book481(残業許可制で残業は減らない)




■許可する仕組みは崩れる。



許可しない残業は時間外勤務として扱わないようにするために、時間外勤務を許可制にする会社があるかと思います。

通常、時間外勤務は、上長の命令なり指示によって実施される。そのため、命令や指示がない状態で、法定時間外に仕事をしても、それは時間外の勤務にはならないのですね。

しかし、時間外の勤務が必要かどうかは、上長ではなく仕事をしている本人が判断する場面が多く、実際には上長の命令や指示ではなく、本人の判断で時間外勤務が実施されるでしょう。就業規則には、契約時間や法定時間の枠を超えて仕事をする場合は、何らかの手続(上長の指示や残業申請書の提出など)が必要であると書かれていることが多い。しかし、現場では、就業規則通りの手続きを踏まずに、本人の判断で契約時間や法定時間の枠を超えて仕事をしているときもあるかもしれない。

そこで、契約時間や法定時間の枠を超えて勤務するときは、許可が必要だという仕組みを作ろうと試みるわけです。許可があれば時間外勤務に、許可がなければ時間外勤務ではないものとして扱う。

残業を削減する方策として残業の許可制度を主張する人もいるが、残業を削減する手段としてはあまり上手な方法とは思わない。

どんな仕組みでも同じように言えることだが、「仕組みを導入するのはさほど難しくなくても、仕組みを維持するのは思いのほか難しい」という点をあらかじめ知っておく必要がある。つまり、仕組みや制度は尻切れ蜻蛉になりやすい。

残業の許可制度も、最初の数カ月はキチンと機能するが、さらに時間が経過すると、許可の仕組みが形式化していく。上長の許可を取る必要があるというルールがあっても、頻繁に残業が発生すると、残業が必要かどうかを審査するのが面倒になり、ついには審査なしで残業申請書にハンコを押すことになる。

形式的には「許可制度」だが、実質的には「申請制度」に変わるのですね。







■認定するかどうかではなく、原因は何なのか。



残業が発生するのは、仕事の"やり方"に問題があるからであって、残業が必要かどうかという"認定"に問題があるわけではない。

許可制は、"発生した残業を認めるかどうか"が焦点であって、残業そのものを減らす効果はあまり期待できないだろう。つまり、原因を断つのではなく、"結果を絞る"のが許可制の仕組みなのですね。そのため、本来は時間外勤務なのに時間外勤務として処理せず、サービス残業になるという場面もあるだろう。許可制は、残業を隠蔽する手段として使われやすいという不都合な点がある。

残業を減らしたいならば、"結果を絞る"のではなく、"原因を減らす"方に知恵を使うほうが建設的だ。


仕事が多すぎるから残業が発生するのか。

仕事が多すぎるとしても、必要のない仕事が多いから残業が発生するのか。それとも、必要な仕事が多いから残業が発生するのか。

もしくは、仕事の量が問題なのではなく、仕事の速度が遅いから残業が発生するのか。

組立部品が入荷する時間が遅いから残業になるのか。

梱包材料が入荷する時間が遅いから残業になるのか。

仕込み時間が遅いから残業になるのか。

トラックへ積み込む時間が遅いから残業になるのか。

商品が入荷する時間が遅いから残業になるのか。


残業の原因にはいろいろあって、特定するには骨が折れるかもしれない。しかし、残業を減らすならば、許可制で残業を揉み消すのではなく、残業の原因を消していくようにするのが正攻法です。

山口正博 社会保険労務士事務所
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