book147(時季変更権の「強さ」はどれくらい?)



■強いのか、弱いのか。


ご存知のように、有給休暇に対して会社は「時季(「時期」ではない)を変更する権利」を持っていますよね。


ただ、労働基準法(39条4項)を読むだけでは、時季変更権がどの範囲まで使えるのかが分かりませんね。



時季を変更するように要望するだけに留まる弱い権利なのか、

それとも、

強制的に変更させるぐらいの強い力を持っているのか。


どちらでしょうか。



考え方によっては、会社の都合の良いように時季変更されてしまう可能性があるわけです。

しかし、これでは社員さんは困るわけです。

何らかの基準が欲しいところですよね。






■基準が無い。


時季変更権の性質は、端的に言えば、「必要な範囲で有給休暇の取得時季を変更できる」というものです。

ただ、この「必要な範囲」というのがくせ者ですよね。

繁忙期とか決算期とかが該当するのでしょうが、それでもアバウトです。


会社が理屈をこねれば、何でも必要な範囲であると解釈できてしまいますからね。

社員さんとしては、権利行使のための基準が無いから困るわけです(基準があれば社員さんも納得できるはずです)。



そこで、私は、「時季変更権を就業規則などで制約する」のが有効だと考えています。

法律(労働基準法)で具体的に決めていないならば、就業規則や労働協約で自主的に決めるのが良いでしょう。

ちなみに、労働法の世界では、労働者の権利を制約したり侵害したりすることに対しては制約がありますが、会社の権利を制約することに対しては特に制約はありません。

そのため、時季変更権を何らかの方法で規制しても、労働基準法としては支障がないということです(労働基準法は、言い換えれば「労働者保護法」ですからね)。




例えば、制約の具体例としては、、、


「時季変更は休暇が始まる1週間前までに行う」という制約するとか、

「時季変更が可能な月は、7月と12月だけ(盆暮れの時期に限定)とします」という制約をするとか、

「社員さんにとって特別なイベントを列挙(結婚、その翌日。葬式、初七日まで。)して、そのイベントの時期は時季変更をしません」という制約をするとか、


などなど、色々あります。



このように時季変更権の使用範囲を限定すれば、時季変更権が見えやすくなりますし、何より社員さんにとって「目安」ができあがります。


「時季変更権を暴走させない」ための仕組みというのは、意外と大事ではないでしょうか。


山口正博 社会保険労務士事務所
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