2009/10/9【交通費の過払い返還は簡単とは言えない】




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■交通費の過払い返還は簡単とは言えない◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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不当利得だから返還、、、と簡単にいくかどうか
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■過小払いよりも過払いの方が厄介。


通勤のときには、電車やバス、人によっては新幹線を使う方もいるでしょうか、自家用車で通勤する方もいますね。

このように何らかの交通手段を用いる人に対しては、交通費が支給される会社が多いですよね。全額支給、部分支給、区間支給、排気量支給、燃料費区分支給、などなど支払い方法は会社により変わります。

交通費を支払っている会社に起こるトラブルとしてあり得るのが、交通費の「過払い」と「過小払い」です。

本来、交通費は必要な範囲で支給されるのですが、何らかの手違いや手続きの漏れにより、余分に支払われたり少なく支払われたりすることがままあります。


例えば、過小払いならば、社員さんから申し出があるでしょうし、会社の資力ならばすぐに支払いもできるはずです。何より、社員さんがすぐに気づいて申し出るでしょうから、交通費の過小払いが問題になることはほとんどありません。


しかし、過払いとなると立場が逆転します。つまり、会社よりも資力が劣る社員さんが支払う立場になりますし、また、会社の担当者が過払いに気づいていないこともあるでしょう。本当は過払いになっているのに計算は正しいと思い込んでしまっているような状況ですね。

さらには、社員さんが交通費の過払いに気づいていながら会社に申告していないのかもしれません。人というのは、少なく受け取るとその状態を修正しようとするのですが、多く受け取ると必ずしも修正するとは限らないのですね。

例えば、釣り銭の受け渡しを考えると、自分が受け取る釣り銭が少ないと「これ、間違っているんじゃないですか?」と申し出るはず。しかし、受け取る釣り銭が多いと、「おっ!ラッキー。100円余分に釣りを貰ったゼ」と思い、そのまま懐に格納してしまうこともあるでしょう。ちなみに、これは刑法ではいわゆる釣り銭詐欺なのですが、実際に発生しても発覚は、、しないでしょうね(笑)。


話が脱線しましたが、要するに、交通費が過払いになると問題が深くなるということです。






■「会社の落ち度」と「社員の落ち度」のバランス。


今回の問題は、単純に考えると、「過払いによって得た金銭は不当利得だから返還せよ」と会社は社員さんに言うことができそうです。

実際に、ほとんどの方が民法上の不当利得(703条)で対処しようと考えます。

確かに、不当利得の構成要件は満たしていますから、不当利得から切り込んで解決するのは妥当な対応策です。


ただ、「単純に考えることができる」からといって、必ずしも「簡単に解決できる」わけではありませんよね。

「言うは易し、行うは難し」という言葉もありますから。


もし交通費の過払いが発生したとして、その原因はどこから生まれたのかを考えると、必ずしも不当利得だけで解決できるとは考えにくいのですね。

例えば、会社が交通費調査をしていなかったとしたらどうでしょうか。きちんとした会社だと、半年や1年に1回の間隔で交通費の現況調査をします。この調査では、自宅から職場までの通勤経路を地図で書いたり、電車を使うならば何線の何駅から何駅まで利用しているとか、バスも電車と同様に、どこのバス会社でどこの乗り場からどこまで乗ったかを書いたり、といちいち書面に記していくのですね。

過払いトラブルが発生したときは、この交通費調査を会社が定期的に行っていたのかどうかも考慮すべきではないでしょうか。

もし定期的に調査をしていれば、長期間にわたる過払いは発生しないはずですよね。6ヶ月単位で調査をしていると仮定するならば、6ヶ月を超える過払いは発生しないというわけです。にもかかわらず、6ヶ月を超える(2年とか3年とか)交通費の過払いが発生したとしたら、不当利得だけで解決するのは難しいのではないでしょうか。



他には、会社の事務担当者が間違っていたような場合も有り得ます。

例えば、通勤経路が変わって、その変更内容を会社に申告したにもかかわらず、変更内容が反映されていなかったとしたらどうでしょうか。

以前の通勤経路だと月8,000円だったけれども、変更後は月3,000円になっていたとして、変更内容が反映されないと、月5,000円が過払いになります。


この状態を修正するために、「通勤経路を変更したのですが、交通費の計算が間違っていませんか?」と社員さんが事務担当者に確認したとして、事務担当者が「いいえ、間違っていません。これで合っています」と答えたとしたらどうするでしょうか。

社員さんは間違っていると考えているけれども、会社の担当者は正しいと考えている。それゆえに、本来の状態に修正されないままに時間が経過した、、、。

その後、2年ぐらい経過して(交通費は過払い状態で支払われていると仮定)、「交通費が過払いになっていたので返還して下さい」と会社から言われたらどう思うでしょうか。

あなたが社員の立場ならばどう思うでしょうか。

「不当利得だから全部返そう」と素直に思えるでしょうか。


原因を作ったのは会社であり、会社には落ち度があるわけです。となると、ホイホイと不当利得と言って、返還せよというわけにはいかないでしょう。ただ、社員さんも過払いに気づいていたとも言えますから、この点についても斟酌しないといけないはずです。しかしながら、会社が正しいと言っているのに、社員さんがそれ以上に突っ込んでいくこともできなかったはずですから、この点も考慮する部分になりますよね。





■会社の過失を考えずに全額返還を求めるのはヘンです。


もちろん、会社による不当利得の主張は正しいことですし、"法的には"マトモなことを言っています。

しかし、法的にはマトモでも、常識的にはマトモではないですよね。

交通費が過払いになるということは、何らかの手違いがあったからです。

では、その手違いはどこから生まれたのか。その点を考えずに、単に不当利得だから全額返還せよというのは強引に過ぎるのですね。


会社側の落ち度を考えれば、定期で交通費調査をしていなかったり、事務担当者が間違った案内をしたり、交通費の計算を間違えていたとかがあります。

もちろん、社員側にも落ち度があるかもしれません。知っていてそのままにしたとか、通勤経路が変わったのに申告しなかったとか、自転車で通勤しているのに交通費を貰っているとか。



たとえ過払いになっても、金額が少なければ解決は容易です。合計で5,400円とか、27,600円とかだと、一括でも返還できるはずですからね。


しかし、46万円とか、67万円というように過払い額が高額になると、簡単には返済できないでしょうから、今回のように会社の落ち度も考えなければいけなくなるわけです。

もし交通費の過払い額が大きくなったならば、過払い額の減額や分割返還の手段を会社から提示することで、早く解決するのが良い方法だと私は思います。




┏━━━━━━━━━━☆★ 編集後記  ★☆━━━━━━━━━┓


「すみません」という言葉は、考えれば考えるほど意味深長な言葉です。

そのまま解釈すると「謝る」という意味なのでしょうが、実際には謝る場面以外にも多用される。

部屋に入るとき、人とすれ違うとき、人に飲み物を出すとき、何か物を動かすとき、、、などなど。

何かアクションを起こすたびに「すみません」と言う人もいるぐらい多用されていますね。

おそらく、日本人以外の人が最も理解しにくい言葉は「すみません」だと私は思います。

make,get,takeなどよりも手強いはず。



では、失礼します。すみません(笑)。


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