book332(始業前に移動したら、始業時間はいつになるの)




■移動前が始業時間? 移動後が始業時間?



一般的感覚では、家を出て、電車などに乗って、会社に着いて仕事を始めた時刻が始業時刻と考えられています。

これは何の疑問もない出勤の流れですよね。


ところが、会社に到着した段階で仕事を始めるのではなく、会社から現場に移動して、その現場に到着してから仕事を開始するという会社もあるのですね。

例えを出せば、会社に8:30に集合して、そこから現場に移動し、9:00から仕事を始めるというような状況です。

この場合、始業時刻は8:30でしょうか、それとも、9:00でしょうか。



「会社に到着した時点で、時間拘束が始まっているから、始業時刻は8:30だ」と考えるのか、

それとも、

「確かに、会社に到着したのは8:30かもしれないけれども、仕事を始めたのは9:00だろう。だったら始業時間は9:00だ」と考えるのか。

どちらでしょう。



会社に到着してから仕事を始めるのではなく、会社に到着した後に現場に移動してから仕事を始めると、いつの時点から仕事時間になるのかが今回のテーマです。







■どちらにも一理あり。どちらも答えになる。



結論を先に言えば、どちらも正解になります。


まず、「時間拘束が開始された時点を始業時刻」と考えるのは、労災の仕組みと整合させる点で好都合です。

労災かどうかを判断するには、業務上かどうかを判定しなければいけないのですから、会社に着いた時点で始業開始としておけば、労災事故が起こったときも判断がしやすいです。

ただ、「時間拘束の開始=就業開始」と考えるにはやや無理がありますよね。実際に仕事を開始していないのですから、ここで違和感を抱くのはもっともです。



一方、「実際に仕事を開始した時点を始業時刻」と考えれば、一般的な感覚に合いやすいです。

「仕事を開始した時間=就業開始」と考える方が通常の感覚からすれば自然ですし、仕事をした部分に対して報酬を払うという考えからも納得できます。

ただ、上記の例で、8:30の段階から実質的に仕事が開始されている可能性もあります。例えば、現場に行く前に現場で使う道具を準備するとか、安全具を装着するために着替えるとか、簡易ミーティングで現場での人員配置を再確認するなどのように「実質的に仕事を開始している可能性があります」ので、単に現場に着いた時点で就業開始と判断してしまうと不都合なこともあるでしょう。


ゆえに、移動前が就業開始であると考えるか、それとも、移動後が就業開始であると考えるかは、状況によって変わります。客観的に「この時点が始業時刻です」と示しにくいのが今回の事例です。

もちろん、移動前の段階でタイムカードを打刻したり、社員証をスキャンしたりすれば、その時点が就業開始時刻になるのでしょうけれども、タイムカードを打刻せずに現場に向かったりする会社もある(個別にタイムカードを作るのではなく、出勤簿などで管理する会社など)でしょうから、簡単に判別するというわけにはいかないのです。


要するに「実質的に仕事が始まった段階」を始業時刻とすれば良いのです。




山口正博 社会保険労務士事務所
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