book 12(フルコミッションの雇用契約)





■完全出来高払いというのは、1件成約あたり、○○%の報酬という働き方のことです。
営業職などでは、少なからずあるようです。

フルコミッション営業と言われることも多いですね。

やればやるだけ報酬が増えますので、デキる人にはこの上ないシステムなのかもしれません。
現に、完全出来高払いで人材を募集したり、その仕組みで働いたりする人はいます。




■では、営業は全てフルコミッションとするのは可能なのかどうか。

労働基準法では、生活に必要な限度での賃金(生活保障給というもの)は支払わなければいけない。
つまり、完全歩合給を採用するとしても、一定程度の固定的な給与は支払わなければいけないとされているのですね。

ですが、何が何でもダメかというと、そうとも言い切れないんです。

当事者間で合意のもとに、完全歩合給での契約を締結したならば、その労働契約は有効と判断することも可能です。労働契約といえども、「契約」ですので、その内容は当事者が自由に決めることができます(契約自由の原則)。

もちろん、当事者の合意に錯誤(固定給があると思っていたのに無かった等)があるのでしたら、契約は無効です。

しかし、全く錯誤が無い状況で締結された雇用契約ならば、これは有効とすべきでしょう。




■別の点では、「労働基準法は強行法規であり、当事者が納得してもダメだ!」との解釈もあろうかと思います。

強行法規というのは、当事者の意思には関係なく適用される法律のことです。

確かに、強行法規という側面を強く意識すれば、上記の通りの解釈になりますね。
また、労働契約よりも労働基準法が優先されるという点についても、間違いありません。

しかし、当事者が納得の上に締結した契約ならば、当事者に不利益は無いはずです(強引に契約したものは、当然ながら有効ではありません)。さらに、不利益が無いならば、労働基準法で保護する理由もまた無くなるのではないでしょうか。また、公序良俗に反するとも言えませんし。

「完全出来高報酬ですよ」と会社が条件を提示して、「それで結構です」と求職者が納得したら、雇用契約は成立ですよね。

ただし、在職中に、固定給を廃止して成果給のみにするのはダメでしょう。明らかな不利益変更ですので、社員さんは納得しません。しかし、新規採用の段階で、完全出来高払いを提示するのはダメとは言えません。


「会社と社員双方の合意がある」「不利益も無い」
こんな状況ならば、わざわざ法律を使う必要も無いでしょう。

お互いにOKとしたことを、法律で無理やり引き裂くこともないでしょうからね。

山口正博 社会保険労務士事務所
大阪府大東市灰塚6-3-24
E-mail : mail@ymsro.com

© 社会保険労務士 山口正博事務所