book190(給与の前借りは前借金なのか?)





■前借りの給与を、後日の給与から天引きする。


人によっては、今月は財布の中身がピンチなので、会社に申し出て、次に支払われる給与から前借りすることがあるかもしれませんね。

「今のままだと家賃の支払いができそうにないので、次の給与から3万円だけ前借りしたいんですけどぉ~」と会社の上司や社長に申し出て、「仕方ないなぁ、、」と前借りすることも時にはあるのかもしれません。

このとき、「前借りの分は、次の給与から天引きするから」と会社から言われるはずです。


ただ、借金を次の給与から天引きすると、労働基準法17条と衝突する可能性があります。


第17条(前借金相殺の禁止)
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

となると、「前借り給与を次の給与から天引きするのはダメなんじゃないか?」とも思えますよね。


しかしながら、一方で、「たった3万円の前借りだし、利息も加算しないし、長く債権・債務の関係を継続させるのではなく、次の給与で清算してしまうのだから、差し支えないんじゃないの?」と判断することもできます。

確かに、どちらの意見にも一理あります。

では、どちらがより妥当でしょうか。






■判断基準は「総合的」に。


結論から言えば、後者の判断が妥当です。

17条の前借金相殺の禁止というのは、貸付の原因、貸付の期間、金利の有無、勘案すべきその他の事情を基にして、総合的に判断するのが通例です。

「借金の返済をするために、労働することが条件になっていない」ならば、17条とは衝突しないわけです。


17条と衝突する場面というのは、例えば、女性が高額の借金を負っていて、その利息も相応のものになっているとき、その女性の借金を返済させるために風俗店で働かせるという状況が好例です。

ときには、風俗店と債権者(女性にお金を貸している人)がつながっていたりします。

つまり、知り合いの店で働かせて、自分が貸したお金を回収しようという試みですね。


こんな状況ならば、まさに17条に反すると判断できるわけです。


しかし、今回の例のように、家賃の支払いのために3万円を前借りするという状況で、なおかつ利息も不要であり、貸し出し期間も短いならば、17条に抵触するとは言えません。


ただし、「給与の前借り=いつでも可能」と考えるのは間違いで、事情を勘案して可能かダメかを判断するものですから、直線的に可能と考えると支障が出ることもあります。


 

山口正博 社会保険労務士事務所
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