book499(変形労働時間制度の予実管理。)




■予定通りにすべきか、総枠内であればいいか。



ご存知のように、1日8時間、1週40時間の枠内で仕事をするのが原則ですが、変形労働時間制度を利用するとこの枠を変形することができます。

「21日は9時間だから、23日は7時間にする」とか、「第3週は34時間だから、第4週は44時間にする」というように法定労働時間の枠を異なる時点で融通し合うことで変形労働時間制度は運用されます。つまり、多いところと少ないところを通算して枠内に収めるわけです。

単日や単週で時間外労働を扱うのではなく、指定期間内で時間外労働を扱うのが変形労働時間制度です。

では、例えば1ヶ月という期間を設定して変形労働時間制度を運用するとき、予定している勤務時間と実際の勤務時間にズレがあったときにどうなるか。つまり、予定では7時間勤務のところを9時間勤務にしたり、予定では週38時間のところを週43時間にしたらどうなるのか。なお、総勤務時間は1ヶ月分の総労働時間の枠内(1ヶ月なので、172時間とか177時間でしょうか)に収まっていると仮定します。


変形労働時間制度は、事前に予定した時間通りに勤務することを要求するのか。それとも、時間の総枠に収まっていればそれで変形労働時間制度として成立するのか。

どちらでしょうか。





■「特定された週」と「特定された日」の解釈。


1ヶ月の期間で変形労働時間制度を利用するときに該当する条文は、労働基準法32条の2です。そこでは、「特定された週において同項の労働時間(1週40時間のこと)又は特定された日において同条第2項の労働時間(1日8時間のこと)を超えて、労働させることができる」と書かれている(条文内のカッコ書きは筆者により記入)。

事前に予定した時間通りに勤務することを要求するのか、時間の総枠に収まっていればそれで変形労働時間制度として成立するのかを判断するには、「特定された」という言葉の意味がポイントになります。

第1週は36時間、第2週は39時間、第3週は44時間というように事前に特定して、その通りに36時間、39時間、44時間で勤務すれば、32条の2の要件を満たします。また、4日は5時間、5日は6時間、6日は10時間、7日は8時間というように事前に特定して、その通りに5時間、6時間、10時間、8時間というように勤務すれば、32条の2の要件を満たします。


ならば、正しいのは前者である「事前に予定した時間通りに勤務することを要求する」という判断のはずです。

だが、実際には後者の方法で変形労働時間制度は運用されているのではないでしょうか。「時間の総枠内であればいいんだ」と思って勤務スケジュールを立てて、週毎、日毎の勤務時間を特定せずに、その都度流動的に勤務時間を決めて、時間の総枠内に収まっているからOKと判断する。

しかし、この運用方法では32条の2には合致しないでしょう。変形労働時間制度は、変形時間の予定を立てて、その予定通りに勤務するならば、法定労働時間の枠を変動させても構わないという仕組みです。つまり、予定と実際をキチンと合わせるという条件で法定労働時間の枠を変形させることを許しているわけです。ならば、予定を立てずに変形労働時間制度を運用しているとなると、それは正式な変形労働時間制度ではないと言うべきです。

おそらく、変形労働時間制度を採用している少なくない企業では、「時間の総枠に収まっていればいいのだろう」と考えて運用していると思います。


変形労働時間制度は予実をピッタリと合わせることで利用が許される仕組みであることは知っておきたい点です。





山口正博 社会保険労務士事務所
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