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変形労働時間制度では使用者の都合で後から労働時間を変えられない

変形労働┏━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2010/4/21号 no.182)━


 



■変形労働時間制度では使用者の都合で後から労働時間を変えられない◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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変形労働時間制度は好きなように労働時間を組み替えられる制度じゃない。
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何の手続きも無しに変形労働時間制度を使うのはダメ

2010年の4月に、ある企業で採用している変形労働時間制度が否認されました。

「メールマガジン労働情報」というメルマガのNo.617で紹介されていた事例です。


メルマガ本文より引用。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ 
●店側に残業代支払い命令/「変形労働時間」認めず

パスタチェーン「洋麺屋五右衛門」のアルバイト店員だった東京都内の
20代男性が、チェーンを展開する日本レストランシステム(東京)に未払
い残業代など約20万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は7日、
約12万円の支払いを命じた。(共同通信)

http://www.jil.go.jp/kokunai/mm/hanrei/20100414a.htm
△ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ 

この会社では、変形労働時間制度を採用していたものの、就業規則に変形労働時間制度について書かれておらず、労働基準法に定める変形労働時間制度の要件にも合致していなかったとのこと。


変形労働時間制度を採用するには、ザックリと以下3つの条件が必要です。

1、雇用契約書や就業規則で変形労働時間制度を採用している点について書いている。
2、変形労働時間制度について届け出ている。
3、制度をキチンと運用している。

という3点を満たしていると、正規の変形労働時間制度になります。


ただ、変形労働時間制度について雇用契約書や就業規則に書かずとも、変形労働時間制度を使えると勘違いしていると、トラブルなることもあるのですね。つまり、変形労働時間制度は労働基準法で決められている制度であり、デフォルトで使える(手続きなど無しで使えるという意味)と思ってしまうのでしょうか。

他にも、自社で変形労働時間制度を採用しているものの、届け出をせずに制度を使ってしまっている会社もありますね。これも、上記と同じような誤解に基づくものでしょう。






手続きがキチンとしていても、運用がキチンとしていないこともある。事前に決めた時間通りに勤務するのがキモ

書面に定めたり、届け出たり、という点で躓いている会社はそう多いわけではないでしょうが、キチンと運用しているかどうかという点で躓いている会社は多いだろうと私は思います。

変形労働時間制度の一番のキモは「運用」であって、変形労働時間制度の採用が否認されるとすれば、この運用の部分ではないかと思います。

おそらく、変形労働時間制度を採用している会社(1ヶ月単位の変形労働時間制度を想定)では、「1ヶ月の労働時間の総枠を計算し、その総枠の中で日ごとの勤務時間をやりくりすればよい」と考えて、労働時間を変形させているはず。つまり、今日は仕事が少ないので5時間で終わり、今日は忙しいので9時間まで勤務、今日もちょっと仕事が多いので8時間30分まで勤務、というように、"日ごとに弾力的に勤務時間を変形させるように"変形労働時間制度を運用しているのではないでしょうか。

端的に言えば、「日ごとの仕事の都合で、コロコロと勤務時間を変更するような変形労働時間制度」のことです。

これはアウトなのです。


変形労働時間制度は、"事前に"日ごと及び週ごとの勤務時間を決めて、その決めた勤務時間に従って勤務しなければ、変形効果が認められないのですね。

つまり、この日は8時間勤務と"事前に"決めた日に、1時間超過して9時間勤務になると、1時間は法定外の勤務になるわけです。たとえ、1ヶ月の労働時間の枠内でやりくりされていたとしても、時間外の勤務なのですね。

他方、この日は9時間勤務と"事前に"決めている日に、9時間勤務しても、これは時間外勤務にはなりません。もちろん、8時間の勤務でも構いません。9時間までは法定内の勤務時間ですからね。


1週間単位でも同様です。

この週は40時間と"事前に"決めている週に、42時間勤務すると、2時間分は時間外の勤務です。ここでも、たとえ、1ヶ月の労働時間の枠内でやりくりされていたとしても、時間外の勤務なのですね。

他方、この週は45時間と"事前に"決めている週に、42時間勤務しても、これは時間外の勤務になりません。週45時間までは法定内の時間ですからね。


ゆえに、仕事の内容や会社の都合で、流動的に勤務時間をコロコロと変更するのは、変形労働時間制度の運用方法として間違っています。

「要するに、労働時間の総枠の中でやりくりすればいいんでしょ」と思っている人は、おそらく上記の間違いに陥っているかもしれません。


変形労働時間制度では、「労働時間の特定」という点は重要な要素であり、この要素を欠落させてしまうと、変形労働時間制度が否認され、原則の労働時間枠(1日8時間、1週40時間)が適用されるので、未払いの時間外勤務手当を支払うことになるでしょうね。






変形労働時間制度を導入すれば労働時間に対する制約がなくなるわけではない

そうは言っても、「事前に勤務シフトを予測することは難しいのではないか?」と思う人もいるはず。

確かに、変形期間が開始する前に、日ごと及び週ごとの勤務時間を特定していないといけないのですから、1ヶ月単位の変形労働時間制度ならば、1ヶ月分の勤務シフト(1日8時間、1週40時間を超えるシフトも含む)を予測して決めなければいけないはずです。

ましてや、時間外の勤務が発生する日や週を予測するのは容易ではないはずです。


それゆえ、変形労働時間制度は、法定時間を超える勤務を含むスケジュールを事前に予測しやすい業種や会社に向いている制度なのですね。

上記で引用したような飲食店では、日ごと及び週ごとの繁閑の差が大きいですから、変形労働時間制度は合わないのです。

「日ごと及び週ごとの繁閑の差が大きいからこそ変形労働時間制度を使いたい」という思いはあるかもしれませんが、適正に運用するのは困難です。

ただ、小規模な飲食店ならば、1週間単位の変形労働時間制度を使うとうまくいくかもしれません。1週間単位の変形労働時間制度は、別名「非定型的変形労働時間制度」と呼ばれており、「労働時間の特定」についての規制が緩い制度です。



時間で労働を測定するのが労働基準法ですので(私はこの価値観があまり好きではない)、たとえ変形労働時間制度といえども、そう簡単に労働時間による制約から解放することはありません。

労働時間を変形させるといっても、労働時間の総量が増えるわけではなく、例えて言うならば、「労働時間のポートフォリオを組み替えるもの」ですから、結局は労働時間による制約は受けるわけです。


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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
  • Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
  • Q:残業しないほど、残業代が増える?
  • Q:喫煙時間は休憩なの?
  • Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?

このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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