あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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労働組合を使うか、法律を使うか

対抗手段




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労働組合を使うか、法律を使うか
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労働組合は必要か否か

ご存知のように、労働組合の役割は、労働者の労働条件の維持や改善、社会的地位の向上を目指す点にあります。労働者のサポーターというか、保護者というか、バックボーンというか、言い方は様々ですが、「労働者の味方」という立場を標榜するのが労働組合なのですね。

しかし、今では、組合は不要とまでは言わないけれども、その役割が低下している。

では、なぜ役割が低下しているかというと、代替的なインフラが充実してきたという理由がある。代替的なインフラとは、まずは労働関連の法律。さらには、個人で利用出来るユニオン。また、労働者自身の知識の充実。この3点が主な理由だと思う。

以前は、法整備が十分ではなかったため、労働者同士で集まり、組合を形成し、経営者と対等な関係を構築する動機があった。労働者は個々人でバラバラで、発言力も弱く、労働条件の設定でも不利だった。労働法も充実しておらず、個人で利用出来るユニオンも無かった。さらに、個人的に労務管理のルールを理解している人も少なかったはず。

そのため、労働者が固まって影響力を高め、資本家たる経営者と対等に交渉できる立場を確保する必要があったわけです。

ところが、労働法が充実してきて、個人の知識も増え、さらには個人利用可能な労働組合まであるために、従来の企業内労働組合の役割は以前ほどは高くなくなった。また、経営者側にも、労務管理のルールを守っていこうという意識を高めて、労働者側とトラブルにならないように仕事を進めようという姿勢もあります。変な労務管理を実施すれば人が出て行くし、仕事以外に時間を使わないといけないのですから、これらの事態を回避しようとするわけです。




会社の外にある対抗手段

そのため、あえて労働組合がなくとも、労働者は会社側と対等に近い関係を構築できるようにはなってきていると思います。法律、個人利用可能なユニオン、さらにはマスメディアや政府(民主党が政権与党)、裁判所も労働者の味方になりやすい地合いが今ではできているので、企業別の労働組合に加入しなくても交渉力を高めることが可能なのですね。ただ、若干、労働者保護に偏っているような気もします。

労働組合の組織率が低下しているという話題はもう何年も前から起こっています。新聞や雑誌で記事を読んだ経験がある方もいらっしゃるはず。終戦直後は50%を超える組織率であったものの、80年代から組織率の低下が始まっており、2007年には18.1%の水準まで低下する。おそらく、2011年現在だと、15%程度ではないかと想像できます。ただし、労働組合は一括かつ半ば強制的に加入させる傾向がありますので、組合活動に賛同して参加している人はずっと少ないのではないでしょうか。

私は組織率が下がるのは当然だと考えています。なぜならば、以前は労働者が経営サイドと交渉する手段が乏しかったので、組合を形成して交渉力を高める必要があったものの、今では労働基準法がありますし、労働契約法まである。さらには、個人用のユニオンがあり、裁判所や政府まで労働者の味方になっているのではないかと思えるほど労働者には追い風の環境です。となると、「組合に参加しなくても困らないだろう」と考える人が出てくるのも当然のことなのかもしれない。労働組合が多いのは、法的なインフラが未熟である証拠でもあるのではと考えることもできる。つまり、インフラが充実してくれば労働組合の役割が低下し、逆に、インフラが未熟だと労働組合の役割が上昇しやすいという考えです。

個人で利用出来るユニオンがあると知れば、必ずしも常態的に労働組合に加入する必要が薄れてきます。毎月、給与から労働組合費を控除されることを好ましく思っていない人もいるのではないでしょうか。「労務的な問題は起こらないのに何で組合に加入しないといけないの?」とか、「加入したい人だけで組合を組織すればいいんじゃないの?」と思うのは無理からぬこと。弁護士を使って未払い残業代を払うまで交渉する人もいるのですから、個人は弱くないのですね。労働組合を支持する人は、「個人は弱い」という一種の思い込みを持っている可能性もあります。


