book296(なぜ中小企業には退職金共済が必要なのか)




■会社のお金は運転資金に使われる。


中小企業だと、退職金についてのルールは、あまりキチンと定まっていないのではないでしょうか。

「退職時には退職金を支給する」とか「退職時には一時金を支給する」という程度しか決められておらず、支給条件や支給される内容はサッパリ分からないこともあるはずです。

そんな会社がもし倒産すれば、退職金は会社ごと吹っ飛びます。


「退職金は賃金の後払いだ」と言ったところで、無い袖は振れないですから、やはり無いのです。


退職金のために会社はコツコツと資金を普段から積み立てている、と思っている方もいるのかもしれませんが、自主的に積み立てていることはほとんどないです。

積み立てているとすれば、外部の仕組みを使って積み立てているはずです。確定給付企業年金や確定拠出年金(厳密には会社が積み立ているのではないのですが、今回は含めて考えます)、生命保険、適格退職年金、中小企業退職金共済、キャッシュバランスプランなどがありますね。


では、なぜ退職金の原資を外部に振るのかが今回のポイントです。

つまり、自社で積み立てずに、なぜあえて外部に資金を用意するのかということです。






■会社の口座から退職金を隔離する。


例えば、キャッシュフローが安定しない会社だと、運転資金に困ることがあります。

キャッシュが尽きれば会社は終わりですから、運転資金が不足すれば資金調達をするわけです。

そんなとき、手を伸ばせば使える資金(積み立てている退職金)があれば、それを使いたくなるのが経営者の心情です。

キャッシュが尽きれば終わりという状況で、積み立てている退職金があれば、「退職金の支払いはもっと先だから、今使っても後から資金を戻せばよいだろう」と考えるのですね。

キャッシュアウトの時期が異なるならば、一時的に使っても大丈夫と思ってしまうのです。


ところが、資金というのは、「使うのは簡単だが、戻すのは苦労する」のが通例です。

例えば、給与を遅配するような会社が、積み立てている退職金の原資を運転資金に使えば、その資金を元に戻すことはまずないです。毎月の給与すら払えないのですから、退職金など望むべくもないです。


本来ならば会社のお金ではない資金を使っているのですから、退職金原資の運転資金への流用は一種の横領です。ただ、「退職時には退職金を支給する」とか「退職時には一時金を支給する」という程度のルールしかない会社だと、積立て資金の所有者は会社のままになるのでしょうから、横領にはならないのかもしれません。


そのような状況を避けるために、会社から分離して外部に資金を集めておくののですね。

例えば、小さな会社でも、中小企業退職金共済や建設業退職金共済を利用していれば、たとえ会社が無くなっても退職金は残ります。たとえ給与を遅配するような会社であってもです。

ところが、もし会社が積み立てる一時金だけを退職金の原資としていると、会社ごと退職金は消えてしまいます。

それゆえ、小さな会社はなるべく退職金共済を利用するのが良いのかもしれません。他には、確定拠出年金も使えると思います。


会社が退職金共済に加入していたために、会社がなくなっても退職金は残った人もいますからね。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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