book306(健康保険は「税」であって「保険」ではない)




■健康保険は保険らしくない。


健康保険は、「健康保険」という名称の通り、一般的には「保険」だと思われているフシがあります。

また、ほとんど全ての人が加入する共済のような性質も持っているとも言えますね。


ただ、「保険」という名称がついているものの、「保険らしさ」があまりないのが健康保険でもあります。

通常、保険というと、生命保険を思い浮かべます。

生命保険は、事故の発生率、死亡率、年齢、既往症の内容、健康状態によって内容が変わります。つまり、加入者の状態に合わせて内容を変えていくのですね。

一方、健康保険には、加入者の状態に合わせて内容を変えていく仕組みはほとんど無いのです。

所得に応じて自己負担割合を変えることはしますが、保険の利用状況や年齢、加入者の健康状態で内容は変わらないのですね。



■所得を考慮して、利用状況を考慮しない。


健康保険の仕組みには、「収入に応じて負担を決めるが、利用に応じて負担を決めない」という基本があります。つまり、利用実態を考慮しない保険なのですね。

通常、保険ならば、利用頻度や加入者の状態に応じて負担は変わるはずです。


若くて健康なので病気や怪我の状態になりにくく、そのため病院に滅多に行かない人は、負担が軽くなるのが保険です。

若くて健康なので病気や怪我の状態になりにくい人は、本来の保険だと負担は軽くなるのですが、健康保険では負担が多くなるのですね。

なぜならば、健康保険は、所得に応じて負担を変えるが、保険の利用状況に応じて負担を変えることはないからです。


となると、健康でも一律の負担なのですから、これは保険というよりも税と言うべきです。

税金は所得や資産に応じて課せられるものです。公的サービスを頻繁に使ったからといって、他の人よりも多くの税金が課せられることはないですからね。


中には、利用負担が軽いために、「使わなきゃソンだぁ~」と考える人もいます。

風邪薬を余分に貰ったり、湿布薬を袋一杯に貰ったり、イソジンを1本ではなく2本貰ったり、余分なことを求めてしまうのですね。



私は、病院が高齢者のカフェや集会所のようになっているのではないかと、思うこともあります。


おじいちゃんおばあちゃんというのは、妙に頻繁に病院に行くのです。


「どこいくの?」ーー「病院に行くのよ」

「明日は何か予定があるの?」ーー「ああ、明日は病院だねぇ、、」

「どこでお昼御飯を食べたの?」ーー「ああ、病院のレストランで食べたよ」

「横田さんとどこで会ったの?」ーー「病院だよ」

「暇だねぇ、、」「病院でも行こうか?」「よし、行こう、行こう」



もちろん、治療が必要で病院に行く人もいますけれども、そうでない人もいるのではないでしょうか。


ゆえに、健康保険では、利用状況を負担の仕組みに連動させて、「使わなきゃソンだぁ~」という気持ちにならないようにするのが良いのではないかと思うのです。

利用状況を負担に連動させて、その負担に耐えにくいと判断されたならば、そこで所得に応じて負担を変えたらいかがでしょう。利用状況を先に考慮してから、所得を考慮するという2段階ですね。


 

山口正博 社会保険労務士事務所
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