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退職月の給与だけ振り込みを希望できる?

現金主義
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■退職月の給与だけ振り込みでお願いする◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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振り込み費用は当然に会社が負担すべき??
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現金で毎月の給与を支給している会社で銀行振り込みを要求する

給与の支払は今では銀行振り込みが多いでしょうか。以前は現金で支払う会社が多かったのかもしれませんが、今では違うのでしょうね。

ただ、今でも、小規模な会社だと現金で給与や賞与を渡しているところもあるでしょう。給与は振り込みだけど、賞与だけは現金払いという会社もあるでしょうね。

振り込みだと受け取った実感が薄いので、あえて実感を得やすい現金で支払う会社もあるようです。例えば株式会社 武蔵野では賞与は現金で社員に渡して、分厚い封筒を奥さんに渡すように仕組みを作っているとのこと。こうすれば、"賞与日だけ"奥さんが旦那さんに感謝するという流れらしいです(笑)。


さて、今回の話は、退職した月の給与を会社に取りにいくのが手間なので、金融機関に振り込んでもらうという内容です。退職月の給与は最後の給与になりますから、会社まで遠い社員さんにとっては、あえて取りにいくよりも振り込んでもらった方が都合がいいという場面ですね。

なお、今回は、給与は現金で支払われていると仮定します。振り込みで支払う会社が多くなっていることは既に書きましたが、今回は現金払いの会社を想定します。


ある会社から退職する坂下さん(仮想の人物です)という社員さんがいるとして、坂下さんはすでに2010年8月末で退職しました。坂下さんの会社の給与締め日は末日で、支払日は翌月10日です。また、給与は現金で支払われており、坂下さんの自宅から会社までは片道1時間かかる距離だとしましょう。

そこで、坂下さんは、退職直前の8月末日ごろに、会社の事務担当の人に、「給与を取りに来るのに時間がかかるので、最後の給与は振り込みにして欲しいんです。振り込み手数料は私が負担して構いませんので、振り込んでもらえますか?」とお願いしました。

会社の担当者さんは、「そうですか。わかりました。では、最後の給与は振り込みます」と応じました。

その後、給与は9月10日までにキチンと振り込まれ、坂下さんの希望通りに手数料は控除されていました。

ところが、その後、坂下さんが「給与の振り込み手数料を給与から引くのはダメなんじゃないですか? "賃金の全額払い"という原則があるそうだし、、、」と会社にクレームを言ってきました。さらに、控除した振り込み費用を返して欲しいと言っています。


この場合、会社はどう対処するでしょうか。


クレームを言われたので、振り込み費用を返還するのでしょうか。それとも、返還はしないのでしょうか。






会社が振り込み費用を負担するのが当然?

給与を金融機関への振り込んでいる会社だと、振込手数料は会社が負担していることが多いはずです。銀行名、支店名、口座種別、口座番号、名義人という5つの情報があれば振込はできますので、この情報だけを社員さんから聞くか書面に記載してもらって、振り込みの設定をするのでしょう。

ただ、「振込手数料は会社が当然に負担する」という決まりはありません。社員さんが振込手数料を負担することもあるのです。

例えば、会社が指定した振り込み可能な金融機関には、A銀行、B銀行、C銀行の3つがあって、A銀行ならば振込手数料は不要だが、B銀行とC銀行への振り込みは315円必要で、さらに左記の3つ以外の銀行へ振り込む場合は、手数料が525円必要になるという会社もあります。これでも給与の支払方法としてはダメとまでは言えないんですね。

余談ですが、法人が銀行経由で振り込むと、個人よりも高い手数料が必要だったりします。私の知るところでは、1回で840円という手数料を取られることもありましたね。1万円程度の振込で840円の手数料でしたからね、、、これはちょっと負担ですよね。個人の振り込みとは大違いです。

また、最近では、ゆうちょ銀行も銀行のネットワークに加入したので、ゆうちょ銀行も給与の振り込み先に指定できるようになっているのではないでしょうか。以前は、銀行への振り込みは可能だけど、信用金庫と郵便局はダメという会社もありましたからね。


