book503(全部食べずに残してもいい)




■全て食べ切る必要はない。



「食べる」という表現を使うと、食べ物の話かと思うかもしれないが、そのような内容について書くわけではありません。

ご存知のように、有給休暇は、一定の期間にわたって勤務すると、一定の日数が付与されます。6ヶ月で10日、1年6ヶ月で11日というように、休暇の枠が用意される。この枠内で休暇を取得するのが有給休暇制度なのですね。


有給休暇の制度を法的にキチンと運用する段階では違いがあまり無いのですが、休暇の利用に対する考え方は人によってちょっと違うようです。

人によっては、「休暇は全て消化するべきであって。使いきるのが当然です」と言う人もいれば、「確かに、休暇は利用するが、持っている休暇を全て消化する必要はなく、必要な範囲で利用すれば足りる」と言う人もいる。


では、「必ずしも全ての休暇を消化する必要はない」という立場に立った場合、休暇を何日まで利用して、何日は残すのか、この点が疑問になります。

「全ての休暇を使いきる必要はないよ」と考えてしまうと、「じゃあ、使わずに失効する休暇はどうするの?」と疑問を抱くはず。






■どこまで食べて、どこから残すのか。



「有給休暇を使いきる必要はない」という考えの裏には、「ある程度は休暇を失効させていい」という考えがあるのではないか。

ではどれぐらい消化して、どれぐらいは消化する必要はない(「未消化を想定している」、「失効を想定している」と表現を変えてもよい)のか。

「使い切る必要はない」と考えてしまうと、使う部分と使わない部分を想定しなければいけない。もちろん、「使い切る必要はない」という表現には100%消化も含まれているのだから、必ずしも使わない部分が発生するわけではない。しかし、未消化や失効を、ある程度想定している表現だと考えるのが妥当だと思う。


もし、すべて消化する必要はないという価値判断を受け入れると、おそらく休暇を利用させない動機が高まる。全て消化する必要がないならば、半分は消化しなくてもいいと思える。また、半分以上は消化しなくてもいいとも思える。さらには、「全く消化しなくてもいいんじゃないか?」とも思えてしまう。

「休暇を消化しなくてもいい」と考え始めると、利用できる休暇が減っていくように思う。ジリジリと陣地を広げるように利用できる休暇日数が減っていく。法的には10日の休暇があったとしても、実際に利用できるのは4日だけとか。こんな雰囲気ができてしまう気がする。



休暇は全部消化する方が企業にも社員にも負担が少ないと思う。

休暇を全く使えないとなると、法律違反であるし、社員の不満も相応のものになるでしょう。また、一部しか休暇を使えないのも、「なんで全部使えないのか」という不満を招く。さらに、休暇の未消化を予定したような運用をしていると、「休暇をなるべく使わせないいやらしい会社」と思われるかもしれない。

上記のような「モヤッとした感情」を発生させないのが労務管理のコツの1つです。


法的には一定の条件を満たせば、一定の日数の休暇を利用できるところまで決めていますが、休暇を全て消化するかどうかは現場に任せられています。

労務管理に関する法律は、あえてガチガチに決めずに、あえて「緩み」を残し、現場で裁量的に判断できる余地を残しているのがイイところでもあります。ただ、判断する余地があるからといって、キチンと判断できるかどうかは実務の現場次第です。


山口正博 社会保険労務士事務所
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