book475(嘘をついて休暇を取得したら)





■休暇の取得理由が嘘だった。



有給休暇を取得するときは、どのような理由で取得するかは問題とはならないのですが、時季変更権を行使するかどうかを判断するために、理由を休暇申請書などに記載することがあります。

もちろん、休暇の取得理由を申請時に申し出る必要や義務は無い。しかし、休暇申請の際に、休暇を取得する本当の理由を書かずに嘘を書いたらどうなるのか。


例えば、単に休みを増やしたいだけというのが実際の理由なのだが、祖父の法事のために休暇を取得するとの理由を申請書に書いたらどうか。他にも、休養を取りたいだけなのだが、母親が入院しているので見舞いに行くという嘘を休暇の申請時に申し出たらどうか。転職活動のために休暇を取得したいが、申請の際には休養を理由にしたらどうか。


上記のような場合、嘘を申告してきたので休暇の取得そのものを取り消すことができるのか、それとも、取り消すことまではできないのかが問題となります。







■「理由」ではなく、「時期」が大事。



虚偽の理由で有給休暇を申請したら、その申請は無効になるか、もしくは、休暇の申請が取り消されるか。

結論から言えば、無効にならないし、取り消されることもない。


なぜならば、理由なしでも有給休暇は取得できるので、理由によって有給休暇の取得に影響はしないからです。

転職するために有給休暇を使うのもありですし、家で休養するために休暇を使うこともできる。釣りに行くために休暇を使うこともできる。ごく例外(ストライキに参加するためなど)を除いて、どんな理由でも休暇は取得できるわけです。

ただ、休暇を使いやすい職場と使いにくい職場があることは事実です。すべての企業で休暇の消化率100%になるのが普通なのですが、休暇を取得することを遠慮する人が組織内にいると、他の人まで取得しにくくなったりする。この点は、法律で強制的に修正できる範囲ではなく、人の価値観や意識が変わることがポイントになるはずです。



ただし、休暇の取得理由によっては、時期の変更を求められる可能性はあります。

特定の日に有給休暇を取得するとき、その日に取得されると仕事に都合が悪いかどうかが会社にとって重要であって、どのような理由で休暇を取得するかどうかは会社にとって重要ではありませんよね。つまり、理由が大事なのではなく、時期が大事ということ。

もちろん、理由によっては、時期変更権の行使に影響する。優先すべきかなと思える理由ならば、時期変更せずに休暇を取得できるかもしれないし、さほど優先すべきではない理由ならば日程を変えるように要求されるかもしれない。

休暇の理由を聞くのは、「時期を変更するかどうかを判断するため」であって、「休暇の取得を認めるかどうかを判断するため」ではないのですね。


「どんな場合でも理由を聞くのはダメ」というわけではなく、時期変更との兼ね合いのために聞くならばOKなのです。人によっては、「有給休暇の取得理由を聞くことはできない」とまで言ってしまう方もいらっしゃいますが、そこまで厳格ではありません。休暇を取得する理由を聞かないと、時季変更権との調整ができませんから、やはり理由を聞くことそのものは妨げられないと考えるべきです。社員には有給休暇を使う権利があるのだから、会社にも時季変更権を使う余地を用意してあげないといけませんよね。

ただし、時季変更権は「時期を変更する権利」であって、「休暇の申請を却下する権利ではない」という点については知っておく必要があります。休暇の取得そのものを拒否する力はありませんからね。あくまで日程を変更するにとどまります。

もし時季変更するならば、「どの日からどの日に変更するのか」を変更時点で決めるのが良いでしょう。単に変更するだけだと、実質的に休暇申請の却下になるかもしれませんので、変更後の休暇日程を確実に決めるのがポイントですね。


嘘の理由で休暇を申請してきたとなれば、嘘をつかないと休暇を取得しにくい職場なのかもしれない。もしくは、転職などように本当のことを言うに言えないのかもしない。休暇の取得申請書に「転職するため」という理由をドーンと書く人はおそらくいないはず。


嘘も方便ですね。


山口正博 社会保険労務士事務所
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