book456(社則が就業規則化する)





■就業規則ではないけれども就業規則的なもの。



会社の中には、就業規則を利用せずに、「社則」や「社内ルール」という独自の道具で労務管理しているところがあるかもしれません。

本来、労務管理のルールを定めるときは就業規則を使うべきところですが、あえて就業規則というフォーマットを利用ぜずに、会社独自の社則や社内ルールで対応する会社もあるかと思います。

ここで問題になるのが、「就業規則」と「社則や社内ルール」では効力に違いがあるのかどうかという点です。

労働基準法でルール化されているのは就業規則だけですし、労働協約は労働組合法14条に根拠があります。しかし、社則は法律を基礎にしたものではありませんし、社内ルールも同様です。

では、就業規則や労働協約にはキチンとした効力が認められるが、社則や社内ルールには正式な効力は認められないのでしょうか。

そこで、Formalな規則とInformalな規則では、お互いに同じような効力を持つことができるのか、それともできないのかが問題となります。






■"実質的に"就業規則なのかどうか。



先に結論を言えば、就業規則という名称ではなくても、"実質的に就業規則と同等のものとして扱われている"ならば、社則や社内ルールを就業規則であるとみなす可能性はあります。

就業規則として成立するポイントは、形式的に就業規則という名称を用いているかどうかではなく、「その内容が実質的に就業規則として成立しうるか」という点にあるからですね。

時間外手当の要否で争点になる管理者の認定も同じですよね。形式的に肩書きで管理監督者かどうかを判断するのではなく、実質的に管理監督者と言えるかどうかを個別に判断しています。「店長だから管理職」と単純に判断するのではなく、その人は管理監督者なのかどうかを個別かつ具体的に判断するのが実務です。そのため、マクドナルドの店長は管理監督者ではないけれども、ユニクロの店長は管理監督者であるという判断の分かれも有り得るわけです

労働基準法は形式判断ではなく実態判断が基本ですので、名称だけで判断すると不都合な結論を導き出してしまうかもしれません。


企業は、ある程度の規模になると正式な就業規則を作ります。就業規則が出来上がると、社則や社内ルールという名称でルール化するのではなく就業規則に一本化するため、今回のような問題はなくなります。社則や社内ルールの効力はどれほどのものなのかという問題は、小規模な会社で起こることです。10人未満の会社はもちろんですが、10人以上の会社でも就業規則と社則の2本立てで労務管理しているかもしれません。就業規則と社内ルールの2本立てもあり得ますよね。

同等のポジションを有しているルールが併存しているとき、効力関係が整理できなくなるのが問題なのですね。


形式判断を重視すれば、「社則は正式な就業規則とは別物だから、効力は無い。就業規則や労働協約、雇用契約書だけが正式なルールになるのであって、それ以外のものは無効」と考えることが可能です。

しかし、これでは企業側の裁量を狭めすぎますし、社則や会社独自のルールでもキチンと機能している会社もありますので、一概に無効化してしまうのは不都合ですよね。

就業規則という体裁をとっていることは確かに重要ではあるけれども、かといって就業規則ではない社則が就業規則的な効果を持たないわけではない。むしろ、社則を「就業規則に準じるもの」として扱うほうが望ましいこともあるかもしれません。この場合、社則は就業規則と同じものとして扱われるので、拘束力も生じます。もし、社則に反する労務管理をすると、会社側に不利な判断もなされうるわけです。


実質的な判断を加味するのが法律の運用でのキモであり、労務管理のキモでもあります。

形式的に就業規則ではなくても、実質的に就業規則と同等のものとして運用されているならば、それを就業規則として扱う可能性はある(少なくとも0%ではない)ということは知っておくべきでしょう。

「社則だから拘束されないのだ」と思い込むと想定外の結果になるかもしれませんね。

山口正博 社会保険労務士事務所
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