2011/7/4【災害は使用者の責任なのかどうか。】



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「なんとなく」という感覚は人の価値観の柱だと思う。

何となく好きと思えば、それを選ぶし、それを買うだろうし、それを支持したりする。一方で、何となく好きではないと思えば、選ばない、買わない、支持しないようになる。

厳格に好き嫌いを分けることは少なく、ほとんどの場合はなんとなくという感覚で人は好き嫌いを判断しているはず。

なぜその人のことが好きなのかと言われて、明確に答えられる人はあまりいない。「何となく惹かれた」とか、「何となく居心地がいい」などと答えるのだ。食べ物でも、ここがイイとハッキリと認識してその食べ物を選んでいるのではなく、何となく美味しそうという判断で選んでいることが多い。他にも、何となく良さそう、何となくカッコ良さそう、何となくオシャレっぽいなどがある。

「何となく好き=好き」、「何となく好きではない=嫌い」と定義するといいかもしれない。

ぼんやりした表現だが、人の感覚は「なんとなく」で支配されていると思う。






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災害は使用者の責任なのかどうか。
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■「災害は使用者の責任ではない」と判断するのが普通。



東日本での震災により、操業することが困難になっている会社があるかと思います。自社が被災することがあれば、取引先が被災することもあるはず。

もし操業を停止するとなると、社員を休業させるかどうかを検討するところですが、その際に、労働基準法26条(以下、26条)の休業手続きが必要かどうかが問題になります。もし、26条の手続きでもって休業を実施すると、休業手当が必要になります。しかし、休業する原因が使用者に無い場合は、26条の手続きを経ずに、手当無しで休業することになります。

そこで焦点になるが、使用者の責任を判定する基準です。26条の手続きで休業するには、使用者の責任が必要ですが、その責任があるかどうかを判定するところで物議を醸します。以前のメルマガでも、26条の休業については何度か書いていますが、その時は2009年の初め頃だったと思います。2008年秋にリーマン・ブラザーズが倒産したために、広範にわたって企業で売上が減少し、休業を実施する際の助成金が創設された頃です。今回は、経済災害とは違い、自然災害で休業する場面です。そのため、使用者が責任を負わないケースが多い。

外部に原因があり、使用者側の取り組みで休業を避けることができないために、使用者の責任にならないわけです。

ただ、26条に書かれている使用者の責任をキチンと判定する基準はありませんので、実態を判断し、解釈する人によって結論が変わる可能性がある。ある人が判断すれば使用者の責任だと結論できても、他の人が判断すると使用者の責任ではないという結論に至るかもしれない。

たとえ自然災害で休業することになっても、必ずしも使用者の責任ではないとは言い切れない場面にも遭遇します。



なお、今回のメルマガの参考文献として、以下のPDFファイルを提示しておきます。

ファイルの内容を読んでいると、「災害だから使用者の責任ではない」と思えても、実際は違うこともあるのだと気付くかと思います。

平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第1版)
(https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnxteWRhdGFib3gxMDAxfGd4OjFkY2JjZjUyY2Q2ODllOGQ)

平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第2版)
(https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnxteWRhdGFib3gxMDAxfGd4OjcwNDllOWUwZGE2OWQxOGE)







■災害でも使用者の責任になりうる。



地震や津波で休業すると言っても、状況は様々です。例えば、地震の揺れによって、事業所の全てが壊れた場合と、一部が壊れた場合では休業の判断は変わります。また、一部が壊れたとしても、操業のために重要な設備や建家が壊れた場合と、操業に支障がない部分が壊れただけという場合では休業判断が変わるでしょう。

また、自社が直接に被災した場合と取引先が被災した場合でも休業の取り扱いが変わる(Q1-5を参照)。自社が被災して操業できない場合は休業になりやすいでしょうが、取引先が被災して自社が影響を受けていない場合は休業になりにくいわけです。おそらく、取引先は分散されていると一般に認知されており、取引先の1つがトラブルに遭遇しても大丈夫だろうと思われているからかもしれない。

確かに、取引先が被災しても、操業を続けられる会社はあると思います。しかし、取引先の数はなるべく少なくするのが普通ではないでしょうか。取引先の分散は商売のイロハではありますが、分散には利点と欠点があります。取引先を分散すれば、今回のように自然災害で取引先の1つが操業停止になったとしても、他の取引先がフォローすることができるので、自社が影響を受けにくいという利点があります。しかし、取引先を分散するとなると、1つの取引先あたりの取引量が少ロットになってしまい、有利な取引条件を設定しにくいというデメリットがあります。

