book298(なぜ政府の健康保険ではなく健康保険組合を採用しているのか)




■あえて「組合」を選ぶには理由がある。


今現在、公的な健康保険制度には、「都道府県の健康保険協会による運営」と「各種組合による運営」の2種類があります。


前者は、以前、政府管掌健康保険(政管健保)と呼ばれていたもので、全国一律の運用を行ってました。その後、平成20年10月1日に、各都道府県の健康保険協会(以下、協会健保)による運営に変わりましたね。また、健康保険協会は全国にあり、全ての人を加入者にすることが可能です。


ところが、協会健保があるにもかかわらず、企業によっては健康保険組合を利用しているところもあります。

「他の人は協会健保なのに、なぜ自分の会社は組合健保なのだろう?」と思う方もいるかもしれませんね。


健康保険組合は、協会健保のようにメニューが1つしかないのと異なり、自社だけの健康保険組合がありますし、業界単位の健康保険組合もあります。


では、なぜあえて協会健保ではなく組合健保を採用しているのでしょうか。

すでに政府の健康保険が用意されているのに、わざわざ別の選択肢を選ぶ理由は何なのでしょうか。






■構成員を選ぶことができるのが組合の利点。



端的に言えば、「制度の構成員(被保険者のことです。また加入者とも言います)を選ぶことができる」のが健康保険組合の最大の利点です


政府の協会健保だと、構成員には色々な人が入ってきます。

若い人、中高年者、75歳以上の人(後期高齢者医療制度で分離されていますが、政府運営の制度なので含めています)、男性、女性(女性特有の出産も含む)、病気にかかりにくい人、病気にかかりやすい人、持病を持っていない人、持病を持っている人、などなど。

多種多様な構成員によって制度が運営されています。

健康保険は、病気にかかりやすい人が多くなると、利用者の負担が増します。一方、病気にかかりにくい人が多くなると、利用者の負担は軽減します。

つまり、支出が多くなると収入を多くしなければいけなくなり、支出が少なくなると収入は少なくて済むわけです。

これが健康保険の収支の仕組みです。


となると、協会健保の場合、凄い数の構成員ですから、個人や法人では収支をコントロールできないのです。


一方、健康保険組合だと、自社だけで組合を作ることができますし、また、業界単位で組合を作ることもできます。

その仕組みを前提にすれば、若い人(特に出産のない男性)、また、病気しにくい健康な人を主な構成員にすれば、健康保険の利用者負担を下げることができるのです。

保険料を下げたり、自己負担割合(もしくは自己負担額)を下げたりすることが可能になるのですね。


例えば、ベンチャー企業だと若い人が多いでしょうから、協会健保よりも健康保険組合に利点があります。ただ、ある程度の構成員が必要ですから、あまり小規模な企業だと組合を作ることができません。

一方、中高年層が多い会社だと、健康保険組合の利点は薄まってきます。年齢が高くなれば、怪我や病気をしやすくなりますから、制度への負担が増しますので、組合が持つ利点を享受しにくくなるのですね。


故に、健康保険組合は、制度の構成員を企業自らが選ぶ余地があるので、より有利なメニューを選択できる可能性がある、という点で選択されているわけです。



山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所