あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

残業代が出る残業と出ない残業とは

相互理解

どの労働時間が残業になるのか

仕事をする前に、あらかじめ決めた制限時間なり労働時間を超えて働くと、残業になる。

では、夜の18時に仕事終わると予定していたところを、何らかの理由で19時まで仕事をしたとすれば、18時から19時までの1時間は残業です。

残業という言葉を使えば、それ以外に考えられない、1つしかないものだと考えてしまいがちですけれども、労務管理ではどの時間が残業なのかが人によって違うことがあります。

例えば、10時から17時まで仕事をするという予定で、業務に取り組んでいたところ、17時に終わらず、18時に終わったとすると、1時間の残業が発生したと言えるのかどうか。

10時から17時までは、いわゆる所定労働時間で、会社と従業員との間で決めた時間、それが所定労働時間。18時まで仕事をしたとすれば、所定労働時間を超えているので、残業が発生している、と言えます。

では一方で、法律には法定労働時間というものがあって、それは1日あたり8時間と設定されています。

1日の仕事の時間が8時間を超えると、法定労働時間の時間を超えて残業している、と判断できます。

この法定労働時間を基準にすると、10時から18時まで仕事をしたとしても、残業はしていないと言えます。8時間ぴったりで仕事を終えていますから、法定労働時間の枠である1日8時間を超えておらず、残業は発生していないと考えます。

所定労働時間を超えたら残業なのか。法定労働時間を超えたら残業なのか。人によって定義が違っていて、相手から残業について話をされても、すぐに理解できないこともあります。

会社と従業員との間に決めた所定労働時間を超えているから残業が発生した、と言っているのか。それとも、法定労働時間である1日8時間を超えているから残業が発生した、と言っているのか。

これは人によって違うところなのです。

1日8時間労働にすることによって、所定労働時間と法定労働時間を一致させている事業所もありますけれども、中には所定労働時間が7時間30分で、法定労働時間の時間は8時間という形で、両者の間の設定時間に差がある事業所もあります。

ですから、残業が、残業が、と言われても、詳しく話を聞かないと、本当にそれは残業なのかどうかが判断できないわけです。

残業と言うと、残業代がセットになりますけれども、残業代という言葉もまた人によって定義が違います。

 

会社の所定労働時間が7時間として設定されていると、それに対応して、法定労働時間も7時間だと判断してしまう方がいらっしゃいます。

つまり、この方は、「所定労働時間=法定労働時間」と考えているのですね。

確かに、会社員として勤務していると、所定労働時間とか法定労働時間という概念をきちんと理解するきっかけが無いので、ごちゃ混ぜになるのでしょうね。

しかし、固有の表現が用意されている以上は、固有の意味があると考えなければいけません。

それゆえ、所定労働時間と法定労働時間では、お互いに表現が違いますので、意味も異なるわけです。

どの賃金が残業代になるのか

仮に、1時間あたりの給与が1,000円だとして、残業割増率が25%とすると、割増賃金は250円。両方を合わせると1,250円。

では、どの数字が残業代なのか。

1,000円の部分が残業代なのか。
250円の部分が残業代なのか。
1,250円が残業代なのか。

単に残業代と表現された場合、何が残業代なのかを特定しないと、土台となる部分が異なったまま、話が進んでしまうことも。

割増賃金だけを指して残業代と言っているのか。基本部分の賃金と割増賃金、両方を含めた上で残業代と言っているのか。さらには、基本部分の賃金だけを指して残業代と言っているのか。

ここで分けただけでも3通りあります。


例えば、10時から17時までが所定労働時間だとして、実際には18時まで仕事をしたとしましょう(休憩時間の有無は考えないものとします)。

この場合、残業は発生しているのか、さらに、残業代は発生するのか。

所定労働時間を基準に判断すれば、17時から18時までは残業です。しかし、法定労働時間を基準にすれば、10時から18時まで働いたとしても、残業は発生していない。

所定労働時間を基準にしているのか、法定労働時間を基準にしているのか、まずここを明らかにしないと、どこが残業時間なのかが分からなくなります。

10時から18時まで働いたとして、17時から18時までの1時間に残業代は出るのかどうか。

所定労働時間を基準にすると、残業は発生していると判断できますが、この場合の残業代はいくらか。

一方、法定労働時間を基準にすると、残業は発生していないのですから、残業代は無いのか。

17時から18時の1時間、この残業代というものが、どの数字を指しているのか。1時間分の給与が1,000円だとして、割増賃金の割増率を25%とすると、17時から18時までの残業代はいくらなのか。

17時から18時までは働いているので、まず1,000円の基本部分の給与は必要です。

では、割増部分の250円はどうするのか。割増賃金を付けるかどうかは、法定労働時間を超えて働いたかどうかで判断するものですから、10時から18時だと、8時間を超えておらず、割増賃金は不要となります。

「17時から18時の1時間に、1,000円の給与が出ていれば、それが残業代だ」と考えるのか、「割増賃金が付いていないならば、それは残業代じゃない」と考えるのか。ここで判断が分かれます。

何を基準に残業かどうかを判断しているのか。
何を基準に残業代かどうかを判断しているのか。

残業に関する話をするときは、ここを明らかにしておかないと誤解が生じて、お互いの話が食い違うことがあります。

所定労働時間とは、「会社が決めた勤務時間」のことです。

一方、

法定労働時間とは、「法律が決めた勤務時間」のことです。

また、法定労働時間にはきちんとした枠があり、「1日8時間、1週40時間(例外で44時間もある)」が固定の時間枠です。

この時間枠は、会社の都合で変動させることはできません。

ちなみに、変形労働時間制度を利用すると、この法定労働時間の枠を上下に変動させることができます。

例えば、1週48時間とか50時間に設定することも可能になります(この場合の48時間や50時間は、「法定内」の勤務時間になります)。

端的に言えば、「法定の時間枠を融通する」のが変形労働時間制度ですね。

他方、所定労働時間は、法定労働時間を上限として、会社が任意に時間枠を設定します。

例えば、1日8時間でも良いですし、1日7時間でも良いですし、1日6時間30分でも良いわけです。

中には、法定労働時間を超えて、所定労働時間を1日10時間に設定するなんていう事業所もありますが、それはそれで有効ですけれども、所定労働時間は法定労働時間の枠内で設定するケースが多いです。

そのため、所定労働時間の7時間を超えたとしても、法定労働時間を超えたことにはならず、時間外の勤務(法的な意味での残業)にはならないのですね。


所定労働時間を超えたから時間外勤務なのではなく、法定労働時間を超えたら時間外勤務として扱うのです。

決まった日以外に勤務したら時間外(残業)ですか?

月、火、水、木の週4日で勤務するパートタイム社員さんがいる(月~木の週4日で契約を締結している)と仮定してみましょう。

また、1日あたりの勤務時間は6時間として、この社員さんが急遽(あくまで臨時であり、今後も金曜日に働くというわけではない)金曜日も勤務することになったとき、時間外の勤務、つまり残業になるのでしょうか。


つまり、月~木が勤務日なのだから、それ以外の日に働くと時間外の勤務になるのではないかということです。指定日以外に働くと残業と考えていいのかどうか。ここが疑問となります。


確かに、金曜日に働くのは「契約外の勤務」ですが、「時間外の勤務」や「残業」とまで言えるのでしょうか。


会社の事務を担当していると、「決まった曜日以外に社員さんが働くと、何らかのフォローが必要なのでは?」と思う方もいらっしゃるようです。

確かに、予定外の勤務に対してフォローが必要だと思うのは自然なことですから、金曜日を時間外の勤務として扱い、割増賃金が必要なのではないかと考えるのも不自然ではありません。


