book466(出来高払いで「一定額の賃金の保障」とはいくらなの?)




■出来高払いなのに賃金保障。



労働基準法では、出来高払いや請負で仕事をする人であっても、一定額の賃金を保証しなければならないことは知っている方もいるかと思います。

条文では、12条と27条に書かれています。

ただ、27条では「一定額の賃金」と書いているが、一定額とはどの程度なのかが疑問を抱くところです。

12条1項には、「、、、出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60」と書かれていますので、これで計算できるとも思えます。

確かに、100分の60という数字による基準があるので、出来高払いや請負の際の賃金処理には問題ないと思える。しかし、100分の60という数字は相対数字であって、何らかの基準となる絶対数字がなければ計算を完了できません。つまり、100分の60だけでは、何の数字の100分の60なのかが分からないので単独では意味を成さないわけです。

もし、月額15万円とか月額18万円というように絶対値で基準があれば、あえて解釈を加えることもないのですが、現実には100分の60という相対値で基準が与えられているため、計算の元となる数字は一体何なのかが問題となるわけです。






■労働基準法12条と27条が根拠だが、相対値で賃金を保障できるの?



12条に基づき、素直に考えて、「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額(12条)」を「賃金の総額をその期間中に労働した日数(12条1項)」で除した金額の60%という式で計算してみる。なお、本来の平均賃金は、3ヶ月分の賃金を"総日数"で除するが、出来高払いや請負の場合は総日数ではなく"期間中に労働した日数"を分母に使えるので、そのようにする。

例えば、算定日以前3ヶ月に支払われた賃金総額が63万円で、労働した日数が60日だとすると、63÷60=1.05なので、日給は10,500円。その金額の60%なのだから、6,300円。これが一定額の保障ラインということになる。

1日6,300円なのだから、極端に低いわけではないが、かと言って高いわけでもない。これを高いと判断するか低いと判断するかは人それぞれだが、焦点はこの金額で一定額の保障になるかどうかという点にある。

もし、算定日以前3ヶ月に支払われた賃金総額が42万円で、労働した日数が60日だとするとどうか。勤務日数は多いが、勤務時間が短ければこのような条件になることもあるだろう。42÷60=0.7なので、日給は7,000円。その金額の60%なのだから、4,200円。さて、これで一定額の保障ラインになるだろうか。

もちろん、勤務日数は多くても勤務時間が短いので、妥当な水準かもしれない。

しかし、上記の2例は固定的な時間スケジュールで働くことを想定しているが、出来高払いや請負で働く人は、勤務スケジュールを自分で決めやすいはずなので、もっと計算結果は変動的になるだろう。

労働基準法的には、出来高払いであれ請負であれ、ベースとなる時給を設定し、成果部分はその上に載せるという賃金構成になるので、実際に完全成果報酬型で働くことは無理がある。1時間仕事をすれば、成果はどうであれ、時間拘束に対する賃金を用意しなければいけなくなる。

時間に対する賃金を確保するように求められてしまうと、成果型で仕事をする選択肢を選べなくなるのではないかと思う。12条と27条は、人の働き方を制限しているのではないでしょうか。

山口正博 社会保険労務士事務所
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