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外部の人に仕事を代わってもらう

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■外部の人に仕事を代わってもらう◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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社員の立場を一時的に譲渡するのはアリ?
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雇用契約の当事者としての立場を他人に譲渡する

会社は、社長や役員のようないわゆる使用者の立場の人と、使用者以外の社員であるいわゆる労働者の立場の人で構成されています。

また、社長や役員が1日ごとに入れ替わったりする会社はそうないでしょうし、社員さんが1日ごとに入れ替わる会社もそうはないでしょう。派遣社員は派遣元で継続的に雇用されていますし、日雇いで働いていても1日だけで職場を変えていくことは少ないのではないでしょうか。おそらく、数日か数週間は同じ現場で働くはず。

このように、使用者としての立場や労働者の立場というのは変動しにくいわけです。


では、使用者としての立場や労働者としての立場を一時的に他人に代わってもらうとしたら、どんな問題が起こるでしょうか。

例えば、来月は旅行に行くので、自分の会社の社長を友人に代わってもらうというのはどうでしょう。8月はグァムに行くので8月いっぱいは友人が社長になり、9月からはまた自分が社長に復帰するというような場面ですね。ちなみに、この交代は社長の判断だけで行われていると考えます。こりゃぁ、随分と風変わりな社長です。

また別の例を挙げれば、営業を担当している社員さんが、午前中だけは自分が仕事をして、午後からは自分の弟に仕事を代わってもらっているというのはどうでしょう。ちなみに、弟に仕事を代わってもらっているということを会社は知りません。この社員さんとその弟は顔や姿もよく似ているので、他人がパッと観ても判別するのは容易ではありません。

使用者としての立場を他人に代わってもらったり、社員としての立場を他人に代わってもらうのはアリなのかナシなのかが問題となります。


まあ、滅多なことでは上記のようなヘンな人たちに出会わないでしょうが、全く有り得ないことでもなさそうです。一卵性双生児の兄弟や姉妹ならば、仕事を代わってもらう事もできそうです。

私は一卵性双生児ではないですけれども、小学校から中学生の頃に、一卵性双生児の兄弟が同級生でいましたね。私は随分と長い間この兄弟を見ていましたから、どちらがどちらなのかを判別することはできましたが、付き合いの浅い人がこの兄弟を見た場合、双方を判別することはできなかったようです。ちなみに、この兄弟は一卵性双生児ですから、年齢も同じです。しかも、背丈もほぼ同じで、顔がちょっと違うという程度であり、人としての雰囲気もよく似ていました。そのため、さらに判別が困難だったのかもしれません。






単純な仕事を代わってもらうのはいいの?

他人を代役にすることについては、民法にルールがあります。

(使用者の権利の譲渡の制限等)
第625条
1項:使用者は、労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない。
2項:労働者は、使用者の承諾を得なければ、自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
3項:労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは、使用者は、契約の解除をすることができる。


1項を読むと、社長は自分だけの判断で他人を社長の代役として立てることはできませんね。自分の友人に「8月は海外へ旅行に行くので、ちょっと社長やってくれる?」などと軽いノリでお願いすることはできません。突然、誰か分からないような人が社長としてやってきたら、社員さんはビックリしますからね。「誰? あれ」みたいな。中には、「ウチの会社、乗っ取られたんじゃないの、、?」と思ったり人もいるかも。もしこんなことが起これば、社員さんから社長にクレームが出るでしょうから、実現しないのが普通だろうと思います。

ただ、625条の第三者というのは、いわゆる「部外者」を想定しているので、社長の親族同士だと交代することが有り得るでしょうね。例えば、社長である父親が1ヶ月ほど出張するので、長男とか配偶者に社長を代行してもらうことはありそうです。

ただ、この場合の長男といっても、会社の役員になって実際に業務に携わっている長男なのか、それとも、形式的に役員になっているだけで業務には携わっていない長男なのかで事情は変わるでしょうね。前者の長男が社長を代行するならば、おそらく何らの問題もないでしょう。しかし、後者の長男が社長を代行するとなると、会社の人は困るかもしれません。おそらく、後者の場合は、社長の代行を設けずに、役員の人や管理職の人でやりくりするのではないでしょうか。決裁が必要な事柄は、電話やメールで連絡し解決すると思います。