しかし、「予定外の勤務=時間外の勤務」と考えてしまうのは正確なのでしょうか。

時間外なり残業と判断するには条件がある

時間外の勤務を判断するときは、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という原則があります。

この原則を把握しているだけでも、大きく間違えることはなくなります。


先ほどの例にあてはめてみると、月~木で週4日ですから、勤務時間は合計で6時間×4日として1週24時間です。

そこに追加で、金曜日の勤務時間(この日も6時間勤務と考える)が加算されますので、総計で1週30時間の勤務時間です。


となると、1週40時間を超えていませんから、金曜日の勤務は時間外の勤務にはならないのですね。この場合、通常の賃金で足り、割増賃金は必要ありません。

ゆえに、時間外の勤務を把握するときは、「契約外の勤務=時間外の勤務」ではなく、契約外の勤務かどうかにかかわらず、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)を超えて勤務しているかどうか」で判断します。

【法律違反じゃないゾ】残業代が出ない残業もある

決まった時間内に仕事が終われば、
それはそれで結構なこと。

しかし、

何らかの理由、
業務上の都合によって、

決まった時間内に仕事が
終わらないときもあります。


終業時刻を過ぎて仕事をすると、
それは残業になりますよね。


残業をすれば、残業代が出る。

そう思っている方も多いはず。

残業代が出る残業と残業代が出ない残業

残業には2種類あります。


それは、

【残業代が出る残業】

【残業代が出ない残業】

です。


ちなみに、ここで言う残業代とは、

「時間外労働に対する割増賃金」を意味します。

1日8時間までが法定労働時間で、
この時間を超えて働くと、

「時間外労働」となるわけです。

「残業代が出る残業」とは?


では、まず、

「残業代が出る残業」から説明しましょう。


10時に始業で、20時が終業時間となっているとします。
加えて、途中に1時間の休憩が入ります。

この場合、労働時間は9時間です。

 

1日8時間の法定労働時間を超えているため、
8時間を超過した1時間分が時間外労働となります。

この1時間に対して、
割増賃金である残業代(25%以上の割増)が付きます。


これが「残業代が出る残業」です。

「残業代が出ない残業」とは?

次に、「残業代が出ない残業」を説明します。


残業代が出ない残業と聞くと、

「サービス残業じゃないのか?」
「賃金未払いでは?」
「違法行為だろう」

と反応しがちですが、


「残業代が出ない残業」は現実にあり得ます。

 


例えば、

10時から18時までの勤務シフトだとして、
途中に1時間の休憩を入れたとしましょう。

この場合、労働時間は7時間ですよね。

 

そこで、何らかの理由で、
仕事が終わる時間を19時まで延長したとします。

つまり、18時から19時まで、1時間の残業です。


では、
この1時間に対して残業代が出るのかと言うと、

出ません

 


誤解のないように書くと、

給与はもちろん出ます。

18時から19時までの給与は出ますが、
この1時間に対する割増賃金は出ないんですね。


何故かと言うと、

1日8時間の枠を超えていないから。

法定労働時間の8時間以内ならば、
割増賃金は出ない。

ゆえに、

「残業代が出ない残業」となるわけです。

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決まった時間を超えたから残業代が出る、わけじゃない

仕事が終わる時間を超過したら、
それは確かに残業です。


ただ、残業ではあるのですが、

残業代が出るかどうかは、

【8時間を超えているかどうか】
で判断します。


7時間の勤務シフトが
8時間に延長されたとしても、

それは残業にはなりますが、

割増賃金である残業代は付きませんので、
誤解されぬように。

休業中に収入が減ったら社会保険料も減る?

保険料決定

 

 


社会保険料は、標準報酬月額を基準にして決まり、標準報酬月額は報酬月額を基準にして決まります。報酬月額は、簡単に表現すれば毎月の収入のことです。

毎月の収入にあたる報酬月額から標準報酬月額という数字を出して、その標準報酬月額に保険料率を掛けると、社会保険料の数字が分かるわけです。

「収入 × 社会保険料率」で社会保険料を計算しているわけではなく、標準報酬月額という数字を間に入れて、保険料を等級方式にすることで被保険者の社会保険料を管理しているのです。

これらの数字の関係については、健康保険料の一覧表を見ていただいて、毎月の収入を当てはめると、標準報酬月額や社会保険料の額が分かるかと思います。

 

 

休業で会社を休んでも社会保険料を支払う必要がある

収入に連動して支払うのが社会保険料の特徴ですが、病気や怪我で仕事を休んだ場合、その期間の収入は無いので、社会保険料も少なくなるのかどうか。


例えば、胃腸炎で1ヶ月、仕事を休んだらどうなるか。他にも、インフルエンザで1週間、仕事を休んだら。骨折で3ヶ月、仕事を休んだらどうか。

「そりゃあ、日割りなり月割りで社会保険料も少なくなるんでしょ?」と思う方もいらっしゃるはず。1ヶ月休めば、1ヶ月分の社会保険料がゼロになり、1週間休めば、7日分だけ社会保険料が少なくなる。そう思いますよね。

しかし、社会保険料というのは、毎月、固定されていて、病気や怪我で休んでも少なくはならないんですね。休んだからマケてくれるなんことはない。

ちなみに、雇用保険は、実際に支払われた毎月の給与に応じて計算されるので、保険料は毎月、変動します。給与明細を見ると、雇用保険料は小刻みに増減しているのが分かるはずです。

一方、社会保険料は固定されており、給与明細を見ても変動は無いはずです。社会保険料には、年に1回、保険料を算定する手続きがあり、その手続でもって保険料が決まります。算定基礎届という書類に収入を記載して届け出ることで、向こう1年間の社会保険料が決まるのです。

算定基礎届の提出|日本年金機構


ゆえに、仕事を休んで収入が無くても保険料を支払うわけです。ちなみに、保険料の半分は会社が負担しますが、会社が負担する分もいつも通り会社が支払う必要があります。

「じゃあ、収入が無いのに保険料だけを支払うの?」と思うところですが、対処法はあります。

社会保険料を支払っているということは、健康保険に加入していますので、傷病手当金を申請できます。支給された傷病手当金を使って、社会保険料を支払えば、収入はマイナスにはなりませんよね。

また、傷病手当金を使えない場合は、有給休暇を使って、社会保険料の分の費用を捻出することもできます。


なお、産休時には「産前産後休業保険料免除制度」という仕組みがあって、社会保険料が免除されます。

産前産後休業保険料免除制度(日本年金機構)

産前産後休業期間中の保険料免除が始まります


さらに育児休暇中にも社会保険料を免除する仕組みがあります。

育児休業保険料免除制度(日本年金機構)


しかし、病気や怪我で休んだ場合には上記のような免除制度はありませんので、やはり傷病手当金や有給休暇で対処することになります。

 

 

収入が減っても社会保険料はすぐに減らない

収入に連動して社会保険料は決まるのですけれども、毎月の給与に連動しているものではなく、年に1回実施する「標準報酬月額の定時決定」で9月から翌年8月までの社会保険料が決まるのです。

毎年、7月になると、4月から6月までの収入を算定基礎届という書面で報告します。ちなみに、労働保険料も7月に概算保険料と確定保険料を算定する手続きがされます。

算定基礎届というものを提出して、収入を報告することで、標準報酬月額という数字が決まり、その標準報酬月額に対応する形で毎月の社会保険料(厚生年金保険料と健康保険料)が決まります。

仮に、社会保険料が30%だとすると、月収50万円なら、社会保険料は24万円。厳密には月収ではなく、先程書いたように標準報酬月額を使って社会保険料は決まりますが、あえて月収のままで表記しています。

ここで、何らかの理由で、月収が半分の25万円になったら、社会保険料も半分になるのかというと、そう単純ではないのです。一時的に収入が減っても、社会保険料はそのままで、25万円の月収で、社会保険料が24万円なんてことも起こりえます。社会保険料を引くと、月収が1万円になるわけです。

普段は手取りの月収が26万円(ここでは税金や雇用保険料を考慮しない)の人が1万円に変わってしまったら、これは生活できませんよね。

急に収入が減ったときには、社会保険料もそれに連動して減ってもらわないと、手取りの収入が少なくなってしまい困ります。そのような場合に、標準報酬月額の随時改定という制度があるのですが、通常の随時改定だと、収入が減ってから3ヶ月後に標準報酬月額が変わり、社会保険料が下がっていくものですが、3ヶ月間も社会保険料が据え置きだと収入の減少に対応できません。

