2011/3/31【フレックスと変形労働の一長と一短。】



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「焼きカレー」というメニューを置いている飲食店がある。私が最初に焼きカレーなるものを食べたのは大学時代で、千代田区神田にある小さな飲食店(居酒屋のような店だったと思う)の軒先に焼きカレーの旗がはためいていたので、試しに昼食として食べてみようと思って店に入った。焼きカレーといっても、大盛り、特盛り、超特盛りというオプションもあったようだが、私はノーマルの焼きカレーを選んだ。

食べてみて感じたことだが、焼きカレーはいわゆるカレードリアなのだ。「焼きカレー」という名称を使っていると、「おっ! 何か珍しいものがあるぞ」と思えるが、実質はカレードリアそのもの。小さな鉄板にご飯を敷いて、その上にカレーをかけてチーズをトッピングし、それをオーブンで焼いたものが焼きカレーなのだから、これはカレードリア以外にありえない。

なぜカレードリアを焼きカレーと言うのだろうか。素直にカレードリアとしてメニューに組み込めばいいのに。名前を変えれば、実質が同じでも違うメニューとして扱うのだろうか。何とも妙な理屈だ。








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フレックスと変形労働の一長と一短。
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■時間変形の手段。



ご存知のように、仕事をする際には、法的な時間枠(標準で、1日8時間、1週40時間)があります。

ただ、労働基準法にはこの枠を変形させるメニューがあって、このメニューを利用すれば均等に割り振られた1日8時間、1週40時間の枠を変形させて運用することが可能になるわけです。

代表的な手段として、変形労働時間制度とフレックスタイム制の2つがありますが、それぞれに長所がありネックがあります。これらの手段には、法的な時間枠を超える効果がある代わりに制約があるのが特徴です。

ただ、どちらの手段にも良い所がある一方で、イマイチなところもあります。





■一長一短のメニュー。



変形労働時間制もフレックスタイム制も、時間枠を変形させる効果は一緒ですが、違うポイントもいくつかあります。


フレックスタイム制度の長所を考えると、まず出退勤の時間を社員自身がコントロールできる点があります。出勤ラッシュや帰宅ラッシュを避けて電車に乗ることが可能になるでしょう。また、男性にとっては痴漢トラブルを避けることが可能ですし、一方、女性にとっては痴漢被害を避けることが可能になるはず。

他の長所は、勤務時間の精算ができる点です。フレックスタイム制には精算制度というものがあって、清算期間(最大で1ヶ月まで)の労働時間が法定労働時間の総枠に収まっていれば、法定時間の枠内で勤務したとして扱えるわけです。つまり、1日あたり、もしくは1週間あたりで8時間ないし40時間を超えたとしても、精算するときに総枠に収まっていれば良いのですね。フレックスタイム制では、社員自身が出退勤をコントロールするため、事前に勤務時間の予定を決めることができないので、後から精算するわけです。


一方、変形労働時間制の長所を考えると、勤務時間の変形期間をフレックスタイム制よりも長期に設定できる点があります。1週間の変形期間もあれば、1ヶ月や3ヶ月の変形期間もあるし、1年の変形期間もある。また、フレックスタイム制と違って、勤務スケジュールを会社側で決めることが可能という点も長所かもしれません。



フレックスタイム制度のネックを考えると、勤務スケジュールを制御しにくいという点がありますし、また、期間が最大で1ヶ月までなので1年などの長期で変形できないという点もありますね。

一方、変形労働時間制のネックは、事後的に精算できないところでしょうか。フレックスタイム制と違い、変形労働時間制では会社が勤務スケジュールを決めることが可能なので、勤務時間の事後精算を認める理由がありません。そのため、事前に予定した範囲のみで法定労働時間を超えることができるわけです。つまり、変形労働時間制で法定の時間枠を超えるには、事前に法定の時間枠を超える勤務スケジュールを立てる必要があります。

