book455(週所定労働日数が定まらないときの有給休暇)






■比例付与で対処したいけど、対処しにくい。



週5日以上で勤務していると、有給休暇は労働基準法36条の原則通りの運用になりますが、週5日未満で勤務していると、少し変則的になります。

よく知られているのが「年休の比例付与」という仕組みで、「週所定労働日数が4日未満(もしくは、年間所定労働日数が216日以下)で週所定労働時間が30時間未満」という条件で働いているとき、その勤務内容に応じて比例的に休暇を配分するというもの。

フルタイム社員だけが年休を取得して、週4日以下で働く短時間社員には全く年休がないのはバランスが悪いので、勤務実態に応じて休暇を配分しようというのが年休の比例付与の趣旨です。



そこで、例えば、週所定労働日数が一定しない環境で働いている人がいるとして、その人の有給休暇はどうやって決めたらいいでしょうか。

つまり、今月の第1週は4日勤務だったけど、第2週は5日勤務、第3週は2日勤務、第4週は2日勤務というように、または1週間に全く勤務が無い場合など、月毎もしくは週毎にコロコロと勤務日数が変わってしまう場合、有給休暇の日数をどのように設定するかが問題となります。

通常だと、週所定労働日数は固定されていることが多いのでしょうが、人によっては変則的に仕事をしている人もいます。非定型的なパートタイムヘルパー(訪問介護の仕事)という身分で働いている人がこのパターンに当てはまるのではないでしょうか。








■シンプルに解決しようとするとアンバランスに。



労働基準法39条は、原則通りの運用であれ比例付与による運用であれ、「一定の週所定労働日数もしくは一定の年間所定労働日数で働いているだろう」という想定で制度が設計されています。月毎や週毎に所定労働日数が変動する働き方を想定して設計されていないため、もしそのような事例が発生したときには対応に工夫が必要になります。

まず、「所定労働日数が特定できないのだから、有給休暇は無し」という対処方法があります。週5日と決まっているわけではないし、週3日と決まっているわけでもないので、有給休暇は無し!と考えるわけですね。

所定労働日数が特定できないために有給休暇は無しとしている会社もあるのかもしれませんが、たとえ週1日の勤務であっても、比例付与の仕組みを利用すれば休暇を設定できるのですから、所定労働日数が変動するからといって休暇を全く無しにするのはアンバランスです。

週1日で定期的に勤務すれば年休があるけれども、週毎にコロコロと勤務日数が変わると休暇がゼロになってしまうのはやはり不都合です。ただ、もし、このように運用したとしても違法とまでは判断できないのが現状です。


他方、「所定労働日数が特定できないならば、すべて通常通り(フルタイム社員と同じ)に年休を設定してしまう」という方法があります。

この方法ならば、休暇がゼロになることはありませんので、この点では満足できる選択肢ではあります。

ただ、個々に勤務日数は異なるのに休暇の日数が同じになってしまうと、他の人よりも勤務日数が多い人が不満を感じるかもしれませんよね。「勤務日数が多くても少なくても年休の日数が同じなのだったら、勤務日数を減らそうかしら、、、」と思うはず。

このように、勤務日数を考慮せずに休暇を付与する方法もアンバランスな側面を有しているわけです。


問題の焦点は、「休暇日数をなるべく勤務実態に合わせたい。しかし、所定労働日数が定まらない。どうするか」という点です。



そこで、妥協的な選択肢として、所定労働日数の平均を利用するという解決策を用いることになります。

たとえ所定労働日数が変動しても、週あたりの所定労働日数が計算出来れば、比例付与で休暇を配分できます。そこで、一定の期間の労働日数を集計し、週あたりの所定労働日数を計算することで比例付与の仕組みを利用するわけです。

ただ、どれくらいのスパンで平均値を計算すればいいのかが客観的に定まっておらず、通達(平成16年8月27日基発第0827001号)では6ヶ月のスパンを利用することを案内しています(この通達では、6ヶ月平均の所定労働日数を2倍して、それを1年の所定労働日数にするという内容でした)。

実務では、過去6ヶ月の勤務実績を利用して、週あたりの所定労働日数を計算し、年休を比例付与するのが妥当な解決策であろうと思います。


法律は、パターン化できる行動を規制するのは得意だが、パターン化できない行動を規制するのは苦手なんですね。


山口正博 社会保険労務士事務所
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