そこで、新型コロナウイルス感染症対策として、随時改定の特例が設けられ、収入に応じて、早い段階で社会保険料を改定できるようになっています。

 

 

7月の算定基礎届で標準報酬月額が変わるのかどうか

新型コロナウイルスを理由に、仕事が休業になった方もいらっしゃるかと思いますが、休業手当の支給率が100%であれば、収入が減ることはさほどないのでしょうけれども、それでも休業前に比べて少なからず変化があると思います。

通常時の報酬に比べて、休業中の報酬が少ないとなれば、社会保険料も減るだろう。そう思いますよね。収入に連動するのが社会保険料ですから、休業中に収入が減ってるなら、社会保険料もそれに連動して減っていくだろう、と考えるのが普通です。

4月、5月、6月の報酬を基準にして、7月に算定基礎届の手続きをして、標準報酬月額が決まり、9月以降の社会保険料も決まります。毎年、6月の下旬、給与の締日を経過してから集計作業をして、7月の初めに算定基礎届を出すのが通例です。

毎月の賃金に連動する雇用保険料と違って、社会保険料は年に1回の算定基礎手続きでもって決まり、保険料は原則として年間を通して一定です(随時改定という例外はあります)。収入の変動に関わらず、社会保険料はずっと同じなのです(原則として1年間は)。

4月と5月は、緊急事態宣言が発令されていて、地方自治体からも休業要請が出され、職場が休みであった方もいます。

その休みがゆえに、通常時に比べて報酬が下がっているわけだから、算定基礎届の手続きでも、報酬が減った月を含めて標準報酬月額を算出するのかどうか。それとも、休業手当を受けていた月を除いて、標準報酬月額を算出するのか。どちらの処理をしていくかによって、標準報酬月額は変わりますから判断に悩むところ。

日本年金機構の標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集によると、7月1日時点で、一時帰休、つまり休業が解消しているか、解消していないかによって判断が分かれます。

仮に、4月の報酬(余談ですが、社会保険では「報酬」、労働保険では「賃金」という言葉を使います)が減少して、標準報酬月額を随時改定するとしても、普段の制度だと7月に標準報酬月額が改定され、社会保険料も変わります。しかし、これでは遅いため、4月に報酬が2等級以上下がったときは、翌月の5月に特例で標準報酬月額を改定し、5月から収入に応じた社会保険料に変わるようにできるわけです。

3ヶ月ほど高い社会保険料のまま過ごす必要はなく、可処分所得の減りも抑えられますので、被保険者には有り難い特例です。

 

 

社会保険料が減ると健康保険や年金の給付も減る

社会保険料は安ければ安いほどいい。そう考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、社会保険料に連動して給付も増減するように設計されています。

社会保険料を削減する方法を教える方も世の中にいらっしゃいますけれども、事業所にとっては社会保険料はコストでしかありませんが、加入している被保険者にとっては、社会保険料の高さで給付額が決まりますから、闇雲に社会保険料を削減されると不利益になります。それゆえ、コスト削減を目的に、安易に社会保険料を削減するわけにはいかないのです。

例えば、病気や怪我で休む際の傷病手当金は標準報酬月額つまり社会保険料に連動していますから、社会保険料が減るということは、傷病手当金も減るという結果になります。

出費は社会保険料控除という形で税制面で優遇されていますし、さらに、保険料と給付と連動させることで、社会保険料を下げにくくしているとも考えられます。

つまり、社会保険料が多い人は給付も多く、社会保険料が少ないと給付も少なくなります。例えば、健康保険の傷病手当金は標準報酬月額に連動して支給額が決まります。また、産前産後休暇中に給付される出産手当金も傷病手当金と給付内容が同じですので、標準報酬月額に連動しています。あとは、厚生年金の給付額も標準報酬月額を積み重ねたものになりますから、社会保険料が下がると年金の給付も減ります。

このように不利益になる面があるため、今回の特例による随時改定を申請する場合は、被保険者本人の同意を取っておく必要があり(同意書を作って保存しておく)、事業所側で一方的に手続きをするわけにはいかないのです。

 

 

7月1日時点で休業が解消している、通常営業に復帰している

『7月1日の時点で一時帰休の状況が解消している場合の定時決定では、休業手当等を除いて標準報酬月額を決定する必要があることから、通常の給与を受けた月における報酬の平均により、標準報酬月額を算出する』

つまり、休業手当を受けていた月を除いて、算定基礎届を作成しますから、休業による影響の除いて標準報酬月額を算出していきます。


7月1日時点で休業が解消していない、まだ休業が継続している

4月、5月、6月に休業手当が支払われていたならば、その月も含めて、つまり休業手当を含めて算定基礎届を作成します。

つまり、休業中の報酬を基準に標準報酬月額を決めるというわけです。

7月1日時点で休業が続いているのか、それとも終わっているのか。ここが判断の分かれ目です。

すでに休業が終わっているならば、休業の影響を除いて社会保険料を決めますよ。一方、まだ休業が続いているならば、休業中の状況を織り込んで社会保険料を決めますよ。このような違いがあります。

 

特例で随時改定する場合は、休業で報酬が無い日も支払基礎日数に含める

随時改定をするには、1ヶ月あたりの報酬支払基礎日数が17日以上必要ですが、通常の随時改定だと報酬の支払いがない休業日は支払基礎日数から除くところ、特例での随時改定を実施する場合は、休業日に報酬が無くても支払基礎日数に含めることができます。

報酬が無い日を支払基礎日数を含めることができれば、1ヶ月あたりの報酬月額も下がりやすくなり、特例での随時改定を実施する要件である「2等級以上の報酬低下」という点をクリアしやすくなります。

 

 

標準報酬月額の随時改定が特例で迅速化。社会保険料を早く変更できるように

【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内

収入が減って、社会保険料が変わるまでには、しばらく時間が必要で、一定期間を経過してからでないと随時改定の手続きはできません。

例えば、4月に収入が減って、その期間が3ヶ月続き、4ヶ月目の7月から標準報酬月額が変わる。これが通常時の随時改定です。

収入が減ったからといって、それに連動して社会保険料がすぐに下がってくれるわけではなく、3ヶ月間は社会保険料がそのままになるのが本来の制度です。

上記の特例改定により、新型コロナウイルスを理由に休業し、報酬が2等級以上(健康保険料の一覧表で確認できます)下がった場合、下がった翌月に随時改定が特例で可能となっています。4月に休業によって収入が減って7月まで社会保険料が変わらないのが原則ですが、特例改定で5月から社会保険料を変更できるようになります。

従来の保険料のまま3ヶ月間待たないといけないのが随時改定ですが、特例での随時改定だと、4月に報酬が2等級以上減ったとすれば、翌月の5月から標準報酬月額を改定でき、社会保険料が変わります。

対象となる月は2020年の4月から7月(後述しますが、特例改定の対象期間が延長され、8月から12月も対象になっています。)ですので、4月以降の報酬が減ったとなれば、特例での随時改定の対象になる可能性があります。

ちなみに、会社から休業手当が出ない場合に支給対象となる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」を受給した場合、それは実際に支給された給与には含まれず、特例での随時改定を実施しやすい方向になるよう扱われています。

社会保険料が最も低くなる1等級の標準報酬月額は、健康保険では5.8万円、厚生年金保険では8.8万円です。この標準報酬月額で保険料を出すと、健康保険料が10%だと考えて、月額5,800円。厚生年金の保険料は18.3%ですから、月額16,104円。この保険料を労使で折半するので、本人の社会保険料は月11,000円程度。

毎月の報酬がほぼゼロだと、社会保険料は月11,000円程度まで下がるのです。

社会保険料を早く変更できるのが利点ですが、一方で、標準報酬月額が下がると、傷病手当金や出産手当金、年金の受給額も下がりますので、その点について被保険者からの同意を取っておく必要があります。