例えば、月曜日に10時間、火曜日に6時間、水曜日に6時間、木曜日に9時間、金曜日に8時間という変形勤務スケジュールを設定したとすると、法定の時間枠を超えることが可能な曜日は、月曜日と木曜日だけです。火曜日、水曜日、金曜日は最大で8時間まで勤務することが可能であり、この8時間を超えると時間外労働になるわけです。

「変形期間の総時間枠に収まっていればいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、変形労働時間制度で事後精算はダメです。確かに、変形労働時間制には総時間枠がありますが、これは法定の時間枠を割り振る原資のようなもので、時間の割り振りで使うだけの概念です。そのため、「総時間枠に収まれば、勤務時間が日毎に変動しても構わない」という判断はNGなのですね。

つまり、変形労働時間制では、8時間を超えるときは事前の予定が必要で、予定を見通せない商売では変形労働時間制の効果を得にくいのです。会社によっては、変形労働時間制にもかかわらず勤務時間を事後清算しているところもあるかもしれませんが、これは正規の運用ではありません。







■どの選択肢でも時間管理が必要になる。



ならば、法定労働時間の枠を超えることが可能であり、かつ、後から勤務時間を精算できる仕組みはないのかと思うところです。変形労働時間制のように長期にわたって法定時間枠を変形することができて、さらに、変形期間の勤務時間をまとめて事後精算できるメニューがあれば都合がいいですよね。

例えば、1ヶ月の期間で時間変形したとして、1ヶ月の勤務時間を給与の締め処理の段階で精算できるならば、日毎の勤務時間がコロコロと変動しても対応できるはずです。1ヶ月の時間総枠が172時間として、予め勤務予定を決めることなく、その172時間に1ヶ月の勤務時間が収束すればそれで足りるならば便利な仕組みです。また、1年の期間で変形したときも、時間配分を事前に決めずに、1年経ってから事後精算できるならば変形労働時間制の運用もしやすいわけです。

しかし、労働基準法は時間管理を前提にしているため、時間の管理を緩めるような仕組みを認めることにネガティブです。裁量労働やみなし労働時間制もありますが、時間の管理を自由にさせるほどの効果はなく、労働時間のカウントや時間外労働の把握は必要なのですね。時間を賃金の計算で利用しないとしても、安全衛生とか勤務実態の把握を理由に時間を計測するようにしているのです。


変形労働時間制も、時間の総枠に収まっていれば足りるわけではなく、変形期間が長くなるほど制約が多くなります。また、1日8時間または1週40時間を超える時も、事前に勤務スケジュールを決めた上で超えないといけないわけです。そのため、変形労働時間制では勤務時間の事後精算はできないのですね。

変形労働時間制と違い、フレックスタイム制で勤務時間の事後精算が可能なのは、事前に勤務スケジュールを決めることができないからです。出退勤の時間を決めるのは社員さんですから、事前に法定労働時間の枠を超えるかどうかが分からないのですね。そのため、フレックスタイム制を採用している場合は、事前に勤務スケジュールを決めなくてもいいわけです。


枠を超えることを優先すると、柔軟性を放棄しないといけない(変形労働)。一方、柔軟性を優先すると、長いスパンで時間枠を変形させる利点を放棄しないといけない(フレックスタイム)。まさにトレードオフですね。

そこで、「フレックスタイム制の清算期間は1ヶ月なのだから、毎月フレックスタイム制を実施していけばいいんじゃないか?」とも思うかもしれない。確かに、フレックスタイム制を継続していけば、勤務時間の事後精算は可能です。しかし、出退勤の時間を社員本人が決めてもいいのかがポイントになります。この点について会社側が受け入れれば、フレックスタイム制で時間を管理していくのも良い手段です。

フレキシブルタイムを短くして運用すれば、出退勤時間を選択する裁量をコントロールしながら勤務時間を精算できるので、さらに良いかもしれない。ただ、フレキシブルタイムを短くする際には、フレキシブルタイムとコアタイムのバランスが別途で問題になります。どの程度のフレキシブルタイムがあればフレックスタイムとして成立するかは未だに固まっていないところですから物議を醸すはず。








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