特に、フルタイム社員だけでなくパートタイム社員まで組合員化させている会社だと、パートタイム社員は「資金集めのためにパートタイム社員まで組合員の対象にしたんじゃないのか?」と思ったり、「フルタイム社員だけで組合を構成していると、構成員の数が少ないので、組織としての力が弱くなる。そのため、数の力を増すために、パートタイム社員を加入させたんじゃないか?」と思うこともあるかもしれない。

確かに、労働組合は特定の政治家を支持することもあって、数が多いほどその政治家を選挙で当選させやすいので、なるべく加入員の裾野を広げるインセンティブを持ちやすいかもしれませんね。一時期ニュースに登場した日教組も参議院候補者を擁立して政治活動を行っています。電力総連や電機連合、UIゼンセン同盟も同様です。

本来、労働組合は労働者が経営者と対等に交渉できる窓口になるのがその役割だった。しかし、組織として力を高めていくと、以前の役割を超えた活動をし始めるわけです。これはどんな組織でも起こりうることで、必要限度の力しかないときは必要限度のことしかしないが、必要な程度を超えて力を得ると、その力を自らの組織に有利になるように利用し始めるのです。なぜ労働組合が政治活動までするようになったのか。なぜ労働組合の専従者がいて、その人達は商売活動をしないのに組合から給与や退職金を得るのか。

組織は一定以上の規模になると、必要な程度以上の権利主張をする組織に変わるのですね。


今は、もはや資本家vs労働者という対立などなく、サラリーマン経営者は労働者であって資本家ではありません。株式や信託証券を持っている労働者は資本家という立場も有しているわけです。ほとんどの方が加入している年金もある種のファンドであって、そのファンドの出資者は労働者ですよね。となると、「労働者は資本家でもある」というのが現実なのです。



組合員を強制加入させないと維持できない労働組合


一般に、大きな企業ほど無茶なことはできません。特に、規模が大きく上場もしている企業となると、さらに活動は抑制的になります。労働基準監督署や労働局が企業を指導するときは、なるべく大きな企業を対象にしたほうが効率が良く、小規模な会社をコツコツと指導するよりも都合が良いのですね。知名度が高い企業を対象に残業代未払い問題や管理職の取り扱い問題について採りあげた方がメディアが反応し、他の企業にも波及するので、言わば1の指導で100の効果を得ることも可能なのですね。

新卒の選考時期を後ろにズラすべきという政府方針(?)なのか社会的流れなのか分かりませんが、これも大手の企業が先行して行っていますよね。これは知名度が高い企業ほど政府が決めた方針に従うべきという社会的な圧力がかかっているためなのではないかと思います。従わなければ非難されやすい立場ですからね。

一方で、小規模な企業ほど無茶をする傾向があって(全ての小規模な企業ではないので悪しからず)、公的保険に未加入、残業代の未払いなどは規模の小さい企業ほど起こりやすい。株式会社なのに社会保険は国民健康保険と国民年金という会社もありました。


労働組合の特徴として、ユニオンショップとチェックオフという制度があります。ユニオンショップとは、組合員の身分と社員の身分がリンクする制度であって、組合員でなくなると社員でもなくなるので退職しないといけないという仕組みです。チェックオフとは、組合費を給与から控除して、その控除した費用を会社が組合に渡す仕組みです。この2つの制度でもって組織を維持している組合も多いかと思います。構成員の確保と資金の確保が実現できる仕組みですから組合にとっては好都合な仕組みなのです。

ただ、上記の2つの制度は組合が嫌われる要素になっているのではないでしょうか。企業内の組合だと、毎月労働組合費を徴収されるので、あまり積極的に加入したくないと考える人がいるし、「なぜ組合員の身分と社員の身分をリンクさせるのか。雇用契約は企業と社員の間で締結されているのだから、労働組合は介入できないはずだろう」と思う人もいるはず。これは的を射た感覚です。チェックオフも、給与から天引きするのではなく、自主的に拠出してもらうようにすればいいはずです。おそらく、強制的に徴収しないと集金できないので、企業と組合が協力して天引きしているのでしょうね。

ユニオンショップやチェックオフの仕組みを使わないと人や資金が集まらないならば、もはやその組合は役割は終えているのではないでしょうか。自主的に参加したくない人を集めても求心力は高まらないでしょうから。


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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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