話を戻すと、必ずしも給与の振込手数料を会社が負担するとは限りません。

確かに、賃金には「全額払いの原則」というルールがありますが、何が何でも全額をキチンと払わなければいけないわけではないのです。

税金や雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料は控除されますし、また、労働組合がある会社だと組合費を数百円とか数千円ほど控除されているのではないでしょうか。他には、飲食店の賄い費用が控除されていることもあるでしょう。「賄いはタダ」と思っている方も稀にいらっしゃるのですが、賄いの扱いはお店によって違っていて、全て会社が負担することもあれば、1食300円のように一部負担を求めるお店もあります。どこでもタダ飯が食えるわけではないのです(笑)。私の経験では、こじんまりとした飲食店だと賄いは全て会社負担になっていて、チェーン展開する飲食店だと一部負担(1食350円)が必要でしたね。

全額払いの原則といっても、「働いた賃金を何が何でも全額キッチリを払え」という意味で解釈するのではなく、「必要な費用は控除して、その他はキチンと支払う」と解釈するのが正しい理解です。理由が不明朗な費用を控除するのがダメなのであって、理由がキチンとあって必要な費用を控除するのは構わないわけです。


給与の振り込み費用も、全ての会社が同じ扱いに統一されているわけではなく、会社ごとに違いがあります。

ゆうちょ銀行には振り込めない会社があれば、振り込める会社もある。信用金庫には振り込めない会社があれば、振り込める会社もある。どこの金融機関でも手数料が必要ない会社があれば、手数料が不要な金融機関と必要な金融機関が分かれている会社もあるのです。

会社によって都合が違うのですね。


この銀行では手数料が不要だけど、他の銀行では必要という会社ならば、もし手数料を負担することを回避したいなら手数料が不要の金融機関に口座を開設すればいいだけです。日本の金融機関だと口座開設費用は不要でしょうから、社員さんにとってはさほど不都合ではないはずです。

信用金庫に振り込めないならば他の金融機関に口座を開けばいいし、現金払い以外は手数料が必要と言われれば現金で受け取ればいいのです。





全額払いの原則だけに注目してはいけない

「給与には全額払いの原則というルールがある」という点だけに注目していると、退職月の給与を振り込む際に手数料を控除するのはダメと判断できそうです。

しかし、1、「現金で給与を支払っているのに、例外的に振り込んで欲しい」という社員さんの希望。2、「振り込み費用は自分が負担してもいい」という社員さんの了承がある。

上記2点を考慮せずに、「全額払いの原則だ!」と言って、それだけで問題を解決すると、歪な結論が出てしまいます。


「現金でしか払わないルールなのに、振り込みを要求している」し、「振り込み費用は負担します」と言ったくせに、後になって「オカシイんじゃないの?」と言ってくる。この事情を考慮しても、社員さんの立場を支持したいと感じるでしょうか。自分で費用を負担すると言っておいて、後から翻意するのは不誠実です。

「全額払い!、全額払い!、全額払い!」と法律を当てはめるのはいいのですが、現場で発生している事情を拾わなければヘンな結論になることも知っておくといいでしょう。


もし、現金払い給与の会社で振り込みを求めるならば、社員さんがその費用を負担することになります。本来ならば発生しない費用を発生させているのですからね。現金払いなら現金で受け取れば良いだけです。

また、自分で「費用を負担します」と言っておきながら、後になって「アンタが負担すべき」というのは人間としてルール違反です。いくら全額払いの原則があるといっても、このような人を守るまでの効果を認めるべきではないでしょう。


振り込みだけで給与を支払っている会社ならば、今回のような問題は起こらないでしょう。しかし、普段は現金払いで給与を払っている会社だと、社員さんが退職した際の最後の給与だけを振り込む状況が起こりえます。

そのため、最後まで給与は現金で支払うと頑固に行くのか、それとも、やむを得ず振り込むときは会社が負担するのか社員さんが負担するのかをハッキリさせておくのがいいでしょうね。

まあ、振込手数料など数百円程度だし、退職月の1回だけの振り込みだから会社が負担してしまえばいいとも思えます。数百円の費用をどうするかとゴタゴタするよりも、金を払う方が簡単でしょうね。私もこの立場を支持します。

もし、社員さんから「振り込み費用は自分が負担しますから」と言われても、会社で一方的に負担してしまう方が賢明かもしれませんね。

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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