社会保険料を削減すれば、会社には利点がありますけれども、加入している被保険者本人には、給付なり手当の額が減るという副作用がありますから、どういう対処をするかは、その都度、考える必要があります。

一時的に、可処分所得の減少を回避できるという利点がある一方で、健康保険や年金の給付が減るという欠点があります。もし、現状で給付を受けていない被保険者ならば、前者を選択し、特例による随時改定で標準報酬月額を改定する方が合理的です。

被保険者の給付や手当に影響が出るという「人質」を用意しておき、簡単には社会保険料を下げさせないように仕掛けられているのですから、上手に制度が作られていると感じます。

 

 

追記(2020年10月21日)健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定が延長されました

新型コロナウイルス感染症の影響で、仕事が休業になり、毎月の収入が減った方に対して、社会保険料をそれに連動して下げていくという特例。

本来、社会保険料は、収入に連動しているものの、収入が減ったからといって、すぐに保険料も下がるというものではないのです。収入が下がった後、3ヶ月間の期間をおいてから、標準報酬月額を改定して、社会保険料も下がっていく、というのが通常の手続きです。これが標準報酬月額の随時改定という手続きです。

一方で、新型コロナウイルス感染症による影響への対策として設けられた標準報酬月額の特例改定では、その特例を利用すると、収入が下がった翌月から標準報酬月額を改定して社会保険料も下げることができます。

標準報酬月額の特例改定

日本年金機構ウェブサイトより

社会保険料が3ヶ月ほど高いままであるよりも、収入が下がった翌月から社会保険料が修正される方が支払う保険料を少なくできます。

労働基準法26条では、休業手当の支給率は60/100以上とされていますので、標準報酬月額が2等級以上下がる方もいらっしゃるはず。そういう方は今回の特例改定の対象者に含まれます。

その標準報酬月額の特例改定の対象となる期間が、以前は2020年4月から7月までだったところ、延長されて8月から12月までの期間も対象となりました(【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定が延長等することになりました 日本年金機構)。つまり、2020年12月末まで、休業で報酬が減った方は、標準報酬月額の特例改定を利用できる可能性がありますから、雇用調整助成金を利用するのと並行して、特例改定の手続きも行っていく必要があります。

休業する前の社会保険料だと、保険料が高いままになってしまうので、休業開始した後の収入を基準にした社会保険料に変えていって、妥当な水準に早い段階で保険料を修正することができるのがこの特例の特徴です。

社会保険料を変更するには、標準報酬月額を改定する申請手続きが必要ですから、何もせずにいると、社会保険料が高いままになってしまいますので、対象者がいる事業所では忘れずに手続きしたいところです。

社会保険料が下がるのは利点ではありますが、一方で将来に受け取る厚生年金が減りますし、傷病手当金の金額も下がりますので、特例改定を申請するには本人の同意を書面で取っておく必要があります。

 

 

 

追記(2021年10月1日)新型コロナウイルス感染症により収入が減った場合に、社会保険料を早い段階で改定することができる標準報酬月額の特例改定が延長されています

健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額の特例改定を延長等します

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標準報酬月額の特例改定について(厚生労働省)

標準報酬月額を特例で改定が可能な対象期間が2021年12月まで延長されています。

本来、社会保険料は、毎年1回、7月に提出する標準報酬月額の算定基礎届によって9月以降の1年間にわたって固定されます。これが社会保険料が決まる原則的な方式です。

新型コロナウイルス感染症による影響で休業が実施されたり、勤務時間が短縮、出勤日数が減り、こういった理由で収入が減った場合は、社会保険料もそれに併せて減って欲しいと思うのが加入者である被保険者の考えるところです。

収入に連動して決まるのが社会保険料ですから、収入が減ったら社会保険料も減るだろうと思うのが通常です。

しかし、一時的に収入が減ったとしても、社会保険料は1年間固定されるものですから、収入は減ったものの社会保険料は以前のまま、という状態になってしまいます。

つまり、収入が低くなって、社会保険料は高いまま、という状態が出来上がってしまう。これでは被保険者は可処分所得が通常よりも少なくなり、困りますよね。給与明細を見てびっくりするはず。

社会保険料を変更する方法としては、随時改定という方法もあるのですけれども、それよりも早く社会保険料を変更できる方法というのが、この特例改定です。

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随時改定と特例改定の違い(厚生労働省ウェブサイトより)

随時改定だと、4ヶ月目に収入に合わせた水準まで社会保険料が改定されるのですけれども、特例改定を利用すれば、収入が減った翌月から社会保険料はその時点の収入に合うような形で改定されます。

通常よりも早く社会保険料を下げることができるのが特例改定の効果です。

社会保険料を払っても構わないという場合は、改定手続きをせずに、そのまま加入し続けてもいいのですけれども、社会保険料をなるべく少なめにしたいという人の方が多いでしょうから、そういう方にはこの特例改定はありがたい制度です。

ぼーっと来年の標準報酬月額の改定時期まで待っていてもいいのですけれども、それだと社会保険料が高いままになりますから、収入に見合った社会保険料の水準になるように、この標準報酬月額の特例改定を利用するのがいいでしょう。

 

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健康保険料や介護保険料は毎年のように変わるものですから、保険料が変わったことを忘れて給料を計算してしまうことのないように、社会保険料を自動で計算してくれる給与計算ソフトを使うのがいいですね。

 

【妊娠中の休業】特別有給休暇で休む妊婦への助成金。休まない従業員への工夫がポイント

 

妊婦助成

 

 

妊娠中の女性従業員を雇用する事業主向けの助成金

助成金や補助金、給付金が次から次に作られていて、ついていくのが大変ですが、妊娠している女性従業員を雇っている会社への助成金も新たに設けられるとのこと。

2020年6月15日から申請の受付が開始され、『新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金』という名称となりました。

新型コロナウイルスを理由に、事業所を閉めて、従業員を休業させた場合は、雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を利用できますが、妊娠中の従業員を対象にした助成金は今までありませんでした。

第二次補正予算の施策内容に、『新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置により休業する妊婦のための助成制度の創設』と書かれており、これが妊娠している女性労働者向けの助成制度になるようです。

新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による 休暇取得支援助成金をご活用ください

新型コロナウイルスに感染する恐れがあり、それを理由に医師や助産師から休むように指導を受けて、会社が本人に特別有給休暇を取ってもらい休ませた場合は、この新しい助成金の対象になるというわけです。

ちなみに、妊娠中に感染したとしても、他の方と変わらないとされており、胎児への特別な影響があるとも報告されていないようですから、新型コロナウィルスを理由に特別有給休暇を取る、という流れがちょっと想像しにくいところです。

特別有給休暇を取るという点で小学校休業等対応助成金と似ていますが、妊娠している本人の健康状態によって休暇を取るかどうかが変わるのが両者の違うところです。

雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金、小学校休業等対応助成金は、休業手当に連動して助成額が決まるものですが、こちらの妊婦向けの助成金は、休ませた日数で助成額が決まります。

雇用保険に加入している妊娠中の女性従業員が対象で、主治医や助産師からの指導を受けて、対象者を特別有給休暇で休ませた場合、その日数に応じて助成額が変わります。

指導を受けてという点がポイントで、事業主と従業員の間で合意して特別有給休暇で休ませるのではなく、休む必要があるという指導が前提にならないといけないのです。

対象となるのは雇用保険に加入している人ですが、加入基準が緩いですから、パートタイムで働く方でも被保険者になっている方は多いのでは。

なお、助成金を申請するのは事業所で、本人が直接に申請する必要はありません。休業者支援金は本人が申請できるものですが、妊娠している女性従業員を対象にした助成金の方は事業所が申請の手続きをします。

