book299(複数の事業所での勤務時間を合算する--言うは易く行うは難し--)




■勤務時間の合算は理にかなっているが、、、。



突然の例示ですが、竹下さん(仮想の人物です)が、A会社である週に36時間勤務して、一方で、B会社で上記と同じ週に17時間勤務したとき、竹下さんは通算で週53時間働いたことになりますね。

では、この場合、竹下さんは法定時間外の勤務を行っているでしょうか。


ちなみに、法定労働時間は週40時間(例外44時間)ですよね。なお、竹下さんの業種は例外業種ではないとします。


竹下さんは週53時間勤務したので、「53-40=13時間」の計算上、13時間の時間外勤務をしたことになるのでしょうか。

それとも、

時間外の勤務はしていないのでしょうか。


どちらでしょう。


勤務時間を通算する方が理にかなっているように思えるのですが、、、








■公的な機関が情報仲介する必要がある。



答えは、後者です。

竹下さんは時間外の勤務をしていません。


ところが、「えぇ~、週53時間働いたのでしょう? どう考えたって時間外に働いているじゃないですかぁ~」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

確かに、合算で判断すると週53時間ですよね。

しかし、勤務時間を把握するときには、企業ごとに合算はしないのです。なぜならば、合算すると不合理だからです。



もし、勤務時間を合算したとすると、その時間外勤務の費用はA社とB社のどちらが負担するのでしょうか。


A社が負担するのでしょうか。

A社の経営者は、「えぇ~! 竹下さんの勤務時間は週36時間でしょう? 何で法定外の勤務になるのよ!!」と言うのではないでしょうか。


では、B社が負担するのでしょうか。

B社の経営者は、「えぇ~! 竹下さんの勤務時間は週17時間でしょう? 何で法定外の勤務になるのよ!! しかも、17時間しか働いていないのに、13時間分の時間外勤務っておかしいでしょう」と言うのではないでしょうか。


上記のように考えると、企業ごとに勤務時間を通算して、一方の企業に時間外勤務の負担を課すには無理があるのですね。


ただ、数年前から話されているSSN(Social Security Number)を導入すると、個人ごとに勤務時間を通算することも仕組み的には可能ですよね。

SSNを利用すれば、複数の事業所で働いていても、公的保険(雇用保険、健康保険、厚生年金etc)の内容を一元的に把握できるので、企業間で勤務時間を通算することも可能です。


しかしながら、勤務時間を通算して労働保険や社会保険に加入できるとしても、その負担はどの企業がするのかが難しいです。

勤務時間に応じて企業ごとに負担を配賦するような仕組みも考えることができますが、想像しただけで複雑な感じがします。


勤務時間を通算しようという試みは、「言うは易く行うは難し」の例の1つなのかもしれませんね。




山口正博 社会保険労務士事務所
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