book268(退職金が保護される度合いの違い)




■退職金の守備力はそれぞれ違う。


一般に、退職金というと、退職の時に一時金で支払われるものを想定するかと思います。

自己都合での退職や会社都合での退職、また定年での退職によって退職金は支給されます。


ただ、退職金といっても、内容によって守備力が違うのですね。

つまり、会社の経営に影響を受けやすい退職金なのか、それとも影響を受けにくい退職金なのかという違いです。前者の守備力は低く、後者の守備力は高いと私は考えています。


式で示すと、

「(弱)退職一時金 < 適格退職年金 < 確定給付企業年金 < 中退共、建退共、確定拠出年金(強)」

という順番になります。





■給付型の退職金や企業年金は会社とリンクしている。


「確定給付企業年金は保護されているので安全」と考える方もいらっしゃるのですが、確かに法的には保護されるようにはなっていますが、全額支給することまでは保護されていないのですね。

確定給付企業年金は、退職一時金や適格退職年金に比べて、よりキチンとした仕組みにはなっています。ただ、資金が積立て不足となると、追加で会社が資金を出さねばならず、その資金がキチンと出ない状況になると、支給内容も変わってしまうのですね。



どんなに法的な仕組みで保護されていたとしても、金に関しては「無い袖は振れない」わけです。

金というのは、持っていない人から取ることはできません。例えば、損害賠償請求でも、100万円しか支払う資力しかない人から1億円の賠償金を取ることはできませんからね。

今、JALが企業年金で困っているのは、確定給付型の企業年金だからです。

キチンと会社が企業年金の資金を出していける状況ならば、確定給付企業年金は良い制度になります。給付内容が確定しているのですから、受け取る方は嬉しいはずです。

しかし、キチンと資金を出せなくなり、給付内容の変更をしなければいけないとなると、困ってしまうのも確定給付企業年金の性質なのですね。資金が無くなれば、「確定給付」ではなくなるのです。

積立て不足だから資金を積み増さなければと思うが、そのための資金はない状況になっている会社もあるのです。



それゆえ、小規模な会社ほど、保護の度合いが強い仕組みを使うのが良いのでしょうね。中退共、建退共、確定拠出年金だと、万一会社が倒産したとしても、資金は分離されていますから拠出した範囲で受け取ることができます。

一方、確定給付の企業年金だと、積立て不足のまま会社が倒産すると、その不足状況は改善されませんから、想定よりも少ない企業年金を受け取るようになります。ただ、全額が無くなることはありませんので、その点は助かるのではないかと思います。


また、会社が独自に支払う退職一時金だと、倒産した時は退職金がないこともあります。

退職一時金は、退職者が発生する状況になってから資金をかき集めて支払う(退職金用の生命保険を解約したりする)のが通例でしょうから、退職金が支払えるかどうかはその時にならないと分からないのですね。たまたま資金が不足している状況だったりすると、退職金にも影響したりします。

退職金規程がなかったり、就業規則がなかったり、就業規則があったとしても退職金については書かれていないとか、「退職時には退職金を支給する」とだけしか書かれていないとか、そのような会社で退職金がキチンと支給されるかどうかは不透明です。


ゆえに、小さな会社では、なるべく会社と退職金の原資を切り離しておくのが良いと私は思います。30年先や40年先に会社がどうなっているかは誰にも分かりません。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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