2020年5月7日から2021年1月31日までが、妊娠中の女性労働者への措置が必要な期間で(助成の対象となる期間も同じ)、約9ヶ月あります。

5月7日から、妊娠中の女性労働者に対する措置を設けるよう求められており、その措置として対象者を特別有給休暇(法律に基づいて付与される年次有給休暇とは別枠で、賃金相当額の6割以上が支払われる休暇)で休ませた場合は、事業所が助成を受けられるというもの。この特別有給休暇の取得日数に事業所が制限を設けることはできず、月に5日まで、3ヶ月に15日までのように取得する日数に制限を課せません。

また、母性健康管理措置とあわせて、今回の特別有給休暇制度を労働者に周知する必要もあり、事前に準備していないと対応できない助成制度です。

妊娠中の女性労働者の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置が本日から適用されます

妊娠中の女性従業員がいない職場だと、母性健康管理措置そのものが知られておらず、何も対応をしていないところが多いのではないかと想像します。

この期間(2020年5月7日から2021年1月31日まで)内に、5日以上の特別有給休暇を取得させていると、助成対象になります。先ほども書きましたが、医師や助産師により休業が必要だと指導を受けているとの前提条件があります。休む必要があると指導があって、母健連絡カードにその旨が記載され、事業主が特別有給休暇で対象者を休ませる。このような順序を踏んでいく必要があります。

母性健康管理措置といっても、休むだけでなく、勤務日数を減らす、勤務時間を減らず、出勤時間帯をずらす、在宅で勤務できるようにするなど、他にも選択肢がありますから、狙って特別有給休暇を取るような流れに持ち込むのは簡単ではないように思います。

特別有給休暇で休んだ日数が5日以上20日未満だと25万円。
20日以上だと、20 日を超える20日ごとに15 万円を加算。つまり、40日で40万円、60日で55万円、80日で70万円、100日で85万円、120日で100万円。

1事業所あたり対象にできるのは20人までで、1人あたりの助成額が最大100万円です。もし、対象者が20人いて、それぞれで最大の助成を受けると助成額は合計で2,000万円になりますが、このタイミングで、妊娠している女性従業員がいて、特別有給休暇を取るように指導される条件まで付くと、あてはまる事業所はそう多くなさそうに感じます。

対象となる従業員は、雇用保険に加入している方だけでなく、雇用保険に入っていない方も含まれます。手続きは事業所単位で行い、従業員個人で申請するものではありません。

妊娠中の健康状態は個人差がありますから、約9ヶ月でどれだけ特別有給休暇で休むのかは実際に対象者が出てこないと分かりません。

とはいえ、9ヶ月で5日以上の特別有給休暇ですから、最大額まで助成される可能性は低くとも、最低額の25万円でしたら、該当する事業所も出てくるのではないかと。

1日分の特別有給休暇で1万円の賃金だとすると100日分になりますが、9ヶ月間で100日も休むほどの症状で、そのような指導が医師や助産師から出るのかどうか。ここは個人差が出てくるところです。

助成金の申請は2回以上に分けても構わないとのことですので、1ヶ月ごとに申請してもいいですし、2ヶ月分をまとめて申請という形でも可能です。助成金の支給が発生する日数に達したら申請する、という対応で良いのではないかと思います。約9ヶ月の期間分をまとめて1回で申請できますが、小刻みに助成金が入った方が良いでしょうから、2ヶ月か3ヶ月分をまとめるのが妥当なところかと。

 

 

母性健康管理措置を実施する必要がある

助成制度が開始されるのが6月の中旬だとして、5月7日からの約1ヶ月分はどういう処理になるのか気になるところです。

5月7日から、新型コロナウイルス感染症を理由に特別有給休暇を取らせて、妊娠中の女性従業員を休ませている事業所はあるのでしょうか。

リモートワークに切り替えた、年次有給休暇を取って休んで対処した、時短勤務、時差出勤を実施した、こういった方が主ではないかと思います。

2020年5月7日から、新型コロナウイルス感染症に関連して、妊娠中の女性労働者への母性健康管理措置を事業主が講じなければいけなくなりました。

妊娠中の女性労働者の新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置が本日から適用されます

ここで、母性健康管理措置とは何なのかが疑問に思うところなのですが、『妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針』には、母性健康管理上の措置として3つ書かれています。

妊娠中の通勤緩和妊娠中の休憩に関する措置妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置、この3つが母性健康管理措置です。

妊娠中の通勤緩和というのは、混雑した電車やバスに乗って、母体や胎児に影響があると担当医や助産師から指導を受けたときに、出勤時間をズラしたり、勤務時間を変える、勤務時間を短縮するなどの措置を指します。例えば、フレックスタイム制を適用した場合もここに含まれます。

妊娠中の休憩に関する措置は、担当している仕事が体に負担がかかるため、休憩時間を長くしたり、頻度を多くするよう指導を受けた場合に、それに応じて事業主が実施するもの。

妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置というのは、対象者への保健指導や健康診断で、仕事の内容に関し措置が必要だと担当医や助産師が指導した場合に、事業主が対象者を休ませるなどの対応をするもの。

母性健康管理措置とは、簡単に言うと、対象者にかかる負担を軽くする措置のことを意味するのです。

助成制度を利用するには、対象者を特別有給休暇で休ませる必要があるのですが、担当医や助産師の指導を受けて決めるものですから、事業主の一存で休ませると助成の対象にならないのです。

休む必要があるかどうかの指導がまず必要で、その診断内容が『母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)』に記載され、それを従業員が事業主に提示し、措置の内容を決めるという流れになります。

母健連絡カードとは、医師の診断書のようなもので、現場でも診断書と同じものとして扱われています。職場と母性に関する母性健康管理推進サイトにカードの説明が掲載されています。

この母健連絡カードの特記事項欄に、新型コロナウイルス感染症を理由に休業する措置が必要だと書かれていれば、事業主は特別有給休暇で本人を休ませることができます。ちなみに、母健連絡カードが作成されなくても、休業が必要だと指導を受けており、対象者に休暇を取得させた場合も助成の対象にできます。母健連絡カードは必須のものではないのですね。ただし、指導内容が分かる書類を添付する必要があります。

ただ、休業以外にも色々と措置があります(時短勤務、休憩時間を延長、配置転換など)から、本人の健康状態に関わらず、無条件で新型コロナウイルス感染症を理由に休業が必要だとは指導しないでしょう。

人と頻繁に接触する仕事、いわゆる三密になるような仕事だと、休業するように指導する可能性はあるでしょうが、今や事業所やお店では感染症対策が施され、感染の恐れは低くなっています。

となると、新型コロナウイルス感染症を理由に特別有給休暇を取るケースは少ないのではないかと思います。

仮に、母健連絡カードの指導内容に応じて、電車が混み合う時間に出勤しないように勤務時間を変える、との措置を実施したとすれば、特別有給休暇で休ませていませんから助成金の対象にはならないものの、母性健康管理措置としては妥当なものです。

措置の内容は担当医や助産師、さらに対象となる女性従業員と協議して決めるのが望ましいとのことですので、例えば、普段は週5日出勤だけれども、週2日出勤にして、あとの3日は特別有給休暇で休んでもらって、身体への負担を減らすのも母性健康管理措置としてアリではないでしょうか。

特別有給休暇を使って、出勤日数を減らす。これならば助成金の対象日数にも含めることができます。

さらに、週2日で出勤する日も、通勤ラッシュの時間に電車に乗らないように、出勤時間を遅くするという措置を加えても良さそうですね。複数の措置を組み合わせるのはOKのようですから、こういう組み合わせもあってもいいでしょう。

 

 

 

雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金から妊婦助成金に切り替えできる?