使用者の代行では周りの人がフォローできるので、雇用契約に影響が出ることもあまりないのかもしれません。


一方、社員としての立場を他の人が代行するとなると、使用者の場合とは違って、他の人が止めることができない場面もあります。先ほどの例のように、午前中だけ自分が営業をやって、午後は自分の弟が営業をやるとなると、複数人で動いているならば他の人が気づくでしょうが、単独で動いている営業ならば、誰かが気づくこともできないはずです。

社員本人ではなく、その弟が兄の名刺を持って営業するとなると、もうこれは「なりすまし社員」です。これを会社が許すかどうかが問題です。会社の承諾を得ずに代行させているとなると、雇用契約を解除する理由になります(先ほど挙げた、民法625条3項より)。

ただ、ごく簡単な仕事を外部の人に変わってもらうという場面は有り得るかもしれない。例えば、屋台の店番などが典型例でしょう。屋台の店番など、やることは難しくなく、簡単な調理をしてお金の授受をするか、お金を受け取ってクジを引いてもらったり金魚すくいの紙を渡したりする程度です。店に行ったら、突如として、「焼きそばを焼いてくれ」なんて任されたりすることもあるのかもしれない。これならば、一時的に祭りにやってきた友人に店番を代わってもらうこともあるでしょう。もちろん、親密度の高い友人に限られますが。

簡単な仕事だと、いちいち使用者である店主に断ることなく、第三者が勝手に仕事に参加することも有り得るんですね。

親しい間柄で交代するとか、友人同士で運営している屋台では、必ずしも厳密に雇用契約のルールが維持されているわけではないのですね。






人にくっつく属人的な雇用契約

なぜ勝手に代わってはいけないかというと、人と雇用契約がリンクしているからです。つまり、「"特定の"雇用契約」は「"特定の"使用者」と「"特定の"労働者」のためのものであって、その当事者以外の人が介入してしまうと、雇用契約の内容を維持できなくなるからなのですね。そのため、雇用契約は「属人的な契約」と言われることもあります。

ただ、お祭りの店番のように雇用契約に属人性をさほど求めない場面もあります。友人同士で仕事を代わったり、親の代わりに息子や娘を充てるなど、普通の雇用契約だと避けるべきことでも、非常に人的な代替性の高い仕事の場合は許されたりします。しかし、コンピュータープログラマーが、たこ焼きを焼いているおっちゃんと交代するというようなものはダメです。人的な代替性が低いですから。たこ焼きを焼いている人がPythonのコードを書いたりすることは想像しがたいです。稀にできる人もいるかもしれませんが、あくまで稀です。


他にも、「ウチの社長は酒井という人なんだけど、今日だけ樋口さんが社長なんだよ」なんてことはないはず。まあ、1日店長とか1日社長というキャンペーンのようなことをする企業もあるのでしょうが、それはあくまでイベントとしてやっているだけ。ちなみに、警察署での1日署長というのも有名です。小学生ぐらいの子供が担当するようで、これもキャンペーンやPR活動ですね。

他の人でもできるからという思いで、他の人(もちろん、同僚などは除く)に仕事を代わってもらったりすると、雇用契約が解消する原因になりますので、やらないようにしてください。マトモな人ならやらないと思いますけれども。

 

例外としては、お店や会社を経営する人、その職場で働く人が、お互いに顔見知りで、仲の良い関係であるならば、日によって他の人と入れ替わって働く、なんてこともありえるかもしれません。

交代する人も交代される人も、お互いに友人や顔見知りで、経営者もその人たちのことを知っている。となると、全員が仲間というかお互いに知っている関係ですから、昨日は今井が出勤してきたけれども、今日は彼の代わりに近藤が出勤してきた。こういう形で入れ替わって仕事をしてもらうなんてこともあるんじゃないかと。

ですが、人がコロコロと入れ替わるなら、それはもはやそれは雇用契約ではなくて、どちらかというと請負契約で働いてもらってる。つまり、働いてる人達は従業員じゃなくて、個人事業主なり自営業者という位置付けになっていると考えないといけない場面です。

 

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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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