恣意的に継続雇用を排除する基準がダメなようだが、それだと採用や契約の自由も制約されるのではないか。どんなに作り込んだ基準であっても、事業主が恣意的に継続雇用を排除することは可能だと思う。ゆえに、どこかで見切りを付けなければいけないだろう。


山口正博 社会保険労務士事務所
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