すでに雇用調整助成金なり緊急雇用安定助成金で休業していて、その対象者が妊娠している女性従業員だったら、「妊婦を対象にした助成制度ができたら、そちらに切り替えようか」と考える事業主もいるのでは。

休んで助成を受けるという点では、いずれの助成金にも共通しているため、切り替えてもいいんじゃないかと思えます。

5月から休業し、雇用調整助成金を利用しているなら、6月中旬からは、妊娠している助成従業員は妊婦助成金に切り替える。

さも1つの選択肢であるかのように思えますけれども、先ほど書いたように、事業主や従業員が任意で特別有給休暇で休むかどうかを選択できるものではなく、医師や保健師が、休業が必要と母健連絡カードに記載しないと、妊婦向けの助成金を利用できません。

女性従業員が母健連絡カードを持ってきた場合に、どういう措置をするか、そのルールを決めておく必要があるわけです。

ちなみに、母健連絡カードは診断書と同等のものと扱われ、別途で診断書を求める必要はありません。つまり、カードが診断書の役割を兼ねるということ。

雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の場合は、収益悪化で従業員を休業させると対象になりますが、妊婦向けの助成は、本人の健康状態に合わせて休業するのかどうかを決めますから、休業手当から特別有給休暇に変えて、という単純なものにはならないのです。

単に特別有給休暇で休ませる措置が助成対象になるわけではなく、妊婦の健康状態に合わせて、休業が必要だと判断されれば、特別有給休暇を取ってもらって休んでもらい、後ほど両立支援等助成金を申請します。

健康な状態で、就業に支障がなく、母健連絡カードでも休むように求められていない場合は、助成金を利用できないのです。しかも、新型コロナウイルス感染症を理由に休むよう指導がないといけませんから、受給までのハードルが高い助成金です。

ここで、6月12日からこの助成制度が実施されるとすれば、5月7日に遡って、年次有給休暇を特別有給休暇に変えてもいいのかどうか。つまり、すでに消化した年次有給休暇の日数を差し戻し、特別有給休暇に変えて、助成金を申請できるのか。

6月12日に発表された上記のリーフレットを読むと、欠勤などを事後的に特別有給休暇に変更した場合でも助成対象になると書かれています。つまり、5月7日以降に、妊娠中の従業員向けの制度が無かったため、欠勤した、年次有給休暇を使って休んだ、という従業員がいた場合、5月7日まで遡って、欠勤や年次有給休暇を特別有給休暇に変更して助成対象にできるというわけです。

対象者本人に説明して、同意を得る必要がありますが、仮に5月に10日分の年次有給休暇を使って休んだとして、これを6月になって、遡って年次有給休暇を特別有給休暇に変更し、10日分の特別有給休暇を助成金の対象にする。さらに、5月に利用した年次有給休暇10日分は残日数に回復させる。こういう処理もOKになっています。

賃金の締日を経過して、遡って特別有給休暇を付与した場合も、特別有給休暇の賃金が支払われたと確認できる書類を添付すれば対象にできます。

年次有給休暇でしたら、おそらく特別有給休暇と内容は同じでしょうから、休暇の形式的な扱いを変えて、年次有給休暇の日数を回復させると、事務処理は終わりそうですので、難しいものではないように思います。

さらに、先に特別有給休暇を付与して休んでもらい、あとから制度を整備し、その周知を行った場合も助成対象になります。つまり、順番が前後しても構わないということ。

さらに、特別有給休暇を半日や時間単位で取った場合も助成対象とするのかどうか。雇用調整助成金では時間単位での休業も対象にしていますが、妊婦向けの助成金でも可能なのかどうか。

半日の特別有給休暇を2回取得すれば1日分としてカウントできるのか。細切れの特別有給休暇でも助成対象になるのかどうかですが、リーフレットに目を通したところ、その点については言及がありませんので、特別有給休暇は1日単位で取る必要があります。この点は新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による 休暇取得支援助成金 Q&Aのページに掲載されており、半日単位、時間単位での特別有給休暇は助成対象になりません。

雇用調整助成金と母性健康管理措置による休暇取得支援助成金を併用できるのかというと、前者は休業で、後者は休暇ですから、休業しながら休暇を取るというのはあり得ません(休業したら休暇を取っていないし、休暇で休んでいるなら休業にならない)から、両者を併用できず、利用する場合はどちらか片方だけになります。

気温と湿度が高い間は、感染状況は落ち着いているでしょうが、11月下旬から12月上旬になれば、また流行期がやってくるのではないかと思っていますので、夏の間にルールを設けておくのが良いのではないかと。

公的な制度に共通しますが、行動せずに待っていても制度が適用されるものではなく、事業所から積極的に取りに行かないと使えないのが助成金や補助金などの制度です。

「どうぞ利用してください」と用意してくれているのですから、動いて、手を伸ばしていきましょう。ボーッと口を開けているだけで、餌をそこに入れてくれるわけではありませんから。

 

 

小さい子供がおらず仕事を休まない人へのインセンティブが必要 

妊娠している女性従業員を特別有給休暇で休ませるとすれば、一方で、妊娠していない他の従業員への対応も必要です。独身の女性従業員、男性従業員は対象外になりますから、その人達の気持ちをどう扱うか。

休ませる側について考えたら、他方で、休まずに働く側のことも考える。対象者とそれ以外の人、どちらも従業員ですから。

休む側の事情だけでなく、休まない側の事情も考えないと、事がうまく回らなくなります。休まない側に旨味がなければ、妊娠中の女性従業員が休みたくても休めないなんてことも起こり得ます。

人が減って、仕事が増えるだけだと、他の人は納得しないでしょう。休んだ人のフォローに入る代わりに、給与が加算される、手当が付く。このような代替案が無ければ、ヘソを曲げるし、ムクれる、辞めちゃう人まで出てきかねない。人間とはそういうもの。

1つの方法としては、休んだ従業員をフォローする人を決めて給与を加算する方法があります。

1人が抜けて、それを2人でカバーするとして、その2人にインセンティブを用意します。例えば、就業時間で1時間あたり100円加算すると、8時間で800円。その条件で、20日間出勤するとすれば、1人あたり月16,000円の金額になります。

助成金で補填される金額を使って、出勤する人へのインセンティブに回します。休む人の賃金を他の人に回すという考え方です。

1人が特別有給休暇で1日休んで、助成金が1万円支給されると仮定すれば、その助成額で他の人に1.5倍の仕事をしてもらえるように配分するといいでしょう。助成金を会社のお金にするのではなく、休んでいる人の分も働く人にそれを回していくと、休む人も出勤する人も満足できる結果になります。

休む人と同じ時間帯に出勤する人からフォローする人を選んで、該当の従業員が休んだ日に出勤していれば、1時間あたりで給与を加算する。1時間あたり300円上乗せしても、8時間で2,400円。2人分で4,800円ですから、助成金の範囲内で支払える額です。1時間100円増しでは少ないと感じても、毎時間300円増しならば受けてくれる人もいるのでは。

特別有給休暇で休んだ日数の判定は、2020年5月7日から2021年1月31日までの合計日数で、5日以上あれば助成対象になります。

休むのかどうかは、妊娠している女性従業員の健康状態によって判断されるものですし、主治医や助産師から休む必要があると指導を受けるのが前提ですから、意図的に狙って特別有給休暇で休めるものではありませんので、対象者がいれば助成を受けられるだろう、というものです。

学校(休校中だった頃)に通う子供を持つ従業員を特別有給休暇で休ませると受給できる、小学校休業等対応助成金と同じように、妊娠している女性従業員を休ませた場合も、休む本人だけでなく、休まずに出勤する人をどうするかを考えておかないと、休みたくても休めなくなります。

対象者に意識を向けるのも大事ですが、対象とならない人にも工夫が必要です。特別有給休暇で休ませて、助成金を受け取って終わり、ではうまく行かないもの。

特別有給休暇で休みを取る対象になっていない人には、助成金を使って、給与を加算するなり、手当を付けるなり、出勤する旨味を提供します。

他の人が休んで、自分は仕事が増えただけだと、やってられない気分になりますから。

会社と従業員の間を調整し、従業員と従業員の間を調整する。労務管理は調整の連続なのです。

 

 

新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金  の準備期間が2020年12月31日まで延長(2020年9月30日 追記)

