book430(何度も雇用契約を更新すると、無期限の契約になるという理屈)
■更新するからこそ期間を設定している。
雇用契約を締結するときは、大きく分けて「期間を設定するもの」と「期間を設定しないもの」がありますね。
フルタイムで雇用契約を締結するときは期間を設定せず、それ以外の勤務形態ならば期間を設定するというのが主流でしょうか。
6ヶ月や1年と期間を区切って、その都度、更新のための雇用契約を新たに締結するのが期間設定型の雇用契約ですね。
ただ、期間を区切って雇用契約を更新していると、ある時点から「もう更新されるのが当然」と思ってしまうために、新たな更新時期が近づいてきて「次は更新しない」と言われると困ることもあるようです。
期間を設定した雇用契約を終了させるときは、通常の解雇の手続きとは違って、予告期間を設けたり予告手当を用意しない会社もあるようで、さらに困ったことになるのですね。
社員としては、「今まで何度も更新しているのだから、契約を終了させるならば解雇と同じ手続きが必要だ」と思うでしょうし、一方、会社としては、「期間を設定した契約なのだから、その期間が満了すればそのまま契約を終了できる」と思うでしょうね。
■更新すると、雇用契約は変質するのか。
もし、何度も更新すれば期間無しの雇用契約になるとか、最初の雇用契約を締結するときに「契約は自動で更新される」と言われていたとしても、契約が更新されることを確実にする要素にはならないのですね。
雇用契約の自動更新を会社が公言していたとしても、本当に自動更新されるかは、更新する段階にならないと分からないことでしょう。もし、契約時に自動的に更新されると言っていたならば、雇用契約に期間を設けなくてもいいはずです。自動的に更新することと期間を設定しないことの効果は同じなのですから、あえて期間を設定しているのに自動で更新することもないでしょう。最初から期間を設定せずに雇用契約を締結すればいいだけです。
にもかかわらず、雇用契約に期間を設けたということは、更新するかどうかは未定という意味が込められているのではないかと思います。自動的に更新するとは言ったものの、状況によっては更新しないこともありますよと解釈できます。
また、「期間雇用契約であっても、期間の定めのない雇用契約とみなされる場合がある」という理屈も、感情的には納得できるとしても、法的行為である契約の仕組みからするとヘンなことです。
つまり、期間を設定した雇用契約を何度も更新していると、ある時点で、期間が無期限に変わってしまうという理屈を通すとなると、契約を更新し続けると自然に契約内容が変わるということになりますよね。当事者の知らないところで、契約した内容とは違う内容に変わってしまうわけです。そもそも、「ある時点で〜変わってしまう」という流れがおかしいですよね。ある時点とは何時なんだと。
更新していると契約内容が変わるとなると、何のために期間を設定して雇用契約を締結しているのかという意味をなさなくなります。期間を設定するからには諸々の意図があるのかもしれませんが、いつの時点かで有期契約が無期契約に変わるという理屈は納得しにくいです。いつの時点で雇用契約が変質したのかが分かりませんからね。
いつの時点かで有期契約が無期契約に変わるという理屈を展開されてしまうと、企業は派遣社員を使うという選択肢を選ぶこともあるのかもしれません。
人材供給契約を終了させることは雇用契約を終了させることよりも容易です。社員との雇用契約を終了させる必要は無く(そもそも雇用契約が成立していないので、終了させることは不可能)、派遣会社との派遣契約(人材供給契約)を終了させるには予告や手当はいらない(契約を終了させるときは1ヶ月前に相手方に通知するという契約条項はあるかもしれないけれども)ですから、手続きが進めやすいのですね。
ゆえに、契約を更新し続ければ期間のない雇用契約になるとの理屈は通りにくいでしょう。
企業も、有期雇用契約を終了させるときであっても、解雇と同じ手続きを踏まなければ、雇い止めだと言われてしまうのでしょうね。