より高ロットで取引してくれるならば条件を有利にするというのは、ごく自然な商習慣です。少ロットでしか取引できないと、取引そのものを断られる可能性もあるはず。例えば、ソース(焼きそば用やお好み焼き用、トンカツ用のソースのこと)の製造工場に行って、ソースを1本だけ買いに行くと断られるのと同じです。ソースメーカーは100本や1,000本の単位で販売しているのですから、「1本だけ売ってちょうだい」と言われても困るわけです。1本単位でソースが欲しければ、消費者は、ソースメーカーではなくスーパーやショッピングセンターに行って購入するのですね。

そのため、会社間で取引するときは、取引相手をなるべく少数に限定し、なるべく有利な条件で取引できるように手続きを進めるわけです。となると、取引先のうち1社が災害で創業できないようになるだけで、自社への影響も大きくなってしまうのですね。「リスクとリターンは、比例的に増加し、比例的に減少する」という一般社会の原則通りですね。


他には、自社が無事でも、取引先から梱包材を調達できないとか、包装紙や自社専用のダンボールを調達できないために、製品を作れないこともあり得る。

ネジを調達できないので時計を作れないとか、特殊な食品添加物を調達できないので加工食品を製造できないという場面も想像できる。洗濯機や電子レンジのコントロールパネル用のマークシール(電源とか脱水、解凍などのボタンを表示しているマーク部分の部品)を調達できないので製品を作れないこともあり得る。

ミネラルウォーターでも、水そのものはキチンと供給できるとしても、水を入れるペットボトルを調達できなかったり、ボトルのラベルを調達できなかったり、また、水を入れたペットボトルを梱包するダンボールを調達できないという理由で、ミネラルウォーターを生産できない可能性があります。

市場に供給される商品は、単一の要素だけで成り立っているとは限らず、材料や部品、梱包材が組み合わさって出来ているので、どれかが欠けると作れなくなるのですね。


ちなみに、2008年の秋に起こったリーマン・ショック(ところで、いつの時点でこの名称が定着したのでしょうか? ちょっとした不思議です)は、使用者の責任になっています。自然災害による休業だと使用者の責任にはなりにくいが、経済的な災害だと使用者の責任になりやすいと考えるのは妥当な相場観ではないかと思います。自然災害は使用者の判断で避けにくいが、経済災害ならば事前に対策を立てられるだろうという価値判断なのかもしれない。ただ、2008年の秋以降の経済災害を事前に予測して、対策を立てるのは簡単であったとは言いにくい。








■労働基準法26条の使いにくさと便利さ。



私が考えるに、26条で「使用者の責に帰すべき事由による」と書き、あえて厳密な条件を決めていないのは、当事者である企業や社員が判断したり、話しあったりする余地を残すためではないか。後で物議を醸すことを分かったうえで、あえて今の26条の文言にしたのかもしれない。

26条に限らず、労務管理のルールは、あえてガチガチに固めずに、ある程度ファジーな部分を残して当事者である企業と社員が交渉できるようにしている点が特徴的です。パートタイムの社会保険でも「おおむね3/4以上」という基準が使われていますよね。あえて「3/4以上」とハッキリ示さずに、意図的に「おおむね」という言葉を付けてルーズに基準を設定している。法定休日も週1日という基準だけで曜日の指定はないし、有給休暇の使い方や時季変更権の使い方もあえて具体的に決めていないですよね。

使用者の責任であると断言できる場合や使用者の責任ではないと断言できる場合は必ずしも多くない。もし、使用者の責任が100%であったり、0%であるならば、おそらく議論は起こらない。しかし、必ずしも100%とは言い切れないことがあるし、必ずしも0%とは言い切れないこともある。

2008年のリーマン・ショックは使用者の責任かと言われれば、そうだと言えるし、そうではないとも言える。地震や津波で取引先から材料や部品を購入できないので、製品を製造できずに休業になったら使用者の責任かと言われれば、そうだと言えるし、そうではないとも言える。他にも、店舗改装で3週間お店を休みにしたら使用者の責任による休業になるのかどうか。これも、使用者の責任と言えるし、そうではないとも言える。

休業を実施するときは、使用者の責任となるかどうかが微妙な場面の方が多いのですね。


26条の趣旨は、労働者の行動をロックする代償として、「たとえ仕事がなくても、雇用契約が存続している限り、一定程度の賃金を保証する」という雇用契約を維持するための最低費用を企業に負担させる点にある。人によっては、「有給休暇はさておき、なぜ仕事をしていないのに賃金を支払うのか」という点を納得できないようです。

26条は、「ノーワーク、ノーペイ」の例外なのですね。








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