医師または助産師の指導に基づいて、妊娠中の女性労働者が特別有給休暇で休んだ場合に対象となるのが、【新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金】

この助成金を利用するには、対象の女性労働者が特別有給休暇で休めるよう制度を整備し、その制度を労働者に周知するという下準備が必要です。その準備期間は2020年9月30日までとされていましたが、12月31日まで延長されました。

まず先に制度を整備して周知する。その後に、実際に特別有給休暇を取得させる。この2つの段階を経て、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金を申請するのが手続きの流れです。なお、先に特別有給休暇を取ってもらって、その後に就業規則を整備して周知するという順序でも助成金を利用できます。

さらに、欠勤にした日を後から特別有給休暇に切り替えるのもOKとされており、労働者本人の同意は必要ですが、融通が効く助成金制度になっています。

2021年1月31日までの間に特別有給休暇を取得させる必要があり、助成金を申請する期限は2021年3月1日までです。

妊娠している女性労働者を特別有給休暇で休ませると、その有給休暇の給与が補填されるわけですから、使用者にも都合が良い助成金です。妊娠中は健康状態が安定しない方もいらっしゃいますから、無休で休むよりは特別有給休暇で休むほうが安心です。

一方、妊娠していない従業員の方には、人が少なくなった分だけ給与が増えるような工夫が必要です。仕事だけ増えて給与は増えないとなると不満を感じますので、休んでいる人の仕事をフォローする人には特別なインセンティブを用意するといいでしょう。

給与を正確かつラクに計算してくれる給与計算ソフトとは?
やるべき仕事と関係ない仕事は、なるべく省力化して、少ない時間で済ませたいものです。給与計算はバックオフィス業務ですから、本来やるべき仕事とは違い、なるべく簡単に、楽に、早く終わらせるのが賢明でしょう。

勤務間インターバル - 翌日の勤務まで何時間あけて出勤時間を設定する?

寝る時間を確保

夜遅くまで働き、翌朝早い出勤を避ける

仕事が終わると、家に帰って食事をして、お風呂に入り、寝る。
そのように休息を取ってから、次の日の出勤を迎える。

2日間連続で出勤日が続いていると、
こういう形のスケジュールになるかと思います。

ここで、仕事が終わって、
翌日の勤務を開始するまで何時間あけておけばいいのかが問題になることがあります。

仮に、夜の20時に仕事が終わるとして、
次の日も出勤だとすると、最短で何時から仕事を始めるのがよいのか。

あまり時間に余裕がないと寝る時間がなくなりますから、
出勤日の間はある程度の時間的間隔が必要です。

夜20時に仕事が終わるとして、翌日は朝の5時から出勤だと、
なかなか本人とっては辛いわけです。
帰って寝るだけになりますからね。
遅番の翌日が早番だと、こういうスケジュールになります。

20時から翌朝の5時まで9時間ですから、
その時間で家に帰って、食事して、お風呂入って、
寝て、職場に出勤して、
となると9時間で足りるのかどうか。

寝る時間を8時間として、通勤時間は往復で1時間、
生活に使う時間は2時間。これだと休息時間は11時間ありますが、
11時間は長いように感じるものの、
寝て休息するにはカツカツな時間です。
まして9時間でこれを全てやるとなれば、
おそらく時間不足でしょう。

そこで、翌日の勤務まで何時間あけるかを決めるのが勤務間インターバルというもの。

意識することなく勤務間インターバルを取れている職場も

勤務間インターバル制度とは、
終業時刻から次の始業時刻の間に、一定時間の休息を設定するもの。

勤務間インターバルについて特に決めていない職場だけれども、
インターバルを取れている。
知らないうちに時間的間隔を取れている。
そういう職場もあるでしょう。

ルールは無いものの、
翌日の始業時間まで11時間あけるようにしている。
慣例として、そのような対応をしているところもあるのでは。

夜の18時に仕事が終わって、翌日は9時から始業だとすると、
休息時間は15時間ありますから、
スマホをいじって夜更かししない限りは、
健康上の負担というのはなさそうです。

体を使って仕事をする職場だと、
勤務時間にブレが少なく、仕事の時間も定時で始まり、
定時で終わるところが多いのでは。

問題となるのは、夜遅くまで仕事をして、
翌日の勤務が早いときです。
夜の22時頃まで仕事をして、翌日は6時からとか。
こうなってしまうと、寝る時間がほとんどありませんから、
眠たくてぼんやりして事故を起こしたりするもの。

それを避けるために、仕事が終わって、
翌日の勤務を開始するまで、ある程度の時間を空けなきゃいけないわけです。


勤務間インターバル普及のための取組(厚生労働省)

勤務間インターバルに関しては、特にルールは定めていないけれども、
勤怠データを見てみたら、11時間以上の休息はちゃんと取れている。

意識せずに勤務間インターバルは取れてしまっている。
そういう職場ならば、問題は無いのでしょう。

定時に仕事が始まって、定時に仕事も終わる職場だったら、
勤務間インターバルのルールを作らなくても支障はありません。
ただ、就業規則で決められている方が、判断の基準があって安心できます。

しかし、日によって勤務シフトが違う、
朝の時間帯に出勤したり、夕方の時間帯や夜の時間帯に出勤したり、
コロコロと働く時間が変わる職場では、
出勤日が連続すると、休息時間が短くなってしまう日も出てきてしまいます。

それを避けるために、勤務間インターバルをルールとして作っておいて、
判断する際の基準にします。

就業規則で勤務間インターバルのルールを決める

勤務間インターバルを設ける努力義務が法律で決まっています。
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の2条1項で、
『健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定』と書かれており、
この部分が勤務間インターバルの根拠になっています。

では、どうやってルールを決めるのか。

厚生労働省の規定例を参考に考えてみましょう。


例えば、就業規則で、

1 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の
開始までに少なくとも、11時間の継続した休息時間を与える。

2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及
ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみ
なす。

と決めているとしましょう。

上の規定例では、
「休息時間と翌所定労働時間が重複する部分を労働とみなす場合」とされているものです。

仮に、木曜日と金曜日が出勤日だとして、
木曜日に夜の22時まで働いたとします。

では、夜の22時に終業して、
翌日の金曜日は何時から出勤すればいいか。

11時間の休息時間を入れる必要があると決めていれば、
22時から11時間経過した時間というと翌日の9時です。

最短で翌朝の9時から仕事を始められると判断できます。

もし、金曜日の始業時間が朝の7時になる場合は、
7時から9時までの時間は休息時間なので、これを労働したものとみなします。

実際は9時から仕事を始めているのだけれども、
7時から仕事を始めたと扱って、労働時間を計算していくわけです。
捉え方によっては、2時間分の特別有給休暇を取ったようなイメージです。

休息時間を取れない場合、特別有給休暇を用意しなければならず、
使用者にとっては「ちゃんと勤務間インターバルを取れるようにしないと費用がかかる」と思わせる効果があります。


また、始業時刻を繰り下げるパターンも例示されています。

1 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の
開始までに少なくとも、11時間の継続した休息時間を与える。

2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及
ぶ場合、翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下
げる。

1項の内容は先程と同じですが、2項の内容が変わっています。

こちらの場合は、働いたとみなすのではなくて、
始業時間を後ろにずらしていくというもの。

金曜日の始業時間は7時を予定していたけれども、
休息時間が11時間必要なので、
始業時間を9時まで後ろにずらしていく。
これで休息時間の11時間を確保するルールの決め方です。

足りない時間を働いたとみなすのか。
休息時間が終わるまで始業時間を後ろ倒しするのか。
2通りあります。

ルール通りに勤務間インターバルを取れている場合は、
特に何かする必要はないのでしょうけれども、
業務上の都合で、決まった休息時間を取れなくなる時があるとすれば、
その時にどういう対応するか。

時間単位の特別有給休暇を付与して穴埋めする、
休息時間が取れなかった日の翌日を休みにする、
不足した休息時間に対して割増賃金を支払う、
など対処法を用意しておくのも一考です。

努力義務ですから、休息時間を取れなくても、
使用者、労働者、双方に何らのペナルティは無し、という対応もありです。

勤務間インターバルを導入している例

勤務間インターバルの導入事例が掲載されており、
一通り目を通してみると、ルール通りにならなかったといって、
何か特別なことをしている会社は少ないようです。

就業規則にルールとして決めているため、
ある程度の強制力はあるものの、履行できない場合のペナルティは無し。

中には、フレックスタイム制と勤務間インターバルを組み合わせるところもあり、
勤務時間を本人に調整してもらい、
インターバル時間も本人がコントロールしていくようです。

フレックスタイム制を利用すれば、
通勤ラッシュを回避できるでしょうし、
本人に働く時間を決めてもらうと、
長時間労働は減っていくとのことです。

さらに、新型コロナウィルス感染症が流行したのをきっかけに、
リモートワークを導入する職場が増えましたが、
通勤時間をカットできれば、休息時間を増やせて、
満員電車で痴漢の被害に遭う可能性を減らせるのではないかと。

所定労働時間という概念が労務管理には長年存在していて、
決まった時間は職場にいなきゃいけないという義務のようなものがあります。

1日8時間が所定労働時間だとすると、
少なくとも8時間は職場で拘束される。

新型コロナウィルスをきっかけに、人の接近を嫌う傾向になり、
1つの場所に多人数が集まって仕事をするのが難しくなりつつあります。

労働時間に対する評価は低くなって、リモートワークが主流になり、
労働時間をお金に換える働き方が通用しにくくなります。

1日8時間働く必要があるのかどうか。
当たり前と思っているものですが、例えば1日6時間でも足りるのでは。

新型コロナウィルスをきっかけに人間が関わる仕事が減らされていき、
週5日出勤ではなく、出勤するのは週に2日で、
残りの3日はリモートワークという働き方も出てきそうです。

休息時間を基準として決めておくと、時間外労働が発生するほど、
次の始業時間が後にずれていきます(始業時間を遅らせるルールの場合)。
だから、労使ともに残業しないように意識が向く。

眠いと効率が下がり、さらに残業が増えて、
勤務間インターバルも取れない。悪循環に嵌ります。

健康だからこそ働けるのですから、
休息時間を基準として決めておくと良いでしょう。

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感染症で会社が休業。皆勤手当や通勤手当はどうなる?

 

休業中の手当

 

 

休業したら通勤手当や皆勤手当は支給されるのかどうか

2020年も5月の後半になって、3月から始まった自粛生活も徐々に緩和される傾向にありますが、長い間 Stay Homeで休業している方もいるのでは。

新型コロナウイルス感染症への対策として、会社なり事業所を休業して、従業員の方に休業手当を支払って休んでもらう。そういう職場もあるかと思います。

では、休業手当は払うとして、皆勤手当、通勤手当はどうするか。

普段通りに仕事をしている場合は、皆勤手当や通勤手当も通常通りに支給されるのでしょうけれども、休業手当という形で給料を支払っている場合、皆勤手当と通勤手当はどうなるのか。

休業中で出勤していないわけだから、皆勤手当は出さない。

休業中だけれども、本人に責任がないことなので、皆勤手当を出す。

どちらでしょうか。

所定の労働日に全て出勤すれば皆勤になるとすれば、休業で休んでいれば皆勤ではなくなるため、皆勤手当は出ないと考えるのが自然です。

しかし、従業員に責任がある休業ではないのだから、それを理由に支給されなくなるのはスッキリしない。

皆勤手当をどのように支給するかどうかの条件は、就業規則や賃金規定で決めるものです。
どのような条件で支給するのか、対象者は誰なのか、金額はいくらなのか、事業所が任意でこれらを決めないといけないものです。

休まずに出勤するのが当たり前のような雰囲気になっている職場も多いですから、皆勤手当そのものがもう無いという職場もあるのでは。そう頻繁に休まないですからね。

例えば、毎月、手当を支給するのではなく、6ヶ月に1回、1年に1回のように、判定期間を長くして、支給額を多くするのも一案です。

毎月だと、ほぼ全員が支給対象になってしまい、容易に達成が可能です。

しかし、半年なり年間だと、対象者が絞れるし、金額を多くしても予算内に収まるのでは。

仮に、毎月支給するものだと月額2,000円。これを1年間皆勤だと30,000円にする。

1年間に1度も病気や怪我などで休んでいない人が対象になるため、対象者が絞られ、その分、手当の額を増やせます。

従業員本人の都合による休業ではないならば支給するのか。それとも、感染症や自然災害で事業所が休業となった場合は支給しないのか。

どちらかの形で就業規則や賃金規定に決めておく必要があります。何も決めていないと、休業する際に判断できませんから。

 

 

リモートワークで通勤しないなら通勤手当や通勤定期券はどうなる?

電車やバスに乗って職場に行かないのだから、通勤手当は出ない。

休業すれば通勤する必要がなく、自宅からリモートで仕事ができる。そういう環境がある方もいらっしゃるでしょう。

満員電車で消耗することなく、人が密集することもなく、新型コロナウィルスに感染する可能性も下げられる。

このように、通勤しない利点がありますが、休業中の通勤手当をどうするか、労務管理では悩むときがあります。

通勤するたびに、切符を購入する、もしくは IC カードで支払う職場もあるでしょうし、通勤定期券を買ってもらって、その購入費用を通勤手当として支払う職場もあるでしょう。

では、休業が始まって、休業後も有効な通勤定期券を持っていたらどうするのか。

仮に、3月から休業したとして、6月まで有効な通勤定期券を持っているとすると、4ヶ月間は使えるわけですから、これを払い戻してもらうか、そのまま本人に使ってもらうか。

残り期間は使わないのだから、払い戻してもらって、そのお金を会社に戻してもらう。

払い戻しはせずに、そのまま持っておいてもらう、もしくは使っても構わないとするのか。

どちらでしょうか。

どちらの対応も正解であり、どちらが間違いというものではありません。どのように対応するかは事業所ごとに違います。

定期券を払い戻すと、想像してるよりも金額は少ないもの。払い戻すぐらいだったら、もう残り期間まで使ってもらった方が良いのではと判断するのもありです。

個人的に使ってもらってもいいし、中には払い戻して、払戻金を自分の財布に入れちゃうような人もいるでしょうけれども。

きっちりしている職場だったら、払い戻してもらって、そのお金を会社の方に戻してもらうという対応するのでしょう。

さらには、休業が始まった後の通勤定期券は、もうそのまま知らんぷりするような職場もあるのでは。

僅かな金額をわざわざ回収する手間がかかりますし、感染症が流行している状況で、小銭を返すために、わざわざ人がいる職場まで行かなきゃいけない、電車にも乗らなきゃいけないとなれば、もうそのまま有効期限まで通勤定期券を放置しておくというのも一つの手です。

その都度、通勤手当を支払う職場だったら、休業を開始した後は、通勤しないわけですから、交通費を出す必要はありません。

問題となるのは、通勤定期券を購入していて、休業開始後も、ある一定の期間まで有効な定期券となっている場合、その処理をどうするかという点。

一人一人、通勤経路が違い、定期券の購入金額も違うでしょうし、購入期間も3ヶ月分を買う人もいれば、6ヶ月分を買う人もいるのでしょう。

一人一人対応が異なり、そういう面倒なことをするぐらいだったら、休業期間中の通勤定期についてはもう本人に任せるのが良いのでは。

中には、遠隔地から通勤していて、1ヶ月10万円ぐらいの通勤手当が出る方もいるかもしれません。新幹線で通勤するなんていう狂気の沙汰のような提案を政府がするぐらいですから。職場の近くに住居を構える方がよほど良いと思うのですが。

感染症の流行や自然災害で休業した場合、通勤定期券を払い戻してもらうなら、そのように就業規則もしくは通勤交通費規定のようなものに決めておくといいでしょう。

一方、従業員本人に処分を任せるならば、特にルールを決める必要はありません。

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